再評価が進むヒルマ・アフ・クリントの作品が満を持して初来日

ヒルマ・アフ・クリント、ハムガータン(ストックホルム)のスタジオにて、1902年頃 ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation。
ヒルマ・アフ・クリント、ハムガータン(ストックホルム)のスタジオにて、1902年頃 ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation。

20世紀初頭、ワシリー・カンディンスキーやピート・モンドリアンといった同時代のアーティストに先駆け、抽象絵画を創案した画家として、近年再評価が高まるヒルマ・アフ・クリント。19世紀後半スウェーデンに生まれた彼女は、王立芸術アカデミーで正統的な美術教育を受けた後、画家としてのキャリアをスタートさせた。

一方で神秘主義などの秘教思想やスピリチュアリズムに傾倒し、交霊術の体験などを通して、アカデミックな絵画とはまったく異なる抽象表現を生み出していく。その中で1906年から1915年にかけて描き上げられたのが「神殿のための絵画」と呼ばれる全193点の抽象絵画である。それらは自身が構想した神殿を飾るためのものだったという。その後、81歳で死去するまで制作を続けたものの、作品はほとんど展示されることなく手元に残されたという。

《ポピー》制作年不詳 ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation。
《ポピー》制作年不詳 ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation。

潮目が変わったのは21世紀に入ってから。2013年に『ストックホルム近代美術館』からスタートしたヨーロッパ巡回の回顧展でその全貌が明らかになり、100 万人以上の動員を記録。また2018年にニューヨークの『グッゲンハイム美術館』で開催された回顧展では、同館史上最大となる60万人以上の動員を記録。ヒルマ・アフ・クリントは未知の画家として世界に驚きをもって迎えられる。それ以降、世界各地で大規模な展覧会が開催され続けている。

本展の広報担当者は「見どころはアフ・クリントの代表的な作品群「神殿のための絵画」の中でも、特に巨大なサイズで描かれた〈10の最大物〉です。高さ3mを超える画面からあふれ出てくるようなパステルカラーの色彩と、多様な抽象的形象。そして、その圧倒的なスケール感は、まるで異空間を漂っているかのような、唯一無二の体験をもたらします」と語ってくれた。

アジア初の回顧展で初来日となる140点が展覧

《知恵の樹、W シリーズ、No. 1》1913年 ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation。
《知恵の樹、W シリーズ、No. 1》1913年 ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation。

本展は代表的作品群「神殿のための絵画」を中心に、彼女が残したスケッチやノートなどの資料、同時代の秘教思想・自然科学・社会思想・女性運動といった多様な制作の源の紹介を交えて、その画業の全容に迫るもの。

特にハイライトとなる「神殿のための絵画」のなかでも巨大サイズで描かれた〈10の最大物〉(1907年)は、幼年期・青年期・成人期・老年期と人生の4つの段階を描いた10点組の大作。身を包み込むような圧倒的なスケールで観る者を引き込んでいく。

彼女の内面世界にふれることができる、圧巻の内容となっている。

《10の最大物、グループIV、No. 2、幼年期》1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation。
《10の最大物、グループIV、No. 2、幼年期》1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation。
《10の最大物、グループIV、No. 3、青年期》1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation。
《10の最大物、グループIV、No. 3、青年期》1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation。
《10の最大物、グループIV、No. 7、成人期》1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation。
《10の最大物、グループIV、No. 7、成人期》1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation。
《10の最大物、グループIV、No. 9、老年期》1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation。
《10の最大物、グループIV、No. 9、老年期》1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation。

開催概要

「ヒルマ・アフ・クリント展」

開催期間:2025年3月4日(火)~6月15日(日)
開催時間:10:00~17:00(金・土は~20:00。入館は閉館30分前まで)
休館日:月(ただし3月31日、5月5日は開館)、5月7日(水)
会場:東京国立近代美術館(東京都千代田区北の丸公園3-1)
アクセス:地下鉄東西線竹橋駅から徒歩3分
入場料: 一般2300円、大学生1200円、高校生700円 ※当日に限り所蔵作品展「MOMAT コレクション」も観覧可。
※中学生以下、障がい者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料。

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP  https://art.nikkei.com/hilmaafklint/

 

取材・文=前田真紀 画像提供=ヒルマ・アフ・クリント展