440年以上前の楽市から始まった

東急電鉄世田谷線の世田谷駅~上町駅間にある、通称「ボロ市通り」を中心に毎年12月15・16日と1月15・16日に開催される「世田谷のボロ市」。普段は閑静な通りに1日約20万人も訪れるという東京を代表する名物市だ。

ボロ市保存会の本部にも「本年で447年継承しています」と書かれた旗が掲げられているように、その起源は安土桃山時代までさかのぼる。天正6年(1578)、関東地方を支配していた小田原城主の北条氏政が、世田谷城の南側に新たな宿場を設けて楽市を開いたのが始まり。当時は毎月1の日と6の日の月6回開かれていたので、「六斎市」とも呼ばれていた。その後、北条氏は豊臣秀吉に滅ぼされ、江戸時代になって世田谷城が廃止されると六斎市も衰えていった。

世田谷代官屋敷を中心にしたボロ市通りは多くの人でごった返す。
世田谷代官屋敷を中心にしたボロ市通りは多くの人でごった返す。

しかし、この辺りは江戸と小田原を結ぶ重要な拠点として栄えていたので、六斎市がなくなった後も毎年12月15日には歳の市が開かれた。明治時代になって新暦が使われるようになってからは正月15日に開かれ、いつの頃からか現在のように年4日開催されるようになった。ちなみに「ボロ市」の「ボロ」とは布きれのこと。当初は農機具や正月用品などを販売していた歳の市だったが、明治に入ると農家の作業着の繕いやわらじに編み込んで丈夫にする布きれの売買が盛んに行われ、「ボロ市」と呼ばれるようになった。

通りにありとあらゆるものが潜む

当日、ボロ市通りを中心に約600軒の露店がところ狭しと並ぶ。骨董品や日用雑貨をはじめ、食品、植木、古本、着物、民芸品、昭和レトロなおもちゃなど、ありとあらゆるものが売られる。「ここ最近はコロナ禍も明けて海外にも渡れるようになったからか、輸入雑貨を扱うお店が増えています」と教えてくれたのはボロ市保存会の村石圭樹さん。

買い物だけでなく、名物の代官餅をはじめとした多彩なグルメの食べ歩きも楽しい。しかしながら、飲食の出店数は意外にも毎年100軒前後に抑えているそう。「飲食の割合を増やしてしまうと縁日のようになってしまう。ボロ市は農機具の販売から始まったので、本来の趣旨の通りあくまでメインは物販です」(村石さん)。どおりでちょっと変わったものまで売られているはずだ。なかにはまな板や熊野筆、ゴム鉄砲、手作りの刀剣の鍔(つば)なんてものも。思いがけないものに出合えるのがボロ市の醍醐味だ。

ボロ市の楽しみ方を聞いてみたところ、「まずは値段交渉ができるところ。あと出店者と来場者の間で情報交換が行われることも。こういう骨董が好きならあそこの市に行ってみたらなんて教えてもらえたら知識が増えてうれしいですよね。そんな昔ながらのやりとりを楽しんでもらえば」と村石さん。お店の人との会話を楽しみながら自分の好きなものや掘り出し物を発掘して、この冬最後のボロ市を楽しもう。

思いがけないものとの一期一会を求めてぶらぶら歩くだけでも楽しい。
思いがけないものとの一期一会を求めてぶらぶら歩くだけでも楽しい。

開催概要

「世田谷のボロ市」

開催日:2025年1月15日(水)・16日(木)
開催時間:9:00~20:00
会場:ボロ市通り(東京都世田谷区世田谷)
アクセス:東急電鉄世田谷線世田谷駅、上町駅から徒歩3分

【問い合わせ先】
せたがやコール☎03ー5432ー3333
公式HP:https://www.city.setagaya.lg.jp/02072/10108.html

 

取材・文=香取麻衣子