取材・文=ノリ男(のりお/奥谷道草)
“海苔の入札会”で知る大森と海苔の現在
大森〜品川の遠浅な沿岸は海苔養殖にうってつけで、今の「板海苔」は江戸時代この地で誕生、明治〜昭和初期には日本一の海苔生産量を誇った。
「羽田空港も埋め立て前は海苔の養殖場だったんですよ」と、大森本場乾海苔問屋協同組合で教わりビックリ。東京湾の港湾整備のため、養殖は1962年に終焉(しゅうえん)を迎えたが、卸や小売りを行う海苔問屋は残っていて大森の顔となっている。
築約60年の街の歴史を感じさせる、組合の倉庫兼事務所で競りの風景を見学した。海苔は季節商品で、競りの期間は12〜3月ぐらい。大森では昔ながらの手書きの札で競るスタイルが続いているのも海苔の本場っぽい。
2列に箱単位で並び競り落とされていく。海苔の等級は100近くあるそうで吟味も大変だ。産地色ツヤ厚み風味など……必要ならコンロで炙(あぶ)り味を確認する。競り時間は1列わずか15分! 次々落札されていく様は素人目には盛況だが、年々値上がりしていて海苔店の数も減少している。だが大森では今も行きつけの海苔店を持つ住民が多く、味の違いに敏感だとか。加えて育んできた海苔文化を伝承する取り組みも行われている。
象徴的存在が『大森 海苔のふるさと館』だ。2008年に開館。3階建ての瀟洒(しょうしゃ)な建物で、海苔養殖の様子をジオラマや当時の道具を用いて紹介。養殖が行われていた海辺に整備された大森ふるさとの浜辺公園の端に位置し、公園の浜辺では技術伝承のため海苔を育てる竹ヒビと海苔網を設置。その他イベントも多く行われている。
繁華街に戻ると海苔グルメがまた楽しい。パン、お茶漬け、ラーメン等々、上質な海苔を用いた品々で海苔の魅力を再確認できる。まだまだ新たな可能性も秘めているなと思うのだった。
『海苔のふるさと館』で知る大森と海苔のこれまで
2008年、大森駅近くにある『大田区立郷土博物館』の分館としてオープン。海苔然とした黒い壁面がりりしい3階建ての広い建物。1、2階が展示室で、3階は休憩室。屋上に展望台もあり、近くの浜辺を見渡せる。イベントは予約者で満杯になる人気ぶり。散策にもってこいのあなどれない穴場スポットだ。
ふるさと館のノリ(オリ)ジナルグッズたち
食べて知る大森エリアの海苔グルメ
『Crescent & Molly(クレッセント アンド モーリー)』【大森】
旧東海道・美原通り商店街にある、洒落た外観の上質かつ種類豊富なパン店。開店当時から供するのがバゲットに海苔をのせた海苔パルメジャーノ。チーズと海苔の旨味成分がマッチ、予想外のおいしさだ。新作も大粒のチキンと海苔が合わさり、西洋おにぎりのごとき満足感。喫茶コーナーもあり。
『ŌNORI(オーノリ)』【梅屋敷】
梅屋敷駅前で飲食店数件を営み、地元活性化を目指す店主の情熱が生んだ店。海苔ラーメンorまぜそば各950円は地元海苔店から仕入れるてんこ盛りのバラ海苔が主役。太めの麺に風味豊かな海苔がからまる独特の味わい。残った具に半ライス100円を投入すれば2度美味!
11:30〜14:30・18:00〜22:00、無休。
☎03-5763-5157
『守半海苔店』【大森】
茶筒缶入りやきのり発祥の店とも言われる大森屈指の高級海苔店。価格的に手が出しやすいのが、板のり製造過程で生じる海苔の端切れをベースに作った「海苔茶漬」の素。みっしり詰めこまれた高級海苔の奥深い味わいは衝撃的。大森駅近くのキネカ大森入り口脇の専用自販機でも購入可能。
10:00〜19:00(土は〜18:00・祝は〜17:00)、日・月休。
☎0120-62-4077
「ビタミン豊富な食の名脇役に栄えあれ!」(ノリ男)
取材・文=ノリ男(奥谷道草) 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2026年2月号より








