品川の伝統と文化遺産を伝える

江戸時代、東海道五十三次で日本橋から数えて第一の宿場町として栄えた品川宿。そんな歴史の面影が今なお残る旧東海道品川宿にあたる、八ツ山から青物横丁までの約2㎞区間で毎年秋に行われるのが「しながわ宿場まつり」だ。宿場町のにぎわいを再現した祭りに地元の人のみならず毎年多くの人々が訪れる。

祭りが始まったのは1990年。「元々夏の間だけですが、商店街では公園で月に1回、土曜の夜市を開いていたんです。それが結構にぎわっていたので周りの商店街に波及していき、現在のような形に。目黒川を挟んで北品川と南品川に分かれますが、街はひとつだから一緒にやっていこうという機運も高まりました」と教えてくれたのは北品川本通り商店会副会長であり、しながわ宿場まつり実行委員長でもある篠原典男さん。こうして4つの地元商店街が中心となって祭りが行われるようになった。

華やかなおいらん道中にうっとり

「見どころはなんといっても、28日(土)のおいらん道中。コロナ禍を経て5年ぶりの復活です。5人のおいらんや肩貸し、傘持ちなどが旧東海道を練り歩きます!」と篠原さんは意気込む。華やかな着物をまとい高下駄を履いたおいらん役の女性が優雅に練り歩き、沿道の観客が固唾を飲んで見守る。吉原流の独特な「外八文字」の歩き方で一歩ずつ進む姿は実に艶やかだ。さらに、「今年は初の試みとして、企業や自治体の協賛を得て、神奈川県の湯河原温泉から本物の芸者さんがおいらん役として2人参加します」と篠原さん。隅々まで行き届いた所作の美しさにも注目したい。

また、同日夕方に北品川本通り商店会で開催する「しながわ宿場ナイト」にも注目! 商店街の参加店舗前には、時代劇のドラマなどで見掛ける床几(しょうぎ)台と呼ばれる腰掛けが置かれ、そこへ江戸町人の格好をした人々が出没して“宴”が始まる。夜の品川宿を、飲んで撮影して楽しめる参加型のイベントだ。「江戸町人役の中には自分の髪の毛で髷を結う方や遠方から参加してくださる方もいるんです。今年はおいらんも合流するので、一緒にお酒を飲んだり記念写真を撮ったりして楽しんでいただけたら」(篠原さん)。

29日(日)のメインイベントは「しながわ宿場まつり行列」。江戸時代の人々に扮した行列と交通安全パレードが八ツ山口から品川寺までを進む。「侍や町娘、お殿様にお姫様、さらに瓦版屋や飛脚、虚無僧、悪代官まで、40人ぐらいが江戸の人々に扮して練り歩きます」と篠原さん。江戸の風俗を一気に垣間見られるユニークな行列だ。

江戸時代のさまざまな格好をまとった人々が次々に現れる。
江戸時代のさまざまな格好をまとった人々が次々に現れる。

各商店街では物産展や模擬店の出店などが行われるほか、聖蹟公園でのキッチンカーによる出店、品川寺での火渡り荒行(29日のみ)も。江戸庶民にとって品川宿が気軽に遊びに行ける場所だった歴史に思いを馳せながら、宿場町のにぎやかな雰囲気を体感しよう。

開催概要

「しながわ宿場まつり2024」

開催日:2024年9月28日(土)・29日(日)
開催時間:28日(土)のおいらん道中は16:00~19:30(予定)、しながわ宿場ナイトは17:30~20:30、29日(日)のしながわ宿場まつり行列は11:00~16:00(予定)
会場:旧東海道品川宿周辺(東京都品川区)
アクセス:京急本線北品川駅、新馬場駅、青物横丁駅すぐ

【問い合わせ先】
品川宿交流館☎03ー3472ー4772
公式HP:https://shinagawa-shukuba-matsuri.tokyo/

 

取材・文=香取麻衣子 ※画像はしながわ観光協会提供