先代の武田氏のレシピを受け継いだ「武田流 古式カレーライス」

正式な店名は『武田流 古式カレーライス 支那そば インディアン本店』。先代の武田金蔵氏は、戦前に銀座の『資生堂パーラー』に勤めたシェフだった。昭和30年(1955)に独立し、カレーライスを看板メニューにした洋食屋としてスタートした。

「武田流 古式カレーライス」と謳っているのは、武田氏のレシピを受け継ぎ、現代流に進化させたカレーライスを提供しているから。資生堂パーラーのカレーライスは、当時の文化人たちに愛され、庶民の憧れの料理であったことから、メニューに「最高級」の冠を付けている。

開業当時の店名は現在とは異なっていたが、カレー=インドのイメージが定着していたので、いつの頃からか客から「インディアン」という愛称で呼ばれるようになり、やがてそれが店名になったのだという。

店内にはカウンター席とテーブル席があり、昼どきには空席待ちもできる。
店内にはカウンター席とテーブル席があり、昼どきには空席待ちもできる。
2代目店主の永岡道明さん。先代・武田氏のレシピを進化させ、現在の味をつくり出した。
2代目店主の永岡道明さん。先代・武田氏のレシピを進化させ、現在の味をつくり出した。

玉ねぎや果実の旨味を凝縮した黒く濃厚なカレー

半カレーと普通サイズのカレーが手際よく盛り付けされていく。
半カレーと普通サイズのカレーが手際よく盛り付けされていく。

カレーに用いる素材は、小麦粉、玉ねぎ、フルーツ、調合スパイス。シンプルではあるが、レシピを守り、丁寧に手間をかけて作ることで独自のカレーを生み出している。

ルーが黒いのは、焦げる寸前までじっくり炒めた玉ねぎによるもので、濃厚なコクと、ほんのり苦みを感じる。食べ進めるうちにスパイスの辛味が口に広がるが、舌を刺すような刺激的なものではなく、玉ねぎやフルーツの甘さと一体となった優しい辛さだ。

カップで盛り付けたご飯に、形がなくなるまで煮込まれたカレールーがかかる。写真は半カレー。
カップで盛り付けたご飯に、形がなくなるまで煮込まれたカレールーがかかる。写真は半カレー。

ビジュアル的にも美しい透明感のある黄金色のスープ

透明感のあるスープや色どりも美しい具が食欲を誘う。
透明感のあるスープや色どりも美しい具が食欲を誘う。

もう一つの看板メニューに支那そばがある。洋食屋として開業していた当時から、コンソメ代わりに出していた塩味スープが評判を得ていた。このスープに麺を入れて出したのが、支那そばの始まりだ。

現在のスープは、魚介と香味野菜で作り、牛・豚・鶏は使わない。透明感のある黄金色のスープで、焦がしねぎが味のアクセントになっている。麺は地元・蓮沼の菅野製麺所製の細縮れ麺。具は焼豚、メンマ、煮玉子、ほうれん草で、色どりもよい。

店主と娘さんの絶妙なコンビプレーで、カレーライスや支那そばができ上っていく。
店主と娘さんの絶妙なコンビプレーで、カレーライスや支那そばができ上っていく。

「カレーに合わせてもおいしく、ラーメンだけでもおいしい。そんなラーメンを作っています」。そう語るのは娘の永岡美菜子さん。カレーと支那そばの二枚看板の店らしいコメントだ。

客の8割が注文するという支那そばとカレーのセットメニュー

2つの看板料理を食べられる「支那そばと半カレー」。女性でもペロリと完食できる。
2つの看板料理を食べられる「支那そばと半カレー」。女性でもペロリと完食できる。

店名にもあるように、基本の料理はカレーライスと支那そばの2品。単品と組み合わせ、さらに支那そばにトッピングする焼豚の枚数でメニュー構成している。

支那そばも食べたい、カレーライスも食べたいという欲張りの客のリクエストに応えたのが、一番人気となっている「支那そばと半カレー」1100円。普通サイズのカレーライスの場合は「支那そばとカレー」1300円となり、常連客はこれを「定食」と呼ぶ。
とにかくどこを見ても客の前にはカレーライスと支那そばが並んでいる。

注文をすると、まず支那そばが運ばれ、半分ほど食べたところでカレーライスが到着する。さっぱりした味の支那そばと、濃厚な味のカレーライスの組み合わせは、支那そば→カレーライスの順のほうが、料理のおいしさがよくわかる。支那そばのスープがカレーの口直しにもなるのだ。

インディアン本店(インディアンほんてん)
住所:東京都大田区西蒲田6-26-3 SSビル1F/営業時間:11:00~18:00(売切れ次第閉店)/定休日:木/アクセス:東急池上線蓮沼駅から徒歩2分

取材・文・撮影=塙 広明