次世代へつなぐ文学資料の缶づめ方法とは?

展示風景。
展示風景。

1967年に開館し、数多くの文学館や文学者の記念館が存在する日本の中でその先頭を切ってきた『日本近代文学館』。

本展では同館が、資料の収集や保存はもちろんのこと、どのようにその価値を見出す人々に向き合ってきたかを改めて問う。現在進行形のアーカイブ拠点でもある館の舞台裏を見せ、資料の保存と公開方法について紹介するとともに、文学の歴史に向き合うことの知的な面白さや愉しさを伝えてくれる。

展示担当の細谷さんは、「デジタル時代になって小説は端末で読めるようになりました。でも元々は、作者が書き、印刷され、『本』のかたちになって初めて読者に届くものだったのです。本展では作家が物語の着想を得て、原稿を書き、雑誌や書籍の形となって読者のもとに届くまでの一連の流れのプロセスに関わる『資料の物語』をご覧いただくとともに、大量印刷と廃棄の歴史の中で、どのように資料が守られてきたのかをお示しします。保存や収集・公開の歩みにも当館ならではの工夫がありました。なかでも大ケースの『名著複刻全集』の書架再現は必見。文学をまるごと『缶づめ』にする営みの奥深さを感じていただければ幸いです」と見どころを語る。

なかなか目にすることができない初版本の複刻版が並ぶさまも圧巻。改めて名作にふれたくなりそうだ。

5章に分け、試行錯誤が続くアーカイブを紹介

出版記念会コーナー。
出版記念会コーナー。

第1章「資料はいつも危機にさらされている」では、文学資料の散逸がテーマ。「散逸」が懸念されるような資料とはどういったものなのか、戦中に検閲で削除済の印が押された「中央公論」(昭和13.3)などが展示される。第2章「何をもって資料と呼ぶか」では50万冊もの数が収蔵されている図書資料をはじめ、館内資料を種別に展示。第3章「資料整理の終わりなきプロセス」では、寄贈された資料の正確な整理と登録の流れを文学館の裏側≒仕事を見せる形で紹介する。

第4章「公開・活用の苦難と喜び」では、資料を展覧会や刊行物、講座などで広く公開に努めてきた館の過去の成果物の記録が紹介されるとともに、それがどのように作られてきたのかという過程も紹介。第5章「複製の向こうに文学が見える」では、雑誌複刻版、近代文学名著の初版本を忠実に再現した「名著複刻全集」シリーズの刊行が紹介される。

貴重な文学を保存するために資料アーカイブが果たしてきた役割について学ぶことができるとともに、次世代へ向けて資料を守り続ける使命感が伝わってくる。

複刻版コーナー。
複刻版コーナー。

開催概要

「文学を缶づめにする? The Archiving of archives」

開催期間:2025年11月29日(土)~2026年3月28日(土)
開催時間:9:30~16:30(入館は16:00まで)
休館日:日・月(祝の場合は開館)・12月26日(金)~1月5日(月)・1月13日(火)・22日(木)・2月17日(火)~21日(土)・24日(火)・26日(木)・3月26日(木)
会場:日本近代文学館(東京都目黒区駒場4-3-55駒場公園内)
アクセス:京王電鉄井の頭線駒場東大前駅から徒歩7分
入場料:一般300円、中学・高校生100円

【問い合わせ先】
日本近代文学館☏03-3468-4181
公式HP https://www.bungakukan.or.jp/cat-exhibition/16107/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=日本近代文学館