◆散歩コース◆
スタート
武蔵増戸駅
駅から右手に行き、都道185号を横切り線路沿いの道を直進。右手に横沢入の標識。曲がらず寺へ。
↓ 20分
大悲願寺
寺から戻り横沢入の標識を左折。寺から10分もしないで横沢入の入り口の休憩所へ。
↓ 20分
横沢入の田んぼ
富田ノ入の標識から入る。すぐ尾根へ行く道もあるが、今回は下の道から。道はけっこう荒れている。
↓ 25分
石山の池
ロープもある急坂を越えて行くと尾根道と合流。標識はあるので、石山の池方面へ。
↓ 10分
天竺山
石山の池から坂を上がると鉄塔がある。その上が天竺山。山頂からの眺めがいい。
↓ 15分
三内神社
崩れた石段を下りて行くと麓の三内神社に出る。車道に出て駅方面へ向かう。
↓ 15分
ゴール
武蔵五日市駅

郷愁度:★★☆
歩行時間:1時間50分
歩行距離:約4.5km

アクセス:
[行き] 新宿駅からJR中央線で立川駅、JR青梅線で拝島駅、五日市線に乗り換えて武蔵増戸駅、約1時間。
[帰り] 武蔵五日市駅からJR五日市線で拝島駅、後は行きと同じ。約1時間10分

交通費:  1520円(往復)

昔懐かしい里山の風景と石材を切り出した採掘跡を見る地下場の探検

五日市線の武蔵増戸駅と武蔵五日市駅のほぼ中間地点に横沢入という地区がある。ここに七つの谷戸があり、田んぼや池のある里山の風景が残っているという。 2006年、東京都で最初に「里山保全地域」に指定されたところでもある。

横沢入は武蔵増戸駅から30分もかからないというので、そこを往復するだけではあまりにも距離が短い。そこで横沢入から唐松山(からまつやま)、天竺山(てんじくやま)などを巡ってから武蔵五日市駅へ向かうルートをとることにした。

武蔵増戸駅で下車、線路脇の道を西へ進むと横沢入への標識。駅からたった15分。里山へ入る心の準備ができていないので、ひとまず直進して大悲願寺(だいひがんじ)へ向かうことにする。すぐ右手に保育園があり、その先が寺になる。

「萩の寺」としても知られる大悲願寺。
「萩の寺」としても知られる大悲願寺。

右手に白壁の立派な塀が見えてきた。豪族の屋敷のような豪壮な造り。安政6年(1859)築という仁王門は、風格があり、実に見事な門である。中に入ると正面に観音堂。これもすごい。寛政6年(1794)築の観音堂は彫刻が施されており、特に正面の欄間の彫刻は見事なものだ、と感心していると、突如、ワーワーキャーキャーと騒ぐ声。なんと境内は保育園児に乗っ取られていた。

増戸保育園の園児たちで、先生によると、隣なのでいつもここで遊んでいるそうだ。園児たちと分かれて横沢入方面に向かう。

目の前に広がる、昔ながらの里山風景

標識から左折して歩いて行くと、左右に畑が広がってきた。横沢入が近い。前方に小屋のような休憩所の建物。近づくと、その先に稲刈りの終わった田園の風景が広がっていた。送電線の鉄塔が 2、 3本だけ余計だが、両脇を森に囲まれた谷戸の風景は、なんとも心安らぐものだ。中央湿地の中の道を進み、中心部でひと休み。横沢・小机林道が閉鎖されていたので、唐松山はあきらめて天竺山だけでも上がることにする。

横沢入の中央湿地。ほかに小さな谷戸「草堂ノ入」、「富田ノ入」、「荒田ノ入」、「宮田東沢」などがある。
横沢入の中央湿地。ほかに小さな谷戸「草堂ノ入」、「富田ノ入」、「荒田ノ入」、「宮田東沢」などがある。
中央湿地の奥のほうから見た風景。左側に溜池がある。ちなみに横沢入の里山保全地域の面積は約48.6ha。
中央湿地の奥のほうから見た風景。左側に溜池がある。ちなみに横沢入の里山保全地域の面積は約48.6ha。

富田ノ入に入る分岐に手描きの地図。地元の子供たちが描いたものだろうか、とても役にたった。それを見ると、天竺山に行く途中に「伊奈石石切り場遺跡」の文字。 「伊奈石古道」という、さらに心ざわめく文字も。

富田ノ入に行く入口にあった手描きの地図。とてもわかりやすく、いい地図だ。
富田ノ入に行く入口にあった手描きの地図。とてもわかりやすく、いい地図だ。
富田ノ入の先の道は沢状のところもあり、湿っている。
富田ノ入の先の道は沢状のところもあり、湿っている。

この横沢入周辺には 14世紀から江戸時代後期まで伊奈石という石を切り出した跡があるという。採掘坑が 46カ所もあるようだ。伊奈石という名称は、平安時代に信州伊那から石工が石を求めてこの地に来たことからのようだ。武蔵増戸には、伊奈の地名が残っている。

石山の池。地層の関係で下へ下へと掘ったので底に水が溜まったという。
石山の池。地層の関係で下へ下へと掘ったので底に水が溜まったという。
石山の池そばに建つ山神社の石柱。石工が採掘の安全を祈願して立てたもの。江戸時代後期のものといわれる。
石山の池そばに建つ山神社の石柱。石工が採掘の安全を祈願して立てたもの。江戸時代後期のものといわれる。

登山道に入ると、だんだんと藪道のようになり、湿地のようなところも。石積があった。これも伊奈石だろう。ロープを張った急坂も出てきた。えいやっと上がると「石山の池」の標識。池といっても水はなく、石を切り出した跡に水が溜まっていたので池と言われたようだ。底には苔の生えた石が何個も転がっている。池のそばには山神社と刻まれた石柱。これも伊奈石で造ったものだろう。

標高301mの天竺山山頂には三内神社の本社が祀られている。享保3年(1718)に山麓 から遷した。麓にも三内神社がある。
標高301mの天竺山山頂には三内神社の本社が祀られている。享保3年(1718)に山麓 から遷した。麓にも三内神社がある。
天竺山は南側が開けていて展望がきく。東京サマーランドの観覧車が見える。左手の丘陵は秋川丘陵と滝山丘陵になる。
天竺山は南側が開けていて展望がきく。東京サマーランドの観覧車が見える。左手の丘陵は秋川丘陵と滝山丘陵になる。

石切り場跡から天竺山へは 10分もかからない。三内(さんない)神社が立つ山頂からは展望が開け、秋川や東京サマーランドの観覧車が見えた。

天竺山山頂の下の崩れかけた石段。注意して下ろう。
天竺山山頂の下の崩れかけた石段。注意して下ろう。

崩れかけた伊奈石の階段を下りて駅へと向かう。

さんぽMEMO
横沢入から天竺山だけでは物足りない人は、唐松山も通るコース設定を。横沢・小机林道が通れない場合は、横沢の東側の尾根道から日の出団地脇を通り唐松山へ。唐松山から尾根道 を歩いて天竺山へ行くルートがある。
アドバイス
富田ノ入の道は湧き水などがあり、ぬかるんでいるので、登山靴が好ましい。危険ではないが、急坂もあるので注意。入り口にある手描きの地図はイメージがつかみやすいので、スマホやデジカメで地図を撮影しておくと何かと安心だ。

大悲願寺

真言宗の寺で、本尊は大日如来。源頼朝の配下、平山季重により建久2年(1191)に建立されたと伝わる。寛政6年(1794)に観音堂を建立。1800年代に欄間彫刻、向拝(こうはい)などを追加した。9月に境内に咲く白萩で知られ、別名「萩の寺」。

do-mo kitchen CANVAS

地の食材と無添加にこだわる駅前のカフェ

武蔵五日市駅から左手のほうに行くと店内が見える大きなガラス戸の店がここ。2017 年秋のオープン。地の食材と無添加にこだわった居心地のいい店だ。写真は鮎のオイルを使ったホワイトオムライスのランチセット1250円。2021年5月現在はランチのみ営業。

●12:00~16:00・18:00〜22:00、月休。 JR五日市線武蔵五日市駅から徒歩2分。 ☎080-1390-9264

 

取材・文=清野編集工房
『散歩の達人 首都圏日帰りさんぽ』より