予算1000円!旅とは

我が家の電子レンジが壊れたことにはじまる。旅行に行けるその日まで残そうと決めていたお金が最新家電になってしまった。そのショックと出かけられないストレスが沼の化身になって現れて、私を飲み込む。節約と旅を両立できる場所を求めて、行き着いた先がアンテナショップだった。

ここでアンテナショップを巡る1000円旅、略して「せんたび」のルールを説明したい。

・予算1000円

・予算内ならなにを買ってもOK

・オーバーしたら、自腹

1000円ポッキリでご当地を堪能する品を買う。これだけだ。

船旅の入口にアンテナショップ

竹芝には伊豆諸島や小笠原諸島へ行くための客船ターミナルがある。いうなれば、船旅のスタート地点。ここから島を目指し、遠くの島であれば、海の上で一晩ざこ寝するところから旅が始まるのだ。いいなぁ、島行きたいなぁ。と思っていたら、広報の方からご連絡をいただいた。客船ターミナル横にアンテナショップがあるという。

島出身者も働く、竹芝『東京愛らんど』

『東京愛らんど』は、島の名産品を直送で仕入れる伊豆諸島・小笠原諸島のアンテナショップだ。これまでは船を利用する人々のお土産ショップでもあったが、最近はコロナ禍で島に行けなくてウズウズしている島中毒の人たちも多く通うという。

伊豆大島出身のスタッフさんにお話を聞きながら、おすすめの品を教えてもらおう。

島民はあしたばを買わない

「酪農が盛んな伊豆大島のお土産の定番は、牛乳せんべいです。バターを作ったあとの脱脂乳を利用した名産品として大正初期に生まれました」とスタッフさん。島民もおやつとして食べる、馴染み深いおやつなのだそう。

ミネラルたっぷりの塩も定番
島の唐辛子を使用した薬膳島辣油

ミネラルたっぷりの塩や、名産の唐辛子を漬け込んだ醤油などの調味料も人気。「薬膳島辣油は小笠原特産の唐辛子とスパイスをブレンドしていて、メディアにも取り上げられました。一時期は売り切れで入手困難だったこともあります」

忘れては行けないのがくさや。初心者にも食べやすい、くさやスティックから玄人向けのディープな味わいのものまでが揃う。決まった商品をリピートする人もいるそうで、ハマると、臭ければ臭いほどウマいと思うようになるのだそう。「くさやは特殊な漬け汁に浸して作るのですが、汁を代々受け継いでいるので、作り手も一層臭いものを追求するんですよ」とスタッフさん。

島から直送で生鮮食品も扱っている。あしたばを見つけて「島ではスーパーでも普通に並んでいるんですか?」と聞くと、スタッフさんは「島民はあしたば買わないですね。家の裏山とかから摘んでくるんです。晩御飯前の散歩のついでに。本当にそこら中に生えています」と笑いながら答えてくれた。田舎出身の筆者は、わざわざ買わないのかと妙に納得。ヨモギとかノビルみたいなもんなんだなぁ。

リピーターが多いのはの手づくり塩辛。伊豆諸島の神津島で水揚げされる幻の赤イカ(剣先イカ)とスルメイカ、伊豆大島の天然塩を使用し、濃厚な肝の味わいが評判を呼んでいる。ふかしたじゃがいも、ほかほかご飯の上にのせるのはもちろん、島焼酎と合わせても最高なのだ。

売り場に並んだ酒瓶にワクワク。
島で作られる焼酎もたくさん。青ヶ島伝統の青酎も。

店内には、20種類以上の島ならではのお酒がズラリ。島で作られる焼酎の多くは、作り方が独特で味わいのクセがすごい。

ラベルにも担当した杜氏の名前が入っている。

特に青ヶ島で作られる青酎は特殊。大きな酒蔵があるわけではなく、村のおじいちゃんおばあちゃんが個人で杜氏を担い醸造している。杜氏によって製法が違うので味わいが異なり、なおかつ焼酎を作るときに重要な麹を自然に任せた野生の菌で醸しているので、毎年出来も違う。コアなファンはお気に入りの杜氏がいるのだとか。

くさやに、あしたばに、島焼酎。どれも東京ではなかなか手に入らない、臭くてウマいものである。さてはて、今回は何を買おうか…。

と思っていたら、またもや買いすぎてしまった。今回の私の1000円セットは…

私の島旅1000円セット

パッションフルーツチューハイ 330円

あしたば 300円

くさやスティック 280円

 

しめて、910円!今回はこれで晩酌セットを作っていく。

あしたばは、スタッフさんからツナと醤油で和えると美味しいとのアドバイスを得たので、それに従うことに。まずは湯がいてから、水にとってぎゅっと絞る。

適当な大きさにザクっと切って、ツナと醤油であえていく。すでにこの時点であしたばの香りが広がり、つまみ食い。ほのかな苦味と甘味が広がり、作りながらプシュッと酒をあけてしまう。

盛り付けて、くさやスティックを添えたら完成だ。チューハイは、小笠原のパッションフルーツの使用した限定品。フルーティな酸味でごくごくいけるタイプ。

くさやスティックはマイルドと聞いていたが、そんなことはなかった。臭い。でもくさやにしかない凝縮した旨みがあり、臭い、ウマいと言いながら食べ進めてしまう。

青唐辛子べっこう醤油 580円、ひんぎゃの塩(小)250円。
八丈島の本格麦焼酎ジョナリー、海底熟成ラムMother。

どうしても気になって、1000円をオーバーして買ってしまったのがこちら。

伊豆諸島の郷土料理にべっこうずしというのがある。青唐辛子を漬けた特製の醤油たれに白身魚を漬け込んで握った寿司だ。青唐辛子べっこう醤油があれば、これに近いべっこう丼が作れると聞き、ついつい購入。ひんぎゃの塩は旨味たっぷりで酒に合いそうだし、酒は酒だから、買うのを我慢できなかった。

まずはべっこう醤油を使ってべっこう丼を作っていく。べっこう醤油を日本酒で割って白身魚を漬け込む。

酢飯にのせて丼に。いただくと、淡白な白身魚に甘しょっぱい醤油しみて、酢飯にマッチ。青唐辛子の辛さが爽やかに抜けていく。

これには、素材の邪魔をせずすっきり飲める塩チューハイだわ!とひんぎゃの塩をプレーンチューハイを注いだグラスのフチに塗りつけた。

ひんぎゃの塩は、火山島である青ヶ島の地熱蒸気で海水を温め、結晶化させて作られる。塩チューハイをごくりと飲むと、舌の上で塩のまろやかな旨みがじんわりと広がりつつ、シュワーと炭酸が喉を通り抜ける。よき食中酒ではないか。もっと飲みたい…。

続いて、海底で熟成させたラム酒を開栓。Motherは小笠原諸島の母島で生産し、海底に沈めて熟成させたロマンたっぷりのお酒。熟成期間は1年間で、ボトルには付着物が張り付いている。ラム酒でありながらの島を感じる個性的な味わい。コーラやジンジャーエールで割っても美味しそうだ。

一夜明けて、ジョナリーも試飲。商品名はフィリピン出身の妻の名前からついたと聞き、興味が湧いてセレクトした。ジョナリーは八丈島の焼酎で、ブランデー樽、シェリー樽、ホワイト・オーク樽で熟成させた原酒を、八丈島焼酎「黒潮」とブレンド。樽由来の華やかな香りと深みがあって、おしゃれな味わいだ。

 

『東京愛らんど』にある食べ物はどれもクセがありながらも、日常を吹き飛ばし、包み込んでくれる島風のような優しい味わいだった。島の動画をYouTubeで流しながら、お酒をゴクリ。船旅ができる日がはやく来て欲しいと、願わずにはいられなかった。

住所:東京都港区海岸1-12-2竹芝客船ターミナル内/営業時間:10:00~18:00/定休日:無/アクセス:JR・東京モノレール浜松町駅から徒歩7分、ゆりかもめ竹芝駅より徒歩1分

取材・文・撮影=福井 晶