星野リゾート5つのブランド

さて、ではどこへ行くか? 多少の贅沢でもしなければ我が心は収まらない。こうなれば個人的あこがれの宿№1、星野リゾートにしよう!
先述の『女子旅日和』では、『リゾナーレ 八ヶ岳』『星のや 京都』『界 仙石原』『OMO 旭川』『BEB5 軽井沢』の5施設を紹介しているが、星野リゾートの宿泊施設は全国に34カ所(2019年11月現在)。ブランドごとに異なるコンセプトを持っており、旅の目的に応じた楽しみ方ができる。

リゾナーレ

高原や山、海など豊かな自然の中に立つリゾナーレ。スタイリッシュなデザインが印象的なリゾートホテル。現地だけの自然体験プログラムも豊富。

星のや

圧倒的な非日常感と日本のホスピタリティをベースにしたもてなしを提供。その土地の文化を生かしたラグジュアリーな空間で滞在できる。

現代に合った和のくつろぎを追求した温泉旅館ブランド。全国に15カ所ある施設はいずれも、その地域や季節ならではの魅力を実感できるもてなしが。

OMO

寝るだけでは終わらせない、旅のテンションを上げる都市観光ホテル。街のディープな魅力が体験できるサービスが充実。

BEB

「居酒屋以上旅未満 仲間とルーズに過ごすホテル」がコンセプト。24時間パブリックスペースが利用できるなど、食事の時間やルールなど縛りがなく、気軽に自由自在に過ごせる。

『女子旅日和』本文中より抜粋

どの施設も気になるが、ここは「和のおもてなし」だろう。近年グローバリズムとか弾丸ツアーとかいろいろ言われているけど、やっぱり「和」って良くない? おもてなしもされたいし。
その気分に一番近いのは『界』ブランド。公式サイトには「うるはし現代湯治」「地域の魅力を再発見」など心に響く文字が躍っている。予約サイトを見てみると……ちょうど空室があったのは『界 川治』。「里山の知恵」をコンセプトに山の恵みを生かしたおもてなしをしているとのこと。しかも夕食には猪鍋! 地酒も飲めるらしい。最高じゃないか。これはもう、『界 川治』に決定だ。

さぁ、川治に参りましょう。

早速予約を取り、川治へ。川治温泉へは色々行き方はあると思うが我が心は鉄路を選んだ。特急きぬに乗り、鬼怒川温泉駅で野岩鉄道に乗り換える。野岩鉄道と聞いて、なんとも野性味あふれる名前だなと思ったが栃木県と福島県の旧国名「下国」「代国」からきているらしい。なるほど。ここにも歴史が息づいていたのか。

川治湯元駅が最寄り駅。天気は微妙。

そして紅葉の山を抜けて『界 川治』へ。和テイストの正面口は周囲の山の景色に溶け込むようにたたずむ。手入れされた木々や水車小屋が出迎えてくれて、一歩踏み込むごとにどんどん古き良き和の世界に入っていくような気分だった。というわけでここからは私もどっぷり和の気持ちで参ろうぞ。【編集長注:ここからところどころ誰かが憑依しているみたいですが書き手の個人的趣味なので気にせず読み進めてください】

『界 川治』の玄関口。11月下旬に撮影。和テイストの建物と、山々の景色がよくなじむ。

ロビーには売店やラウンジがあり、みんな思い思いの過ごし方をしていた。見上げるとそこにはひょうたん細工の灯りが。美しい細工に見とれているとスタッフさんがお茶とお手拭きを用意してくれた。なんと。すでにおもてなしが始まっておる。恐るべし星野リゾート。

栃木の名産・ひょうたんで作った灯りがロビーを照らす。

『界 川治』の「ご当地楽」とは?

星野リゾート『界』ブランドには、土地ごとの伝統や文化、食を満喫できる「ご当地楽(ごとうちがく)」というおもてなしがあり、これは確実に旅の思い出となるに相違ない。ぜひとも参加すべし。
『界 川治』では手挽きの石臼体験と、烏山和紙の紙漉き体験を楽しめる。しかし紙漉き体験は事前予約制・人数に限りありとのこと。この日も大人気で定員に達しており、参加は叶わず。無念なり、次回はもっと早く予約しようと固く誓い、もう一つの石臼体験へ向かう。こちらでは自分で石臼を挽き、オリジナルのきな粉を作れる。ちなみに予約不要で、誰でも参加できるのだ。

この石臼できな粉を作る。丁寧な説明書があるので手順もわかりやすい。
きな粉にする大豆を選ぶ。1種類を厳選してもよし、何種類かブレンドしてもよし。

しかし「きな粉を作る」といってもその過程はただ石臼を回すだけにあらず。細かくなったきな粉を刷毛で集めて、ふるいにかけて……工程は結構ある。しかも粒子が細かいので油断していると己が息で飛んでいく。なかなかに難儀よ。
小さな袋に入れて持ち帰ることもできるし、その場でわらび餅と一緒に食べることもできよう。大豆を選んで、自分の手で挽いて作ったきな粉は愛着もひとしお。きな粉の風味の豊かさ、いわんや挽きたてをや。そうか、これが「里山の知恵」か…! 大豆ごとに風味が違うので何人かで体験して食べ比べてみるのも一興か。

わらび餅は氷で冷やされた状態で提供されていた。心遣いが嬉しい。

「傷は川治 やけどは滝」

川治の温泉は傷の回復に効能があるとされ、「傷は川治 やけどは滝」の言葉とともに古くから親しまれてきた。かの新選組副長・土方歳三殿も宇都宮の戦いで受けた傷を癒やしたと聞き及ぶ! さぞや効果もあろう! …と思いつつも私には銃創や刀傷といった大層な傷痕はないので効果がわからないっ。だが副長が認めたお湯なら効能も抜群なはず。泉質は少しとろみのあるお湯で肌にもよさそうだ。

大浴場には開放的な内風呂と、2つの露天風呂がある。個人的なおすすめは夜の時間帯の露天風呂。ロビーにも飾ってあったひょうたん細工の灯りがたくさんともされ、幻想的に照らされていた。川のせせらぎだけが聞こえてくる中でお湯につかっていると、なにか特別な空間に入り込んでしまったかのような気持ちになるのだ。写真でお見せしたかったが、さすがに浴場にカメラを持ち込むわけにもいかぬ。こちらはぜひ、皆々様ご自身で刮目されたし。

里山の恵みをいただく

この土地ならではの味覚「里山のジビエ」

お待ちかねの夕食は、和牛と猪肉の味噌土手鍋をメインに、里山の恵みをふんだんに使用した会席料理。猪肉はジビエ料理をよく食べるという栃木県山間部の文化にちなんだものであり、お造りや椀物も川治温泉ならではの味覚を楽しめる。旅行の醍醐味は、やはりご当地の名物であろう。その土地ならではのものを食したいという思いを存分に満たしてくれる献立だった。

写真は季節の八寸とお造り
猪肉は結構厚みがある

香ばしい味噌仕立ての汁で煮込まれた猪肉は意外と柔らかく、獣臭さも全くない。 猪の肉は煮込むほど柔らかくなると聞く。脂身もびっくりするほど甘く、濃厚な味噌の風味と相性が良くて最高。初めて食べた猪肉がここの料理で良かった。イノシシとはこんなに美味であったか。

地酒飲み比べセット。日本酒も進むわ。

地域に伝わる説話にちなんだ「ご当地朝食」

朝食も地域色を感じる和食膳。メインの「鬼子蔵汁」は優しい味でボリューム満点。ニンジンやゴボウといったたくさんの野菜、餅、豚肉が入っており体にもよさそうだ。二日酔いの体に配慮してくれているようで勝手に嬉しくなる。ありがたや。

具だくさんの「鬼子蔵汁(きしぞうじる)」は、働き者の夫婦の説話がもとになっている

他にも「川治のとばっちり」という名物料理があり、これもまたうまいのだ。どんな料理か気になる方はぜひ、星野リゾート『界 川治』へ赴いてほしい。

というわけでこの一泊二日、終始スタッフの方々の「快適に過ごせるように」という心遣いが伝わってくることには驚いた。編集作業のストレス解消に急遽決めた旅行だったが、最高の思い出と相成った。恐悦至極。

さて、『女子旅日和』には、他にもたくさんの素敵なスポットを掲載しています。

あなたの心に刺さるページはあるでしょうか?  ぜひ、お手に取ってみてくださいね。
誰かがこの雑誌を読んで旅に出たくなりますように。
最高の思い出が作れますように。
そんな想いを込めて。

写真・文=白瀧綾夏(編集部)

※特別会席 和牛と猪の味噌土手鍋会席のプランの詳細は『界 川治』公式サイトをご確認ください。
https://kai-ryokan.jp/kawaji/