豪華絢爛な作家の作品約330点が一堂に

藤島武二・表紙絵『明星』第11号 1901年 東京新詩社 個人蔵。
藤島武二・表紙絵『明星』第11号 1901年 東京新詩社 個人蔵。

イマジュリイとはフランス語で、“ある時代やジャンルに特徴的なイメージ群”のこと。1900-30年代の日本には西洋から新しい複製技術が到来し、雑誌や絵葉書、ポスター、写真などを中心に、西洋の芸術やアール・ヌーヴォー、アール・デコの様式と日本の伝統を融合させた独特な美意識のデザインやイラストレーションが生み出された。当時の活気に注目した研究者はこれらを「大正イマジュリィ」と総称し、2004年に学会を結成した。

本展は、文学と美術、音楽などが混じりあう近代の書物と刷物を愛し、学会の創立に携わった山田俊幸氏(1947-2024)の収集品から、大正時代を中心とする約330点を選び出し、紹介するもの。儚く膨大なイメージ群=大正イマジュリィの世界を、藤島武二、杉浦非水、竹久夢二などの主要な作家たちと、時代を映すさまざまな意匠を切り口に掘り下げる。

高畠華宵・口絵「初夏の風」『少女画報』18巻5号 1929年 東京社 個人蔵。
高畠華宵・口絵「初夏の風」『少女画報』18巻5号 1929年 東京社 個人蔵。
竹久夢二・表紙絵『汝が碧き眼を開け』(セノオ楽譜第56番)1917年 初版/1927年7版 個人蔵。
竹久夢二・表紙絵『汝が碧き眼を開け』(セノオ楽譜第56番)1917年 初版/1927年7版 個人蔵。
岸田劉生・表紙絵『生長する星の群』第2年第5号 1922年 新しき村出版部・曠野社 個人蔵。
岸田劉生・表紙絵『生長する星の群』第2年第5号 1922年 新しき村出版部・曠野社 個人蔵。
小林かいち 絵葉書セット『灰色のカーテン』より 1925-26年頃 さくら井屋(京都)個人蔵。
小林かいち 絵葉書セット『灰色のカーテン』より 1925-26年頃 さくら井屋(京都)個人蔵。

装幀や挿絵に表現された、創造性あふれる意匠の数々

岡本帰一・挿画/野口雨情・詩 「兎のダンス」『コドモノクニ』3巻5号 1924年 東京社 個人蔵。
岡本帰一・挿画/野口雨情・詩 「兎のダンス」『コドモノクニ』3巻5号 1924年 東京社 個人蔵。

大正時代にはフランスの哲学者アンリ・ベルクソンによる、“生命には創造的に進化する衝動(エラン・ヴィタルélan vital)が備わっている”という思想が広まり、創造性が重んじられたという。当時興隆した出版界では、青年たちが雑誌に文や絵を投稿し、自主出版で装幀や挿絵で自己を表現するなど、宇宙や自然の「永遠の生命」と自己の「内部生命」を謳う芸術観が広まった。生い茂る植物、太陽、踊る女性など、大正イマジュリィに通底する「生」の表現に始まり、浮世絵の再生、次世代を育む童画、耽美な怪奇美、都市の商業デザインなど、人々の意識を変えたさまざまな意匠が登場し、観る者を魅了する。

関連イベントも開催

学芸員によるギャラリートーク

7月18日(金)・25日(金)の各日18時~18時40分、本展担当学芸員が展覧会の見どころや出品作品について解説するギャラリートークが、展示室で開催。集合は開催時間に5階展示室入り口。参加無料(ただし観覧料は必要)。

作品鑑賞会「ふぁみりー★で★とーく・あーと」

8月18日(月)9時30分~11時30分、休館日に貸し切りとなる美術館でボランティアガイドとトークができる作品鑑賞会を開催。解説を聞くのではなく、参加者が作品を観て、感じて、思うことを話しながら楽しむ参加型のイベント。定員30名、参加費1500円。高校生以下無料。申し込みは7月11日(金)10時より公式HPにて受付開始。

開催概要

「大正イマジュリィの世界 デザインとイラストレーションの青春1900s-1930s」

開催日:2025年7月12日(土)~8月31日(日)
開催時間:10:00~18:00(金曜は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(ただし7月21日・8月11日は開館)・7月22日・8月12日
会場:SOMPO美術館(東京都新宿区西新宿1-26-1)
アクセス:JR・私鉄・地下鉄新宿駅から徒歩5分
入場料:一般1500円、25歳以下1100円、高校生以下無料
※障害者手帳をお持ちの人とその介護者1名は無料。

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2024/taisho-imagerie/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=SOMPO美術館