母娘が提供する自宅の1Fで開いた小さなカフェ
住宅地の一角に、ふと現れる小さなカフェがある。柏駅東口から延びるレイソル通りを約15分歩いて行くと街並みは住宅が増えていく。そんな中で『MUM cafe』に遭遇した。
オープンは基本的には毎週、木、金、土曜日の3日間(お休みすることもある)。母娘のふたりで切り盛りする店で、やわらかな空気に包まれた店内には、古い食器棚やアンティークの家具がさりげなく置かれ、落ち着いた時間が流れている。
『MUM cafe』のオープンは2009年。家を新築する際、「お店をやってみたい」というお母さまのひと言がきっかけだった。図面を敷く段階から住まいと一体になる形で店舗スペースを設計し、カフェとしてオープンした。
お母さまはもともと料理好きで、娘さんと一緒にカフェ巡りをすることも好きだったという。雑貨や家具の趣味も似ており、店内のしつらえはふたりで相談しながら少しずつ整えていった。
「古道具屋で見つけたものやDIYした家具もあります」と娘さんは話す。
なかでも目を引くのは、おばあさまの家から運んできた食器棚。ガラス戸や木の色合いにどこか懐かしさがあり、「昔うちにもあった気がする」と話す客も多いという。
いつもは厨房にいて、客席に出てくることはないというお母さまもこの日はお話を聞かせてくれたのだが、母娘の会話も、あうんの呼吸で心地よい。
腰を下ろすと自宅にいるかのようにくつろぎ、おふたりと話しているとついつい長居してしまいそうになる。
「一度もケンカしたことがない」という話を聞いて妙に納得してしまった。
家庭料理をベースに“ちょっと手間のかかる”メニューを提供
提供するメニューは、家庭料理をベースにしながら家では少し手間がかかる定食や甘いものたちをそろえる。
「もともと自宅で作っていたような家庭的な料理をベースに、少しずつお店の味に変えていった感じです」とお母さまは話す。
ランチは常に3品あり、近くの道の駅などで仕入れる新鮮な野菜を使っているため、その時の旬に合わせて副菜が変わる。
たとえば、ニンジンのマリネや菜の花のからし和え。味噌汁には、道の駅で見つけた手作り味噌と市販の味噌をブレンドして使うなど、日々の食卓に近い優しい味わいがベースだ。
店に訪れる客層は幅広く、10年以上通う常連も少なくない。
赤ちゃん連れの家族から年配の常連まで、近所の人がふらりと立ち寄ることも多いという。
「最近はInstagramを見て遠くから来るお客様も増えました。外食だけど、家庭料理みたいなご飯が食べたくて来てくれる方も多いです」
2人が作る懐かしいような、ホッとできる味をみんなが求めている。
サクッと軽く、中はなめらかな大豆と大和芋のコロッケ
この日選んだのは、オープン当初から人気の「大豆と大和芋のコロッケ」ランチ1400円。
一見すると普通のコロッケのようだが、主役はじゃがいもではない。
大豆とすりおろした大和芋をベースに、炒めた玉ねぎや卵を合わせ、形を整えるためにマッシュポテトを少し加えている。
まずはコロッケをひとくち。外はサクッと軽く、中はなめらかだ。
大豆のやさしい風味のあとに、大和芋のふんわりとしたコクが重なる。上にかけられた少し酸味のあるごまだれや角切りのトマトが、全体をやさしくまとめている。
付け合わせは季節の野菜を中心に使っている。
この日はにんじんのマリネや菜の花のからし和えが添えられ、食べ進めるほどに野菜の旨味が感じられる。しっかり味つけされているものの、素材の持ち味が主体だ。
食後には、ランチとは別料金でケーキ460円〜も味わえる。娘さんが中心となって手作りしており、いちじくや洋梨、パイナップルなど、その時期の素材を取り入れたものが並ぶ。
親子ふたりで切り盛りするこの店は、無理をせず、日々のペースを大切にしながら続いている。
「もともとは、母のお手伝いのつもりで始めた店。これまでも私の出産や子育てて忙しい時期は長期休業をしていました。だからもし、どちらかが辞めるって言ったら店を閉めちゃうと思います」と話せば、お母さまは「細く長く続けていけたらいいですね」とにっこり。
自分たちの好きなものを作り、喜んで食べてもらう。その楽しさを親子で共有している。互いを尊重しあえる関係もまた、この店の心地よさにつながっている。
取材・文・撮影=パンチ広沢






