蜃気楼ってどんな現象?
そもそも蜃気楼とは、どんな現象なのでしょうか? 蜃気楼は、空気中を通る光が屈折することで見られる現象で、遠く離れた景色が実際とは異なる形に見えます。全く別の場所にある景色が見えるのではなく、実際にその場にある景色が上下に変形して見えるだけなのです。
私たちが目で物を認識できるのは、物があらゆる方向へ光を反射しているためです。光のない暗い場所だと物は見えませんが、明るい所では光が物に当たり、反射した光を目が受け止めているので物を認識できます。
空気中に温度差がない時、光はまっすぐに進むので物と目を直線で結ぶ方向の光だけが目に見えます。物が伸びて見えることはない、通常の景色が見えるということです。図①のa-fやa-gのパターンです。
しかし、空気中に温度差が生まれた場合、光は屈折して進行します。光は冷たい空気の中よりも暖かい空気中の方が速く進み最短ルートで進もうとするので、暖かい空気の方へ曲がります(a-b-gやa-d-f)。
ただし、私たちの目は光が曲がって進んでも、目に入ってくる直前の光の方向に物体があるように見えるため、a-b-cやa-d-eの方向に物体があるように見えるのです。
春は蜃気楼の季節
蜃気楼には2種類あり、本来の景色の上側に伸びたり反転したりする「上位蜃気楼」(図②)と本来の景色の下側に反転した像が見える「下位蜃気楼」(図③)があります(※紫は実物が見える光の道筋、オレンジは空気中で曲がる光の道筋、緑は反転した像が見える光の道筋)。
上位蜃気楼は春(4月~5月)に現れやすく、富山県の魚津市が観測スポットとして有名です。空気の下部が冷たく、上部が暖かい場合に起こります。なぜこうした空気の温度差が発生するのか、さまざまな理由が考えられていますが主に2つの説が有力です。
海上の冷たい空気の上へ日中の日差しで暖められた空気が流れ込むことで発生する、あるいは富山湾に冷たい雪解け水が流れ込んで、空気が下から冷やされて生じると考えられています。
下位蜃気楼は冬から早春(11月~3月)に多く、全国各地の海岸で見ることができるといわれています。関東では東京湾や千葉県、神奈川県、茨城県の沿岸など、さまざまな場所が蜃気楼の見える場所として知られます。下位蜃気楼は、上位蜃気楼とは反対で空気の下が暖かく上が冷たい時に見えます。冬から春のはじめにかけては気温が下がり寒くなりますが、海は空気に比べると温度の変化が小さいです。このため、気温より海水温の方が高い状態になり、海面付近の空気の下部が暖められ、上部は冷たい状態が作られます。
蜃気楼と出合いたい!おすすめの気象条件は?
上位蜃気楼は平年だと4~5月にかけて10~15回程度は見えますが、肉眼で観察できるのは年に5回ほど。しかも毎年のように現れるのは富山県魚津市や滋賀県大津市など限られた場所だけです。
一方、下位蜃気楼は気温が低く、見通しがよければ全国各地の海岸で出合えるチャンスがあります。下の画像は2018年12月8日に千葉県船橋市の「ふなばし三番瀬海浜公園」から見られた、下位蜃気楼です。海ほたるパーキングエリアが海面に浮かび上がって見えています。
この日の船橋の午前8時の気温は8.1℃、風速1.5m/sでした。蜃気楼を観察するのに適しているのは、晴れていることに加えて、風がおだやかで、冷えこみが強い日です。風が弱いと海上の空気がかき混ぜられにくく、下が暖かく上が冷たい状態が保たれやすいためです。そして、夜の間に放射冷却が強まり、日差しの影響もまだあまり受けていない冷え込んだ朝が、温度差が大きくなるためおすすめです。関東など太平洋側では冬型の気圧配置や高気圧に覆われる日を狙うとよさそうです。
いつもの散歩でも普段と少し違った景色が見られると、何だかいいことが起こりそうな気分になりますよね。蜃気楼の現れやすい条件をおさえて、一味違った風景を楽しんでみてください。
文=片山美紀
参考:
特別天然記念物 魚津埋没林博物館 蜃気楼
https://www.city.uozu.toyama.jp/nekkolnd/shinkiro/index.html
ふなばし三番瀬海浜公園 ふなばし三番瀬環境学習館 友の会専用ページ 2月号 浮島現象(下位蜃気楼)について
https://sambanze.jp/education/tomo20220261.html








