Mysterious badges on the pillar《謎の紋章のある柱》

東京・日本橋の老舗百貨店の側柱です。見事に真っ白になった双子の無言板ですが、気になるのはその上にある白い円と小さな横長の無言板です。消火栓か何かを取り外した跡を埋めたのでしょうか。

シンメトリーは古くから祭壇や王冠などに見られる神聖な形といえますが、ここでは看板の文字が消えたおかげで偶然にも図形的に聖なる配置が強調され、謎の紋章が出現しました。

Grady twins poster stand《シャイニングの双子》

大きな公園の人通りの多い場所にある木製の双子看板です。手製のポスター掲示板のようですが、よく見ると木材で接続されているんですね。強度を増すために水平と斜めに通した角材でしっかり手をつないだような形が特徴的です。

さらに淡いブルーグレーで塗られているせいでしょうか。スタンリー・キューブリック監督の映画『シャイニング』に出てくる双子の女の子のようではありませんか。おそろいの水色のワンピースを着て手をつないで廊下に立っているあの双子。グレイディ姉妹という役名がちゃんとあって、モダンホラー好きの間では今もカルト的な人気者です。

Forgetful old twins《長寿の双子の微かな思い出》

昭和モダン調の大きな邸宅のガレージの脇に同形の看板が2枚。元は赤地に白文字で、右は「火気厳禁」、左は危険物取り扱いの2枚組の消防関連標識だったはずなのですがもはやその文字を読むことはできません。この年代の大邸宅のことですからガレージの奥にセントラルヒーティング用のボイラー室があるのではないかと想像します。

きんさんぎんさんのように100歳とまではいかないでしょうがなかなかの高齢看板とお見受けします。昔からずっと仲良く並んで掛けられていた双子看板。文字が消えていくにつれてますますそっくりの双子になっていきます。立派なお屋敷とともにどうかいつまでも長生きを。

Well-behaved twins《お行儀のいい双子》

ピンクの塀に白い無言板が2つ。子供の習い事の教室なので、ふだんなら手書きのカラフルなポスターが張られているところですが、コロナ禍の影響からか空っぽになっていました。楽しいイベントや生徒募集のお知らせが再び貼られる日をじっと無言で待っています。

Two are really enough《2つでじゅうぶんですよ》

大学構内に空っぽのポスタースタンドがあるのを発見しました。

以前通ったときにはなかったはずなので、実に納品されたばかりの新品です。しかも2個。

こういう備品は2個単位で設置する慣わしがあるのでしょうか。よく見ると壁の液晶掲示板も同じものが2個並んでいました。

予備の品やコレクションの保存用として同じ商品を2つ手にとってしまう癖のある人がいます。いわゆる「2個買い」というやつです。ものによっては乾電池や魚の切り身のようにあらかじめ2個パックで売られているものもあって便利ですよね。

大学の掲示板も新学期にはお知らせが増えるので2つないと困るのでしょうが、季節によっては空っぽになることもあるのでそれ以上はいらない……映画『ブレードランナー』のうどん屋さんに言わせれば「2つでじゅうぶんですよ」ということのようです。

The twice world《2倍の世界》

さて、遊歩道に勝手に設置されたらしいこのオブジェはどうでしょう。黄色い円形のものは実は魚眼ミラーの裏側で、向こう側の細い路地からバイクが出てくるときに左右を確認するのでしょう。45度ずつに開いて設置されています。そして、よく見るとそれを補強する赤いカラーコーンも2個。これはひとつでもじゅうぶんなような気がするのですが、きっとホームセンターでついつい2個買いしてしまったに違いありません。

カメラ向けたらちょうど遊歩道のオブジェも左右に2つ。おかげで面白いシンメトリーの構図の写真が撮れました。

ちなみに、公道上に個人がものを常時設置するのは道交法的にアウトでしょうが、駐禁看板や安全用品に対して私はここでとやかく言うつもりはありません。むしろ警察や行政の目の行き届かない危険な場所に誰かが善意で設置した手製のインディーズ交通標識──その一例が「飛び出し注意くん」ですね──が事故を防いでいるケースもあるからです。

ただ、運転する方はミラーに頼らず、必ず一時停止して左右をしっかり目視で確認してから公道に出てくださいね。以上、散歩好きの歩行者からのお願いでした。

文・写真=楠見清