「原始的」な造形の中に柳宗悦が見出した抽象美とは

「御絵図」 琉球王国時代 19世紀 27.5×38.8cm。
「御絵図」 琉球王国時代 19世紀 27.5×38.8cm。

『日本民藝館』創設者の柳宗悦の晩年にあたる1950年代、『国立近代美術館』では「抽象と幻想」展が開催されるなど、日本の美術界で抽象美術が大きな注目を集めていた。そんな中で柳が発表した「抽象美について」(1957年)は、のちに『民藝』の抽象紋特集(1958年3月)に発展し、柳が「古くて新しい抽象美」と称した多くの図版によって具体的に提示されることとなった。本展は、この特集に掲載された「抽象紋」の工芸を軸に、柳が見た「抽象美」とは何かを探る試みとなる。

展覧会担当者の白土慎太郎さんは、「本展で特に注目されるのは、北アメリカ、オセアニア、アフリカなどの先住民によるエスニック・アートの数々です。中には抽象絵画や抽象彫刻、すなわちモダン・アートの作品と見紛うような表現もあって、従来の『民藝』イメージとは異なることに驚かされます。それらの作品を見た後で、改めて日本の工芸の展示室を見直せば、壺や着物などの見慣れた工芸品の中にも、モダン・アートに通じるような『古くして新しい抽象美』を見出すことができるのではないでしょうか」と見どころを語る。

久留米絣(かすり)や沖縄の絣・こぎん衣裳・アイヌ民族の衣裳といった染織、日本の流し釉やイギリスのスリップウェアといった陶磁などで構成された「抽象紋」の工芸を通して、そこに現れる美に触れることができる。

人物像石柱(部分) 産地不詳 19~20世紀前半。
人物像石柱(部分) 産地不詳 19~20世紀前半。
タパ(部分) ポリネシア、サモア 樹皮・染料 19世紀。
タパ(部分) ポリネシア、サモア 樹皮・染料 19世紀。
能装束 白地鱗模様摺箔(部分) 江戸時代 18世紀(『民藝』第63号掲載)。
能装束 白地鱗模様摺箔(部分) 江戸時代 18世紀(『民藝』第63号掲載)。

関連イベントも開催

学芸員による列品解説

1月25日(日)14時~、担当学芸員による列品解説が行われる。申し込み不要。参加費無料(入館料別)。

記念講演会「『抽象』をめぐる交差―民藝館と近代美術館」

2月7日(土)18時~、『東京国立近代美術館』主任研究員・花井久穂氏による記念講演会が開催。参加費500円(入館料別)。申し込みは電話にて。

開催概要

「抽象美と柳宗悦」

開催期間:2026年1月6日(火)~3月10日(火)
開催時間:10:00~17:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:月(祝の場合は翌)
会場:日本民藝館(東京都目黒区駒場4-3-33)
アクセス:京王電鉄井の頭線駒場東大前駅から徒歩7分
入場料:一般1500円、大学生・高校生800円、中学生以下無料

【問い合わせ先】
日本民藝館☏03-3467-4527
公式HP https://mingeikan.or.jp/exhibition/special/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=日本民藝館