「秋葉原」の地名の由来となった秋葉神社
明治3年(1870)に火難除けの守護神として創建した秋葉神社。当時、東京府(現在の東京都)では火災がたびたび発生していたことから、現在の秋葉原駅近くに「火除け地」といわれる延焼を防ぐためのスペースが設けられた。そこに火伏せの神様を祀ったのが秋葉神社の起源で、人々からは「秋葉さま」と親しまれた。秋葉さまが祀られている原っぱということで「秋葉の原」や「秋葉っ原」などと呼ばれ、これが秋葉原の地名の由来になったといわれている。
その後鉄道の敷設に伴い、明治21年(1888)に入谷の地に移ったが、変わらず東京一円の火災鎮護の神社として厚く信仰されている。そんな秋葉神社で無病息災と防火を祈って行われる晩秋の恒例行事が、毎年11月6日の「火渡りの神事」。始まりは定かではないが、昭和20年代から続いている由緒ある神事だ。
16時から神前では鎮火祭が行われ、途中から社殿前で火渡り式場をセッティング。四方にしめ縄を張り巡らせ、木炭や薪木を並べた後に点火される。最初は人の身長ぐらいの高さまで火が燃え上がり、多くの参拝客が固唾(かたず)を呑んで見守る。神職によって祓いの儀式が行われ、火が炭に移って落ち着き始めると神職が長い竹の棒で叩いて通路となる部分をならして、これで火渡り式場の完成だ。
参拝客も火渡りに参加できる!
祭典が終わると、改めて祓いの神事が行われ火渡りがスタートする。最初に神社の関係者、地元の関係者、消防の関係者などが渡り、その後一般の参拝客も火渡りに参加できる。「火渡りというと“荒行”や“修行”をイメージされるかもしれませんが、落ち着いた火の力をいただく神事なので安心して渡っていただいて大丈夫ですよ」と話すのは宮司の沼部文彰さん。
なんでも、火には2面性があるという。我々がよくイメージするのが災いを引き起こす荒々しい面。だがそれと同時に人間の生活に欠かせない、恵みをもたらす穏やかな面ももっている。これらの大きな力をもつ「火」を御神徳と仰ぐことで、なによりも大きな力を授かれるというものなのだ。
靴を脱いで裸足になり、祭典でお祓いした火難除けのお札を受けたらいざ火渡りへ。渡り終わると不思議な温かさを感じたという人が多いのだとか。「参拝者からは『次の日まで体がポカポカしました』とか『穏やかな気持ちが続きました』なんて声をいただいたこともあります」と沼部さん。火のもつ大きな力をいただけるというめずらしい神事に参加してみては。
開催概要
「火渡りの神事」
開催期間:2025年11月6日(木)
開催時間:16:00~17:30頃
会場:秋葉神社(東京都台東区松が谷3-10-7)
アクセス:地下鉄日比谷線入谷駅から徒歩7分
【問い合わせ先】
秋葉神社☎03-3844-5748
取材・文=香取麻衣子 ※写真は主催者提供





