大人の隠れ家ってこんな店をいうのかも……

看板を見ただけで、「この店はタダモノではないぞ!」という雰囲気を感じさせる。
看板を見ただけで、「この店はタダモノではないぞ!」という雰囲気を感じさせる。

蒲田駅西口から飲食店が連なる通りを歩き、多摩堤通りと合流する西蒲田交差点の右角のビル。ラーメン店の横からエレベーターで3階まで上ると、これまでの喧噪が嘘のようなシックなエントランスが待つ。

まず目に入るのがレンガの壁に掛かる店の名を刻んだ看板。木の扉を開けると、薄暗い店内に無数に並んだ洋酒の棚と一枚板のバーカウンターが浮かぶ。

なんといっても洋酒の数がすごい。テキーラだけでも220種類以上、メスカルが80種類、さらにウイスキーやジンなどを加えると700種類ほどになるという。
なんといっても洋酒の数がすごい。テキーラだけでも220種類以上、メスカルが80種類、さらにウイスキーやジンなどを加えると700種類ほどになるという。

「梁やカウンターなどは、私の故郷である長野県松本から運んだ古民家の古木を使っています」と話すマスターの若林祐一さん。店は2018年オープンというが、圧倒的な存在感を感じさせるのは、この重厚感のあるインテリアのせいだろう。

数人で利用するならテーブル席へ。窓に映る夜景もインテリアの一部だ。
数人で利用するならテーブル席へ。窓に映る夜景もインテリアの一部だ。

酒を学び、酒場のマナーを学ぶ本物志向の店

メニューはないので、マスターやスタッフに好みを伝えて選んでもらうといい。
メニューはないので、マスターやスタッフに好みを伝えて選んでもらうといい。

この店がこだわっているのがテキーラとメスカル。ここでテキーラについて学んでおこう。テキーラという名は、メキシコ・ハリスコ州にあるテキーラ村に由来し、アガベアスルと呼ばれるリュウゼツランを原料とする蒸留酒のこと。メスカルは、リュウゼツランの中でも指定された5品種を主原料とするメキシコ産蒸留酒の総称で、テキーラもこれに含まれる。

「テキーラ初心者向きの酒は?」と聞いたら、ドンチョ レポサド800円(右)、エルッチャロ700円をすすめてくれた。チャージ800円、つまみはナッツ程度しかない。
「テキーラ初心者向きの酒は?」と聞いたら、ドンチョ レポサド800円(右)、エルッチャロ700円をすすめてくれた。チャージ800円、つまみはナッツ程度しかない。

「最初はウイスキーから始めたんですが、テキーラにはまっちゃって」。バーなどに飲みに行き、イベントに積極的に参加し、そこで知り合った人から教わって……とにかく、たくさん飲んで、たくさん学んだと話す。そんなマスターにテキーラとメスカルの違いを聞けば、「あえて言うならテキーラはフルーティー、メスカルはスモーキー」と教えてくれた。

テキーラといえば、ショットで一気飲みといったイメージがあるが、この店ではショットグラスでは提供しない。ウイスキーを楽しむように、少しずつ飲んで味や香りを楽しんでもらいたいからだ。当然、一気飲みは禁止だ。

「乾杯するとき、グラス同士をぶつけるのはNG。グラスを軽く差し出す感じで乾杯するのがキレイです」。酒に関する知識はもとより、酒場でのマナーなどもさりげなく教えてくれる。

蒲田駅周辺で静かに酒を愉しみたいという方には、ぜひ訪ねてほしい店だ。

「テキーラの魅力を知ってほしい」と話す若林さん。
「テキーラの魅力を知ってほしい」と話す若林さん。
住所:東京都大田区西蒲田7丁目5-14 シティプラザ蒲田3F/営業時間:18:00~翌3:00/定休日:月・水/アクセス:JR・私鉄蒲田駅から徒歩3分

取材・文・撮影=塙 広明