“下町の味”になっているわけ
『芽衣や』があるのはJR小岩駅の南口から歩いてすぐ。味のありすぎる飲み屋横丁を抜けた先、飲食店がひしめく繁華街だ。
『芽衣や』の人気メニューがゲソ天そばだ。このゲソ天そばが、まさしく下町の立ち食いそばの味わいなのだ。旨味のガツンとくるツユ、ゲソ天もゲソの粒感や衣の固さ揚げ具合。よくもここまで再現したものと感心するほどだ。
どうやってこの味を作り上げたのか、取材で聞いてみたところ、理由は単純。店主のアウンさんは、下町の立ち食いそば店で働いていたのだ。再現というよりも、自分の作っていたもので勝負しているというわけだ。
そばのおいしさに目覚め、一念発起
アウンさんはもともとミャンマー生まれで、留学のため2011年に来日し、工場や飲食店などでアルバイトをしていた。そのうち、知り合いに紹介されて立ち食いそば店で働くようになり、ツユや天ぷらの作り方を覚えたという。
アウンさん本人は独立志向ではなかったのだが、妻であるメイさんの「いつか自分たちの店を持ちたい」という夢を叶えるため一念発起。苦労のすえに小岩に物件を見つけて『芽衣や』をオープンさせたのである。
徐々にミャンマーの味も
『芽衣や』を始めるに当たり、味は少し自分好みに変えているという。確かにじっくり味わってみると、『芽衣や』はツユのダシ風味が抑えめでかえしが前に出ている感じがする。
天ぷらも、おなじみのゲソ天やかき揚げに加え、ミャンマー風揚げ豆腐のトーフジョーを始めた。これはひよこ豆で作った豆腐を揚げたもので、ミャンマーではごくポピュラー。日本のミャンマー料理店でもお酒のツマミとして人気だ。
揚げ具合はふわっと軽く、はんぺんのよう。そしてほんのりと甘い味わいが、濃いめのそばツユに実に合うのだ。太麺で食べちゃったけれど、これは普通のそばのほうがいい。取材のときは試せなかったけれど、牛肉そばにも合うかもしれない。
今後もミャンマー料理を取り入れるつもりのようで、カレーを考えているという。ミャンマーのカレーは辛さが控えめなので、そばツユには合いそうだ。ちょっとずつ『芽衣や』らしさを出してきているのだ。
ごちゃごちゃとした下町感のある小岩に立ち食いそばは合うようで、オープン間もない『芽衣や』も、しっかり常連がついている。アウンさんは、今の店が安定したら、支店も出してみたいという。日本のソウルフードといえる立ち食いそばが、ミャンマー出身のアウンさんの手で広がっていくというのも、これはこれでおもしろいと思う。
/アクセス:JR総武線小岩駅から徒歩3分
取材・文・撮影=本橋隆司







