暮らしの中に求めた「美しいユートピア」の形

ウィリアム・モリス(発行:ケルムスコット・プレス)『ユートピア便り』1892年 『TOPPANホールディングス株式会社 印刷博物館』蔵。
ウィリアム・モリス(発行:ケルムスコット・プレス)『ユートピア便り』1892年 『TOPPANホールディングス株式会社 印刷博物館』蔵。

ユートピアとは16世紀イギリスの思想家トマス・モアの小説タイトルで、「どこにもない場所」を意味する。19世紀に入り、イギリスの社会思想家ウィリアム・モリス(1834-1896)が自著『ユートピア便り』の中で暮らしと芸術の総合を唱え、その思想が紹介された20世紀の日本でも注目された。ユートピアは暮らしをめぐる課題と理想となり、20世紀を通じあらゆる場所で、美術、工芸、建築など幅広いジャンルを結ぶ共同体が模索されたという。

本展は2020年に『パナソニック汐留美術館』と『高崎市美術館』他で開催された、モダンデザインに託して新しい上質な暮らしを夢みた人々の交流をテーマとした「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」展の「続編」として開催される。

20世紀日本の「美しいユートピア」の軌跡をたどるのみならず、未来の理想郷への手がかりを探る内容となっている。

鶴岡政男《夜の群像》1949年 『群馬県立近代美術館』蔵。
鶴岡政男《夜の群像》1949年 『群馬県立近代美術館』蔵。

夢を形にするさまざまな運動に迫る

アントニン・レーモンド「群馬音楽センター内観透視図」1958年 レーモンド設計事務所蔵 (C)The Raymond Family。
アントニン・レーモンド「群馬音楽センター内観透視図」1958年 レーモンド設計事務所蔵 (C)The Raymond Family。

全5章を通して約170点の展示作品によって構成される本展。

モリスに触発され、人間や社会の理想を近代に求めた白樺派や民藝運動を中心に20世紀日本の理想主義の芽生えをテーマにした第1章にはじまり、過去と現在を探る悉皆(しっかい)調査や研究から未来を拓こうとしたフィールドワークや建築家にスポットをあてる第2章。関東大震災後に生まれた郊外アトリエや芸術村での芸術家コロニーの交流と夢を紹介する第3章。また農民芸術運動に勤しんだ山本鼎(かなえ)、宮澤賢治らによる地域で育まれた実践の例を追う第4章。第5章ではどこにもない新世界の創造を模索した戦後の試みにスポットがあてられ締めくくられる。

さまざまな分野の表現者たちが模索し、描き出した理想郷の姿が浮かび上がる。

横堀角次郎《静物》1922年 『群馬県立近代美術館』蔵。
横堀角次郎《静物》1922年 『群馬県立近代美術館』蔵。
デザイン:ブルーノ・タウト「ヤーンバスケット」1934-36年 『群馬県立歴史博物館』蔵。
デザイン:ブルーノ・タウト「ヤーンバスケット」1934-36年 『群馬県立歴史博物館』蔵。

関連イベントも開催

ミュージアムコンサート「美しいユートピアをたずねて」

2月7日(土)13時30分~・16時~、展覧会で紹介される群馬音楽ホールを拠点とする群馬交響楽団による演奏、音楽と美術と建築をめぐるトークが『パナソニック東京汐留ビル5階ホール』で開催。出演は群馬交響楽団弦楽カルテット。定員各回110名、要予約。参加費無料(要観覧券)。申し込みはハローダイヤル050-5541-8600まで。

展覧会記念講演会「祖父、清六から聞いた宮澤賢治」

2月14日(土)14時~、宮澤賢治の8歳下の実弟清六の孫、林風舎代表取締役宮澤和樹氏を講師に迎え、展覧会記念講演会が『パナソニック東京汐留ビル5階ホール』で開催。定員150名、要予約。参加費無料(要観覧券)。申し込みはハローダイヤル050-5541-8600まで。

開催概要

「美しいユートピア 理想の地を夢みた近代日本の群像」

開催期間:2026年1月15日(木)~3月22日(日)
開催時間:10:00~18:00(2月6日〈金〉・3月6日〈金〉・20日〈金〉・21日〈土〉は~20:00、入館は閉館30分前まで)
休館日:水(ただし2月11日・3月18日は開館)
会場:パナソニック汐留美術館(東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4F)
アクセス:JR新橋駅から徒歩8分、地下鉄・ゆりかもめ新橋駅から徒歩6分、地下鉄大江戸線汐留駅から徒歩5分
入館料:一般1200円、65歳以上1100円、大学生・高校生700円、中学生以下無料

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/26/260115/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=パナソニック汐留美術館