思わず入りたくなっちゃう明るい呼び込み
ホッピー通りをひとたび歩けば、「いらっしゃい!」とお店のお兄さんたちが明るく声をかけてくれるが、その中でもひときわ元気一杯、満点のスマイルで呼び込みをしているのが『居酒屋 どん』。茶色と白のストライプで彩られたテントがトレードマークのお店である。
「もともと小料理屋から居酒屋に転身したのが2003年だから、2021年で18年目ですね。昔に比べて若いお客さんが増えました」と、語ってくれたのは、この店で呼び込みを行っている元気印の長田 順さん。
当時のホッピー通りではあまり行っていなかった平日営業を行い、小料理屋を営んでいた母考案のメニューが評判を呼び、今では平日の昼時から客が途絶えない人気店になったという。
「昔はこの辺のお店って、(近くにある)場外馬券場が営業している土日にしかお店を開けなかったり、開けていても競馬が終わる夕方にはお店を締めていたりしたんですけど、平日も営業しよう!と周りに声をかけて平日もお店を開けるようになったら、いつしかお客さんがたくさん来てくれるようになって。昔からこの町に住んでいる地元のおじいちゃんおばあちゃんはもちろん、観光で来てくれる若い子たちにも楽しんでもらえて、うれしいですね」。
創業以来、不動の人気を誇る2つのオリジナルメニュー
おびただしいほどの居酒屋が軒を連ねているホッピー通り。それだけに何か特別な味やメニューに個性がないと不動の支持を得られないが……『居酒屋どん』の魅力は手が込んでいるオリジナルメニュー。
中でも小料理店を営んでいた長田さんのお母さんが考案した牛すじ煮込みと、すなぎもポン酢は創業当時からの超人気メニュー。いずれも「ここでしか食べられない」と、ほとんどの常連客がオーダーしていた。
ホッピー通りは別名「煮込み通り」と呼ばれるように、どのお店でも牛すじ煮込みやもつ煮込みがメニューにある。そのため、ベーシックな味わいの牛すじ煮込みではあまり話題にならないが……『居酒屋どん』の牛すじ煮込みはなんと珍しい塩味。サッパリとしていながら、コクのある優しい味わいで一度食べたらヤミツキになる。
牛すじ煮込み、すなぎもポン酢という2大人気メニューのこだわりについて伺うと、長田さんは「浅草での地元消却」を挙げてくれた。
「例えば、すなぎもポン酢で使っている砂肝は『竹町鶏肉店』という浅草で100年以上続く鳥肉の老舗から仕入れていますし、魚も浅草で営業している老舗の『魚敏』という魚屋さんからしか仕入れない。ちょっと仕入れ値は張るかもしれないけれど、その分モノは間違いない。だから自信をもって、お客様に提供できますね」。
浅草という街を楽しんでほしいからこその接客
独自性の強いメニュー、そして浅草という街にこだわった徹底した食材の仕入れで、ホッピー通りでも人気店となった『居酒屋どん』。長田さんをはじめとしたスタッフの明るい接客で元気を分けてもらえる感じがするが、最後に接客のこだわりについて長田さんに聞いてみた。
「接客で心がけているのは『自分が客になった時、入りたい店かどうか』ですね。店員の態度はもちろんですけど、ガラが悪かったり、泥酔してしまったり、騒いでしまうようなお客さんがいるお店だと積極的に入ろうとは思わないですよね? だからお店にやって来るお客さんでも、そうした方はお断りさせていただいています。せっかくならみんな、楽しく飲みたいですからね」。
提供するメニューだけではなく、あくまでお客様ファーストな目線で接客にも気を配る長田さん。最後にこんなメッセージを残してくれた。
「この記事を読んで浅草ホッピー通りに来てみたいと思われたらぜひ、ウチのお店をキッカケに来てみてください。浅草という街を楽しんでほしいし、ちょっとした観光案内もできますので、旅行などで来られた際はぜひ!」。
構成=フリート 取材・文・撮影=福嶌弘