とんかつ肉として最高峰「瑞穂のいも豚」
使用するのは茨城産「瑞穂のいも豚」。いろいろな銘柄豚を試した結果選んだ「とんかつのための豚肉」だ。やわらかく、脂の融点が低いため、口の中で溶けるような食感。豚肉特有の臭みも少ないという。
「できるだけリーズナブルに、おいしいとんかつを思いっきり食べてもらいたいんです」と、スタッフの染野さん。
『富士㐂』は東京・神奈川に6店舗。多店舗経営のメリットを最大限に活かし、たくさんの肉を仕入れて価格を抑え、希少部位をメニューに入れることも可能にした。
オーダーが入ってから、肉を切り分け、中挽きの生パン粉をつけ揚げ油に入れる。生で見ても大迫力の豚肉は、低温でじっくり15分ほど揚げてから、少しの間休ませ余熱で火を通す。揚げ時間は肉の厚さや気温によっても変化するため、職人の腕が試される瞬間だ。
厚みにひれ伏せ! 極厚切り300gの迫力
第一声「分厚い!」。箸で持つとずっしり重い。300gで5切れなのだから当然か。
まずは何も付けず、このままいただこう。揚げたてでさっくり。パン粉の香ばしさがふわーっと鼻をくすぐる。大きくて一口では絶対に食べられないなあ……、と贅沢な悩みを持ったが、この厚みにもかかわらず、難なく噛み切れた。サクサクなのにやわらかい。 その後、じゅわっとジューシーで甘い脂がこぼれてきた。味付けは下味で付けた塩コショウのみだが、肉の旨味も強く感じる。それだけで十分の味付けだ。
このままでも満足だけど、やっぱり違う味も試してみたい。そんなときには柚子胡椒もオススメだ。ピリッとさわやかな刺激が加わると、脂の甘さがますます際立つ。
さて、最後は王道・ソースでいただこう。野菜をていねいに煮詰めた自家製ソースはとろりとしていて絶妙な甘辛さ。キャベツとともに食べると、シャキシャキサクサクじゅわーのハーモニーが最高だ。
夜は、ビールととんかつで楽しみたい
夜になると、ビールととんかつを楽しむ客が増える。
「ひとりでふらりと訪れて、店員とおしゃべりをしていく常連さんも多いですよ」と染野さんは話す。
飲み屋の数も多い荻窪ならでは、こなれたとんかつ屋の使い方だなあと感じた。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ