戦いの火蓋が切られたのは12月某日。編集部4人は、それぞれ地元だったり縁があったりと思い入れのある商店街へと旅立った。

基本ルールは以下の通り。
・トッピングとつゆの相性をわかりやすくするため、ベースとなるそば(麺)とつゆは全員同じ。
・購入場所は商店街。チェーン店ではなく、商店街に昔からあるような個人店で購入すること。
・予算は500円以内。

ベースの麺とつゆはこちらを使用した。

審査と講評は東京ソバット団・本橋隆司氏

まず、さんたつ編集部員4名が、それぞれがプロデュースした年越しそばをもちより、タイトルを付けてプレゼンする。そのあとで、年間数百店の立ち食いそば店を巡る本橋氏に審査と講評をいただくという流れ。さあ、スタート!

死ぬ前に食べたい究極のコロッケそば【from 戸越銀座】

作=編集長・武田

私の妻はコロッケそばが大好物。「死ぬ前に食べたいのはコロッケそばよ」というほどの通人なので、二人で出かけると必ず1食はコロッケそばとなる。

もちろん嫌いではないが、それほどでもない私にしてみれば、どこで食べてもだいたい一緒なのだが、もしかしたらコロッケによって味も変わるのか?と、勝負の日の午前中、コロッケ天国の戸越銀座を練り歩いて作りあげたのが、この妻に捧げる「戸越銀座のコロッケそば」である。

軽くスペックを書いておこう。

左下から時計回りに「ちくわコロッケ」(ちくわの穴にポテサラを詰めている。『中村忠商店』130円)、豆腐コロッケ(ジャガイモの代わりにつぶした豆腐を使っている。同130円)、355コロッケ(深雪もち豚と淡路玉ねぎなど素材にこだわっている。『イイダミート355』170円)、おでんコロッケ(さつま揚げ、つみれ、昆布などおでんの具が詰まっている。『後藤蒲鉾店』108円)で、今年の年越しはこれで決まりの計538円也!

あれ? ……予算オーバーしてますね。すいません。

2019年の夏に戸越に移転してきた『イイダミート335』。
戸越の肉屋さんと言えば『中村忠商店』。「散歩の達人」の戸越銀座特集でも大きく取り上げました。

ソバット団・本橋氏の講評

もう、そばじゃないな……

本橋: これもうそばを楽しむ企画じゃないですよね? 揚げ物が主食ですよね?

170円のコロッケはジャガイモがゴロゴロ。油がいいですね。衣がすっきりしてて、そばの味を全く邪魔しない。おでんコロッケは肉じゃがみたいな感じで、味のベースが和風だしなのでそばにも合います。ちくわは中のマヨ風味が気になっちゃう。マヨネーズは和風のつゆとはあわないかな。

そうそう、最近昭和から続く昔ながらのパン屋を取材してるんですよ。昔ながらのパン屋ってちくわが大好きでちくわの穴に何かしら詰めているんですよね。だいたいツナかポテサラ。その古き良き流れを感じます。

茶色い重撃~爽やかな紅しょうがの香りを頼りに~【from ジョイフル三ノ輪】

作=副編集長・星野

ジョイフル三ノ輪は揚げ物天国である。

愛してやまない『鳥ふじ』が定休日だったのが惜しまれるが、安くて盛りのいい『ニハマル』の存在が購入可能なボリュームをグイグイ押し上げてくるのだ。

ああ、もう、気分がどんどん「揚がって」くる……。

半分涎をたらしながら商店街の茶色いメニューを見つめ続ける僕の目つきは、もはやハンターのそれである。

結局『ニハマル』からスモーク合鴨(小)162円、ゆで卵54円、コロッケ1個38円、『鳥喜』のからあげ2個(50グラム)86円を購入。そこに最後に残った良心で『お惣菜の店きく』から紅しょうが天110円を加えて、450円。紅しょうが天の爽やかさがすべてを解決してくれるはずだ。

佇まいが渋い『鳥喜』。焼鳥が好きなのだが、すぐに予算オーバーしそうな予感がして、我慢。
安さと物量にかけてはジョイフル三ノ輪の代表格『ニハマル』。特売の劇盛唐揚げの量たるや!

ソバット団・本橋氏の講評

三ノ輪は鴨が安いんですね

本橋: あ、鴨うまい。これだけ入ってて160円ですか? 三ノ輪は安いんですね。やはり鴨南蛮とかありますし、鴨は合いますよね。間違いない。コロッケはマッシュで出汁に溶けていきますね。つゆに合ってます。唐揚げも美味しい。三ノ輪、全体的に美味しいですね。

紅しょうがって結局は薬味じゃないですか。コロッケ食べて鴨食べて、紅しょうがですっきりするという組み合わせが秀逸でした。鴨と紅しょうがの組み合わせが良かったです。

肉そば風クリームそば~昭和を探して~ 【from 大山ハッピーロード】

作=編集・白瀧

まず言い訳をさせてほしい。

大山商店街に足を踏み入れた時、嫌な予感がした。“昭和感”がほぼないのだ。「the総菜屋」的な個人店が少なく、チェーン店をメインに構成されている。(「ハッピーロード大山は長いからきっと総菜屋も多いんじゃね?」という武田の言葉にだまされた)

そう、選択肢が圧倒的に少ないのである。

『みらべる』じゃダメだよなぁとぼやきつつ、やっと見つけた2軒のお肉屋さんでお買い物。1軒目ですき焼き豆腐380円。肉そば風味にならないだろうか。次に『ハマケイ』でグラタンコロッケ110円を購入。クリームうどんがあるならそばもいける。計490円だが色合いが気になり鶏だんご2個300円を追加。一つだけ使えば150円、すき焼き豆腐も半分にして使えば190円ということでご勘弁を。そばに使わなかった半分は私が美味しくいただきました。

東上線の線路沿いから見たハッピーロード。

ソバット団・本橋氏の講評

もつ煮でもよかった

本橋: すき焼きの味が強い……。完全に支配されてますね……。どこを食べてもすき焼きの味しかしない……。単品で食べたいですねこれ。グラタンコロッケは……あれ、意外と合う。だしの味とホワイトソースが割とマッチするんですね。意外です。これは発見かも。この2つが衝撃過ぎて鶏だんごの影が薄い。

すき焼きもいいけど思い切ってもつ煮でもよかったかもしれない。すき焼きをぶっかけそばみたいにするか、あったかいかけそばにクリームコロッケでもいい。この具材たち、同居はしないほうが良いですね。

MERRY CHRISTMAS AND HAPPY NEW YEAR! 【from 谷中ぎんざ】

作=編集・中村

谷中ぎんざを歩き出してまず目に飛び込んできたのは、総菜屋『いちふじ』の店頭に掲げられた「コロッケ30円」の文字。そば一杯にコロッケ16個を盛るという恐怖のアイディアに若干魅力を感じてしまう……落ち着け、自分!

空腹の胃をなだめすかしてさらに歩き、『初音屋』の天ぷらラインナップでもう少々安全な案をひらめいた。その名も「クリスマス気分が抜けないまま大晦日を迎えてしまった貴方に贈る年越しそば」。『初音屋』の紅ショウガ天100円、春菊天100円に、『いちふじ』の照り焼きチキン190円で、計490円也。クリスマスカラー×チキンがロマンチックでしょ?

20種類近くの天ぷらが並ぶ『初音屋』。

ソバット団・本橋氏の講評

さわやかさに救われます

本橋: 春菊がさわやか! こう続けて食べてるとさわやかさがうれしいですね。紅ショウガも量が多いですね。三ノ輪よりも量が多くてあまり火を入れてないのかな、香りが強いですね。鶏肉はタレの味が濃くて単品だったら合わないかもしれないけど、春菊と紅しょうがの風味が強くてさわやかなので交互に食べていくと、そばの具材としてもバランスが良い。

この組み合わせが最高。今回食べた中で一番おいしいです。

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ということで、今回栄冠に輝いたのは谷中ぎんざ!……だったが、これはセレクトした者のセンスで99%決まるので、商店および商店街の皆さん、どうか気にしないでください(気にするわけないか)。

それにしても、予算たったの500円で、ここまで豪華&ボリューミーなトッピングになるとは。安くて旨いものがそろう庶民の味方、商店街の底力を再確認できた。軍配が上がったのは濃いめの出汁をさわやかに彩る紅しょうがや春菊だが、コロッケが違えばコロッケそばの味も違ってくるし、和風だしとホワイトソースが意外とマッチする、など新たな知見も得られた。

年越しそば本番の大晦日まで残り2日。この記事が参考になるかはわかりませんが、ぜひ充実した年越しそばライフを送ってくださいね。

それでは、良いお年を!