コの字カウンターがある、燗酒に自信ありの立ち飲み屋
柏駅東口から2番街を通って歩くこと5分。路地裏には小さな酒場がひしめき合っているが、「燗酒」や「日本酒」の提灯(ちょうちん)に惹かれて『酒のサクマ ザ・キラー燗』の前で足を止めた。
中央にコの字のカウンターがあり、その上には旬の素材を使った手作りのお総菜が並んでいる。入り口を開けるのに勇気がいったが、中に入ってみると楽しげに談笑する常連客もいて家庭的で温かな雰囲気だ。
どうやって注文したらいいか分からずキョロキョロしていると、店主の大ちゃんが声をかけてくれた。
「ウチは日本酒と焼酎(サワーも含む)、国産のビールを含む和酒しか置いていません。壁にかかっているのは、燗でうまい日本酒や焼酎がメインです」と話す。
正直なところ日本酒には詳しくないのだが、温度によって変わる味わいを楽しむことには憧れがある。ここでなら、そんな体験ができそうだと思った。
店内を見渡すと、壁を埋め尽くさんばかりのレコードや、昭和プロレスの英雄・アントニオ猪木と天龍源一郎のポスター。
フィギュアやポスター、サイン色紙など、プロレスと野球、酒と音楽をこよなく愛する大ちゃんの好きなものが店内のそこかしこに散りばめられている。
さながら大ちゃんの部屋に遊びに来たようだ。
大切なコレクションをひとつひとつ、眺めているだけでも酒のアテになりそうだ。
母体は柏で三代続く『酒のサクマ』
母体となっている『酒のサクマ』は柏で3代続く酒屋で、大ちゃんはこの店と並行して営業を続けている。各種酒を取り扱っているが、「味わい深い和酒を飲んでもらいたい」とこの店を開くことになったそうだ。
壁際には純米、山廃、生酛、熟成酒。さらに焼酎もズラリと並んでいる。
「季節ものの生酒やビールは冷蔵庫に。どれでも好きなのを持って来てください」と、大ちゃん。
好きな一升瓶をカウンターに持ってくると、酒器に注いで提供してくれるのだ。
大ちゃんにとって日本酒は、料理と楽しむ食中酒。手作りのやさしい味わいの料理と酒の味が、お互いを引き立て合うのだ。さらにコの字のカウンターで会話も弾む。
「杯が進んで、会話が弾んで、食も進む。そういうのが日本酒の良さだと思います」
大ちゃんが飲んでほしい銘柄を揃えているところがこの店のアイデンティティだ。
売れ筋ではなく、自分が飲んでほしい酒を置く。それが、酒屋直営のこの店をやる意味でもある。
「壁際にある日本酒は特に燗にするとうまい酒なんです。この店は最初、燗酒だけの店にしようと思ったくらい。『飲んで、やられた!』と唸るような燗酒をセレクトしています」と話す。
今日は知らない世界に誘ってもらえそうで期待値はMAX。さっそく何か頂いてみたくなった。
じんわり腹に染み渡る辛口のにごり酒と、自家製ぬか漬けで一献
せっかくだから大ちゃん自慢の燗酒を飲んでみたい。
そう思って棚を眺めてみるが、ラベルを見てもいまいちピンと来ない。
「にごり酒のお燗でおいしいのはどれですか?」
そう尋ねて振り返ると、謎の白覆面を被ったお茶目な大ちゃんが、『生酛のどぶ にごり酒』1合800円を持って立っていた!
選んだアテは、自家製ぬか漬け300円だ。この日はゴーヤやピーマンなど変わり種も含め7種もあって良心的なボリューム。
酒をひと口含んでみると、あっさりとした辛口でキレがある。ちょうどいい塩加減のぬか漬けとの相性もバッチリで、ほろ苦いゴーヤや甘みのあるニンジン、みずみずしいキュウリなどバラエティに富んでいて飽きない。
少し燗の温度が下がってくると、華やかな香りが感じられるようになり、味もややまろやかになったような。ひと口ごとに変化を感じられるのも面白い。
常連さんとの会話に混ぜてもらいすっかり楽しくなった筆者。冷酒やビールをどんどん空けていく。
ああ楽しい。永遠にこの時間が続けばいいのに。
そう思って、また酒をひと口。
「みんなはしご酒をして、最後にうちに来るんですよ。もう飲めない、もう食えない。でもみんなと話したいってうちにやってくる。商売あがったりですよ」と、言いながらちょっとうれしそうな大ちゃん。
地元に愛される『酒のサクマ ザ・キラー燗』との150分1本勝負は、すっかり千鳥足になった筆者の完敗という結果になった。
どうせ次も完敗するんだろうな……。
取材・文・撮影=パンチ広沢







