『KIBI'S BAKE SHOP』のオカメサブレ【ときわ台】
語りきれない想いを広げた翼に乗せて
モチーフは、店主の二見さわや歌さんが以前飼っていたオカメインコのキビちゃん。食べるのが惜しくなりながらも口に入れるとほろっと崩れ、きび砂糖の朗らかな甘みに癒やされる。埼玉県入間市の桂ファームから直送される卵から、卵黄だけを取り出して使っていることや、低温でじっくり火を入れるのが秘訣(ひけつ)。月1回工房を公開する際には、「工場見学」と、近所の小学生が体験に訪れることも。
『KIBI'S BAKE SHOP』店舗詳細
『越後鶴屋』のみたらし団子【西荻窪】
つるりとなめらかに舌の上を転がる
のれんに「杵つき餅」とあり、できたての大福を目当てに遠くからわざわざ足を運ぶ人も。近隣の学校に式典で配る紅白餅を卸すこともあるが、実は、地元の人たちにはみたらし団子も根強い人気。通常、団子はうるち米の新粉を使い、むちっとした歯応えを出すが、こちらでは餅粉をブレンドすることで、つるりとした食感に。たっぷり絡ませた醤油だれから、日高昆布の出汁が豊かに香る。
『越後鶴屋』店舗詳細
『たいやき たつみや』のたいやき【下高井戸】
下膨れが福々しいおめでたいやき
愛嬌(あいきょう)のある表情につられ、手に取るとずっしり。しっかり固めに焼き上げた皮が香ばしく、中にはつぶあんがみっちり詰まっている。北海道十勝産のアズキを店内の釜で炊き上げたもので、甘さは控えめ。力強い滋味と素朴な香りが漂う。1968年にたいやきと甘味の店として開店し、現在は居酒屋を併設。そちらでは、常連客のリクエストによって生まれたたいやきの姿揚げが締めスイーツに。
『たいやき たつみや』店舗詳細
『菊見せんべい総本店』のめずらしせんべい【千駄木】
甘じょっぱい粉雪がふわり、舞う
団子坂で店を始めたのは明治8年(1875)。王道の堅焼きに対し「こればかり、何袋も買っていく人がいる」のがめずらしせんべいだ。5代目の天野善之さんいわく「昭和40年ごろ、先代が同業の仲間たちと考案したアイデア商品」らしく、サクッという歯触りと甘じょっぱい味わいが当時としては珍しかった。粉醤油、砂糖をまとい、それが口の中で粉雪のようにスッっと溶け、夢見心地。
『菊見せんべい総本店』店舗詳細
『忠三櫻本舗』のどらやき【篠崎】
そのふわふわの皮にむしろ包まれたい
「皮の概念が変わった、とお客さまに喜ばれました」と3代目の草薙里美さん。アズキの形を感じられるふっくらとしたつぶあんを、ふわっふわの皮で包み込む。丁寧に空気を含ませながら焼くのが肝心だと言い「気泡一つで質感が変わるので日々調整を重ねています」。洋風のもの、季節限定品など豊富なバリエーションの中から選べ、アイスのように楽しめる冷凍どらやきはまさに唯一無二。
『忠三櫻本舗』店舗詳細
『アルパジョン』のシュークリーム【梅ヶ丘】
あふれるカスタード、かぶりつけパイシュー
いっそ手で持って、サクッとしたパイ生地にかぶりつきたい。あふれんばかりのカスタードクリームは、その日に炊いたカスタードと、高脂肪の生クリームで作られ、フレッシュな甘い香りが鼻先でパッと開く。1984年、豪徳寺の「ル・サントノーレ」(閉業)の2号店としてオープン。以来、ひたむきに「街のケーキ屋さん」であり続け、日々のおやつや家族団らんのケーキを買い求める人でにぎわう。
『アルパジョン』店舗詳細
『按田餃子』の自家製調味料【代々木上原】
これがあればひと匙(さじ)で味が決まる
もちもちした厚手の皮が特徴の「按田餃子(あんだぎょうざ)」。独特の形状には、自家製調味料をのせやすいという利点もある。この調味料は「按田餃子のタレ」「味の要」「豆豉ミックス」の3種類あり、炒め物や、鍋パーティーで味変する場面でも役立つ。カレーのスパイスを多用した「味の要」はポテトサラダに足したり、マヨネーズやヨーグルトと混ぜて唐揚げのソースにしたり、アイデア次第で用途は無限!
『按田餃子』店舗詳細
『STYLE'S CAKES & CO.』のタルト【神保町】
響く、ザックザク!これぞ幸福を呼ぶ音
こんがり焼き込まれたタルト台が、ザックザク。噛(か)み締めるたび、特製のクレームダマンドが勢いよく香り立つ。トッピングした旬のフルーツごとオーブンに入れる焼きタルトは、熱を加えることで旨味を増した果汁がタルト台に染み込み、やみつきに。ちなみに、店主の岩崎修さんのお気に入りは「定番のバナナクリーム」。頬張った途端、マスコバド糖のまろやかな甘みが伝わり、ついにっこり。
『STYLE'S CAKES & CO.』店舗詳細
『佃煮処 湯葢(ゆぶた)』の佃煮【稲荷町】
引き継いだ伝統を厳選素材と共に炊く
素材を生かした程よい甘さ、適度な辛さは、2017年に閉店した名店「鮒金」から引き継いだ味。約15年間の修業の末、井上真太朗さんが立ち上げた店には、常時25種類ほどの佃煮が並ぶ。ラインアップは時季によって異なり、伝統的なものから変化球までずらり。3色パックはちょっとした手土産にもおすすめで、ご飯のお供はもちろん、しそ昆布ならチーズと組み合わせればワインにもぴったり。
『佃煮処 湯葢』店舗詳細
『向島 松むら』のいなり寿司【曳舟】
シャリも愛も満載!下町のソウルフード
地域の祭りや花火大会があると、多いときにはいなり寿司が4000個以上も売れるので、早朝から従業員総出で作業するそう。油揚げもシャリも、のり巻きの干瓢(かんぴょう)もすべて同じ4升炊きの羽釜で炊き上げる。皮はジューシーでありつつ、さっぱりと切れ味よく整えられ「私自身、これを食べて育ちました」と2代目の嶽本信吾さん。シャリはお彼岸を境に、秋冬は五目飯、春夏はケシの実入りに替わる。
『向島 松むら』店舗詳細
取材・文=信藤舞子 撮影=泉田真人
『散歩の達人』2025年12月号より





