古くからの人、新しい人を繋げられる場所に

東府中から徒歩約2分、平和通り沿いにある店舗。
東府中から徒歩約2分、平和通り沿いにある店舗。

オーナーバリスタのカワナレイラさんは、バリスタという仕事を始めてスペシャルティコーヒーに出合った。まだまだ馴染みの薄いこのコーヒーの楽しみ方を発信できる場所を作りたいと、2017年10月22日にこの『cafe MUSASHIYA』をオープンした。東府中に住んで三代目の生粋の府中人。しかし、レイラさんいわく歴史ある府中の町では、「三代くらいじゃまだまだ」なんだそう。

「古くからの人と新しい人が分断されていると感じることがあるので、そういった方たちをうまく繋げられる場所が作れたらいいなと」

また、こんな時代だからこそ、経営者は利益を追求するよりも、地域還元や社会貢献を考えるべきだという思いもある。

コーヒー屋さんは昼の居場所

コーヒーに特化した店で食事は提供していない。通りすがりに入ってきた人からは「思ったのと違う」と言われることも多い。

「ごはんはごはんの店で食べてもらえたらいいなと。お茶はお茶の店、お酒はお酒の店で。そうすると街がまわるじゃないですか。僕は街全体で人の流れを考えていきたいんです。コーヒー屋さんは昼の居場所になるといいなと。常連の人やお店の人に会いに行くための場所」

バリスタという職業は技術者なので、店がなくても仕事はできるというレイラさん。あえて店を作ったのには、居場所を作りたかったという思いがあるから。

「だから皆さんにも店を使ってもらいたいんです。うちもお客さんで何かやりたいという人がいれば、営業しながらでもヨガをやったりワークショップやったり。僕が面白いと思えばなんでも」

以前も、常連の和菓子職人の女性がお店の前でポップアップショップを開いたりもしていたそう。

土地や気候による違いが楽しめるよう、豆は浅煎り

そして、店を開いた理由として、スペシャルティコーヒーにまつわるさまざまな楽しさを伝えたいという思いがある。

「シングルオリジンコーヒーにこだわっています。シングルオリジンというのは、単一の生産者のこと。直接のやりとりをして、品質に対してお金を払える、ちゃんと生産者に還元されるというのが重要。フェアトレードや有機栽培は当たり前で、そうすると、土地や気候による違いが豆にはっきりと現れるんです。その個性の違いをより楽しめるように、浅煎りの豆というのはこだわっています」

ワインの味を決める要素として、テロワールという概念はだんだん広まってきたが、農作物であるコーヒーも同様だ。「そうやってみんなが頑張っていることを僕は伝えているだけなんですけどね」とレイラさん。

果実味と甘さの濃縮されたエスプレッソ

エスプレッソにもハンドドリップ用と同じ焼き方をした浅煎りの豆を使用。
エスプレッソにもハンドドリップ用と同じ焼き方をした浅煎りの豆を使用。

今回淹れてもらったのがエスプレッソトニック。炭酸と自家製シロップで作ったトニックウォーターの層の上に、エスプレッソを注ぐ。

「エスプレッソはコーヒーの粉をたくさん使用するので、均一の品質を保つために、だいたいブレンドのよく焼いた豆を使うことが多いんですね。でもうちではエスプレッソも浅煎りのシングルオリジンの豆を使っています。僕はさらにエスプレッソでもハンドドリップと同じ焼き方をした浅煎りの豆を使うので、他店のエスプレッソよりもさらに浅煎り。そうする事で、より果実味を感じて貰いやすくしています」。

エスプレッソマシンで、高温、高圧、短時間で抽出。
エスプレッソマシンで、高温、高圧、短時間で抽出。
エスプレッソとトニックウォーターの層がきれいに分かれている。
エスプレッソとトニックウォーターの層がきれいに分かれている。

淹れていただいたエスプレッソトニックを飲んでみると、確かに柑橘のような果実味と甘さを感じる。エスプレッソと知らずに飲んだら、未知の果実のドリンクのように感じただろう。柑橘のような風味もあり、すっきりと自然な甘さと酸味。アイスコーヒーとも違う味わいだ。

「シングルオリジンの豆を使っているので、時期ごとにエスプレッソの豆も変えています」とレイラさん。今日いただいたエスプレッソトニックも、次来たときにはもう別の味わいになっているということ。「その違い、一期一会なところを楽しんでほしいですね」。

住所:東京都府中市若松町1-1-4 ライトルヴェ 1F/営業時間:11:00〜18:00
土日祝10:00〜17:00/定休日:不定/アクセス:京王電鉄京王線・京王競馬場線東府中駅から徒歩約2分

構成=フリート 取材・文・撮影=藤村恭子