“下町の味”になっているわけ

『芽衣や』があるのはJR小岩駅の南口から歩いてすぐ。味のありすぎる飲み屋横丁を抜けた先、飲食店がひしめく繁華街だ。

この路地を抜けていくと近い。
この路地を抜けていくと近い。

『芽衣や』の人気メニューがゲソ天そばだ。このゲソ天そばが、まさしく下町の立ち食いそばの味わいなのだ。旨味のガツンとくるツユ、ゲソ天もゲソの粒感や衣の固さ揚げ具合。よくもここまで再現したものと感心するほどだ。

そば並で400円に特大イカゲソ280円。
そば並で400円に特大イカゲソ280円。

どうやってこの味を作り上げたのか、取材で聞いてみたところ、理由は単純。店主のアウンさんは、下町の立ち食いそば店で働いていたのだ。再現というよりも、自分の作っていたもので勝負しているというわけだ。

そばのおいしさに目覚め、一念発起

アウンさんはもともとミャンマー生まれで、留学のため2011年に来日し、工場や飲食店などでアルバイトをしていた。そのうち、知り合いに紹介されて立ち食いそば店で働くようになり、ツユや天ぷらの作り方を覚えたという。

奥がアウンさん。手前は妻のメイさん。
奥がアウンさん。手前は妻のメイさん。

アウンさん本人は独立志向ではなかったのだが、妻であるメイさんの「いつか自分たちの店を持ちたい」という夢を叶えるため一念発起。苦労のすえに小岩に物件を見つけて『芽衣や』をオープンさせたのである。

店名の由来は、もちろん妻のメイさん。
店名の由来は、もちろん妻のメイさん。

徐々にミャンマーの味も

『芽衣や』を始めるに当たり、味は少し自分好みに変えているという。確かにじっくり味わってみると、『芽衣や』はツユのダシ風味が抑えめでかえしが前に出ている感じがする。

太そば並450円にイカゲソ200円とミャンマー風揚げ豆腐150円。
太そば並450円にイカゲソ200円とミャンマー風揚げ豆腐150円。

天ぷらも、おなじみのゲソ天やかき揚げに加え、ミャンマー風揚げ豆腐のトーフジョーを始めた。これはひよこ豆で作った豆腐を揚げたもので、ミャンマーではごくポピュラー。日本のミャンマー料理店でもお酒のツマミとして人気だ。

黄色はウコンの色。ほんのりした甘みがあっておいしい。
黄色はウコンの色。ほんのりした甘みがあっておいしい。

揚げ具合はふわっと軽く、はんぺんのよう。そしてほんのりと甘い味わいが、濃いめのそばツユに実に合うのだ。太麺で食べちゃったけれど、これは普通のそばのほうがいい。取材のときは試せなかったけれど、牛肉そばにも合うかもしれない。

ひよこ豆のパウダーを煮ているところ。このあと冷やして固める。
ひよこ豆のパウダーを煮ているところ。このあと冷やして固める。

今後もミャンマー料理を取り入れるつもりのようで、カレーを考えているという。ミャンマーのカレーは辛さが控えめなので、そばツユには合いそうだ。ちょっとずつ『芽衣や』らしさを出してきているのだ。

夫婦、そして仲間と力を合わせて頑張っています。
夫婦、そして仲間と力を合わせて頑張っています。

ごちゃごちゃとした下町感のある小岩に立ち食いそばは合うようで、オープン間もない『芽衣や』も、しっかり常連がついている。アウンさんは、今の店が安定したら、支店も出してみたいという。日本のソウルフードといえる立ち食いそばが、ミャンマー出身のアウンさんの手で広がっていくというのも、これはこれでおもしろいと思う。

住所:東京都江戸川区南小岩8-14-7/営業時間:月~土6:00~23:00(日は~22:00)/定休日:無
/アクセス:JR総武線小岩駅から徒歩3分

取材・文・撮影=本橋隆司