あの冒険心をもう一度
2020年、「全てをハイにする」の中で一番人気があったのが、スイカハイだ。あれは冒険だった。果物屋からスイカを抱えて帰り、大量のスイカハイを飲み干すまでの壮大な旅だったのだ。終盤、投げ出したい気持ちにもかられ、夏の魔物として封印し、2度とやらないと心に決めた。でも、夏の魔物が現れたなら、冬の魔物もいると思わないか??
「全てをハイにする」とは??
「全てをハイにする」は、自粛期間中の“買い出し”を楽しむために思いついた遊びだ。「何に焼酎を入れると美味しいか」を考えながら、スーパーやコンビニへ行き、オリジナルの「〇〇ハイ」を作る。この遊びによって少し視点を変えるだけで、いつもの売り場が輝いて見え、どこへ行くのも立派な散歩。身も心もハイになれるのだ。
「全てをハイにする」の基本ルールは以下。
ルール①焼酎に入れたら美味しそうなもので割って飲んでみる
ルール②食べ物を粗末にしない
冬の魔物、晩白柚に出合う
正月明けに商店街を歩いていると、以前スイカを買った店でうまそうなミカンが売られていた。近づいてふと横を見ると、どっしりとした晩白柚。完全にくまモンと目が合い、ハイにしろと囁く。買った。
ご立派!の言葉がよく似合う風格。なんだか崇めたくなる佇まいだ。マッチ箱と比べたりすると、大きさが際立つ。
晩白柚は冬が食べごろのフルーツで、桐箱入りの贈答用販売されていたりする、ちょっと高価なフルーツだ。購入したのはLサイズで1.6kgほど。店頭にはなかったが、2Lサイズも存在し、重さは2kgにもなるのだそう。実はしっかりしていいて食べ応えがあり、ハイにしてしまうのはもったいない気もするが……、好奇心に勝るものなし!
晩白柚ハイの作り方
まずは半分にカットする。フルーツを丸ごとハイにするときに良いのは、皮で盃が作れるところだ。実を取り出すまでは、慎重に作業をすすめる。
フォークで種をかき出しながら、スプーンで実をすくっていく。見ての通り、種がいっぱいで大変だった。
実と種と皮を綺麗に分ける。このタイミングでつまみぐいしまくった。ブリンとした食感の晩白柚、うまい。
果汁を絞るのに、当初はさらしを使って手動でやろうと考えていたのだが、実がしっかりしすぎていてうまく絞れなかった。急遽、フードプロセッサー様に登場いただき、実をペースト状にしていく。それと焼酎をミックスして……
3口でお腹いっぱいになる晩白柚ハイ
できた。
そっと蓋を開けると
なんと美しい、晩白柚ハイ!
ドキドキしながら両手で盃を持ち上げ、優勝力士気分で飲む。が、ハッピーエンドなんてそうそうない。おかゆくらいモッタリしていて、ゴクゴク飲めないのだ。一口ずつ噛み締めながら飲むといった感じで、3口目くらいで満腹感が迫りくる。
スイカハイのときも似たような問題に悩まされたのに、私は何も学んでいないようだ。毎回酔っ払っているから、仕方ないのか。そうか。
ゴクッと飲むのはやめて、れんげですくって飲むスタイルに変更。おやつと酒が一体になってるみたいで、悪くない。目がさめるような酸っぱさで、ビタミンたっぷりっぽい味わい。この飲み方だと健康に良いのでは?と思った矢先、焼酎が濃すぎたのか早めに酔いがまわってきた。
いいぞ、それでこそ冬の魔物だ。
最終的に飲みきれず、半分もいかないくらいでギブアップ。もう少しシャバシャバにして飲むのが正解ではと思い至り、最終的には焼酎と炭酸水を足して飲みきった。酒は粘度がありすぎるとよくないのだ。勉強になった。
丸ごといただく幸せ
大きいフルーツには夢がある。おいしいご飯や酒を食べ終えるのが惜しいと切なくなったことはないか。大きいフルーツにはそれがない。安心感を与えてくれ、日常をはみ出した冒険をくれる。味わいだけでなく、丸ごといただくことで楽しさが生まれるのだ。今回も、存分にハイになった。
撮影・文=福井 晶