かつては農家が生活必需品を買う市だった

東京の二大“ぼろ市”といえば「世田谷のボロ市」ともうひとつ、練馬区本立寺周辺で行われる「関のぼろ市」だ。日蓮宗の宗祖である日蓮上人の命日を偲(しの)んで営まれる「お会式(えしき)」に合わせて、江戸時代の終わり頃から毎年12月9日と10日には門前に市が立つようになった。ちなみに日蓮上人の命日は10月13日だが、古くから農業が盛んだった練馬区では農作業が終わった11月に行われることが多い。本立寺では一年最後のお会式として12月9日に執り行われている。

かつては「関の市」などと呼ばれ、鎌や鍬(くわ)などの農機具、桶やざるなどの生活用品、正月用品を売る市が立ち、近所に住む農家がこぞって買い求めた。草履の鼻緒の布を売る業者も出ていたことから、布きれを表す“ぼろ”にちなんでいつの頃からか「ぼろ市」と呼ばれるようになった。

昭和に入るとサーカス小屋がやってきたりオートバイの曲芸が披露されたりと娯楽性に富んだ市へと変化していった。「今は食べ物の露店がほとんど。縁日に近い感じ」と話すのは本立寺の住職・田坂さん。武蔵関駅北口から本立寺門前まで通りの両側に約230の露店が軒を連ね、多くの人々であふれ返る。時代とともに市の内容は変化していったが、活気は昔のままだ。

にぎやかな万灯行列が師走の街を練り歩く!

また9日19時からは華やかな万灯行列も。日蓮上人が亡くなる際、10月にもかかわらず桜の花が咲いていたという言い伝えから、造花で飾った花万灯を中心に纏(まとい)や鐘、太鼓を持った法被(はっぴ)姿の人々が、武蔵関駅南口を出発し本立寺までの約1㎞を約2時間かけて練り歩く。参加団体は約20講(約400人)にものぼり、力強く纏を振りかざし威勢のいい掛け声を街じゅうに響かせながら参拝にやってくる。

「年内最後となる万灯行列をぜひ見にいらしてください。温かいものでも食べながら年末の雰囲気も楽しんでいただければ」と田坂さん。江戸時代から練馬の地で脈々と受け継がれてきた伝統のぼろ市へ、暖かい格好で出かけよう。

鐘や太鼓の音ともに迫力ある纏振りが披露され、寒さも吹き飛ばすような熱気に包まれる。
鐘や太鼓の音ともに迫力ある纏振りが披露され、寒さも吹き飛ばすような熱気に包まれる。

開催概要

「関のぼろ市」

開催期間:2025年12月9日(火)・10日(水)
開催時間:10:00~22:00(10日は~21:00)
会場:本立寺(東京都練馬区関町北4-16-3)
アクセス:西武鉄道新宿線武蔵関駅から徒歩3分

【問い合わせ先】
本立寺☎03-3920-1384
URL:https://www.city.nerima.tokyo.jp/kankomoyoshi/annai/rekishiwoshiru/rekishibunkazai/bunkazai/b043.html

 

取材・文=香取麻衣子 ※写真は主催者提供