派手好き店主がデザインした浴槽が自慢。テーマカラーは「情熱の赤」
お湯が赤かった。
これだけで強烈な個性を感じてしまうのは、くだらない常識に囚われていたからに他ならない。いかん。そんな古い自分は今日でおさらばしなければ。
「赤いとお湯がきれいに見えるし、赤外線で体にもいいのよ」
と話すのは、おかみの藤田のり子さん。浴室全体の設計や浴槽などのデザインをしたは、のり子さんの夫で店主の藤田和男さんだという。
浴槽の形だけでなく、シャワースペースの色使いも鮮やかだ。
「昔っから派手好きなのよ、あの人は」
夫婦そろって風呂屋に生まれた藤田夫妻。一旦は違う仕事に就いたものの、一念発起、風呂屋になったのが36歳のときだ。
もともとこの場所は「藤の湯」という昭和元年創業の銭湯で、廃業すると聞き、藤田夫妻が購入した。「ふじのゆ」の読み方はそのまま「藤乃湯」とした。たまたま夫妻の名字が「藤田」なのでちょうどよかったという。
激しそうな色だけど……ぬる湯は38℃でゆったりのんびり
まずはぬる湯で薪焚きのお湯のやわらかさを体感しよう。低温イオン木炭風呂が39℃なので、ゆっくり浸かるのにぴったりだ。
ジェットマッサージ風呂が43℃、ミクロン気泡風呂が44℃なので、ぬる湯との交互入浴もいい。疲労回復に効果があるといわれている。
寝ながら入れるジェットマッサージ風呂のジェットは思ったよりもかなり強め。高いマッサージ効果が得られるので、腰痛にもいいとか。
ちなみに、こだわりの赤いお湯。夕日の海にいるようで、なかなかオツな気持ちになりました。
これからも薪で湯を焚き続ける
このあたりには銭湯がたくさんあったがほとんどなくなってしまったと、店主の和男さんは嘆く。たしかに、和男さんが見せてくれた昭和10年の荻窪銭湯組合の名簿には数十軒という銭湯が並んでいたが、現在営業しているのは数えるほどだ。
「それでもできる限り続ける」と和男さんは話す。
毎日来る長年の常連も多い店だ。そのお客さんたちのため、大量の汗をかきながら薪を焚く。そんな和男さんの姿はとても力強かった。
『藤乃湯』店舗詳細
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ