手塚理美

てづかさとみ/東京出身の俳優。小学生のころからジュニアモデルとして活躍し、映画、舞台、ドラマと幅広く活動。2025年に芸能事務所から独立、フリーに。趣味は散歩。Instagram:tezuka_satomi

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2026年2月号の大特集は「蒲田・大森・池上」。池上は手塚理美さんの地元だから、事前の下調べは不要かと思われた。池上本門寺など思い出スポットに立ち寄れば十分だろう。しかし、前回の下総中山でガチロケハンを終えた翌朝、私・H岩のスマホからはピンコロピンコロと着信音が鳴り響く。「ちょいと、こんなおにぎり屋さんが!」「中学の同級生の八百屋さんがあるの笑笑、チラッとのぞいてみるのもありかも笑笑」などなど下調べがすでに渋滞気味。ということで、曇り空に季節の移ろいを感じる平日11時、東急池上線池上駅改札に集合。

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手塚 今日は私の地元のロケハンなのでとても楽しみです。

——よろしくお願いします。手塚さんのお友達もご一緒とのことで。

友人 よろしくお願いします。さとちゃんのママ友です。お邪魔じゃないかしら。

——ご一緒いただけてうれしいです。さて、手塚リストによると……まずは『えんが和』さんでおにぎりをチェックしましょう。ところで、なぜ手塚さんのロケハンは毎回おにぎりスタートなんですか?

手塚 私がおにぎり好きだからです。むりくりでもなんでも、必ずどこかでおにぎりを食べて、最後はビールで締めるということを、ガチロケハンのルールにしちゃいました。

——あまり聞いたことのないルールですね(笑)。ビールの締めは簡単ですが、おにぎり縛りは難易度高めかと。

手塚 調べてみたら『花くるま』さんという土・日限定営業のお店も見つけたし、池上駅の『東急ストア』で買うことも考えました。毎回おにぎりを食べる散歩って、素敵じゃない。

——ビールも素敵です。

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待ち合わせ場所の池上駅は、手塚さんの記憶にあるレトロな駅舎ではなく、図書館も入った便利な商業施設「etomo」に変わっていた。手塚さんにくっついて、カーブを描く池上本門寺通り商店会を流し、呑川を越える。

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えんが和/和食中心のお総菜屋さん。メニューは日替わり。木・金・土の11:30~で、売り切れ次第終了。大田区池上2-22-5 ☎070-8940-2318
えんが和/和食中心のお総菜屋さん。メニューは日替わり。木・金・土の11:30~で、売り切れ次第終了。大田区池上2-22-5 ☎070-8940-2318

手塚 ここが前もって調べておいた、お目当ての『えんが和』さん。おにぎりが100円なんて、お安すぎる! お店の方にお聞きしたら、そこの縁側でいただいてもいいそうです。握り方も、やわらかすぎず、かたすぎずで、ちょうどいい。めちゃくちゃおいしい!

——ナスの煮びたしも、ナスがぴかぴかで美しいし、ショウガも絶妙です。日によっては12時頃には売り切れてしまうこともあるそうですよ。

『えんが和』さんにて。
『えんが和』さんにて。
縁側でいただきます。
縁側でいただきます。
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手塚さんはご友人と私をぐいぐい引っ張って歩いていく。『田庄の海苔販売店』『古民家カフェ 蓮月』、そして今日はお休みの『花くるま』。街の中心でもある池上本門寺の此経難持坂(しきょうなんじざか)のふもとにたどり着く。此経難持坂は、表参道にある九十六段の石段で、加藤清正が寄進したと伝えられている。ロケハンの撮れ高はすでに十分だが、五重塔や大堂があるので階段を上りましょうか、と提案すると、手塚さんはくるりと右45度回転。

池上本門寺/日蓮宗の大本山。お会式は10月11~13日で、特に12日の万灯練り行列は圧巻。また来年。大田区池上1-1-1 ☎03-3752-2331
池上本門寺/日蓮宗の大本山。お会式は10月11~13日で、特に12日の万灯練り行列は圧巻。また来年。大田区池上1-1-1 ☎03-3752-2331
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——どこへ行くんですか?

手塚 この階段は上らないの。ふふふ。秘密のルートをお教えますね……隣接する『池上会館』のエレベーターに乗れば……ほら、なんと本門寺の石段の上に到着!

——超裏技ですね。

手塚 私はいつもこのルートを使っています。さらに展望台までのぼって、そこからの景色もぜひ見てほしい。

『池上会館』の展望台。
『池上会館』の展望台。
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展望台からの景色を堪能したあと、手塚さんが初舞台『Good』に向けてお母さまと発声練習をした本門寺公園、『朗峰会館』から眺める奥庭「松涛園」、中学生のテニス部時代にうさぎ跳びで上った妙見堂の石段(妙見坂)……「柔道部は、こっちをうさぎ跳びだったんだから」と、さっきの此経難持坂を見下ろす。手塚さんの思い出スポットフルコース。日蓮さんの像は穏やかな表情で、先月見た中山法華経寺の日蓮さんとはまた違った趣き。

日連さん。見ていて落ち着く。
日連さん。見ていて落ち着く。
此経難持坂も下りはらくちん。
此経難持坂も下りはらくちん。
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手塚 お会式が終わったばかりの池上の街は、静かで散歩日和。お会式はにぎやかで楽しいから、ぜひ一度体験してほしい。

友人 あっちの纏(まとい)の振りがかっこいいとか、あっちの纏はちょっとね、なんて見ていたことを思い出します。

——ところで、手塚さんは本当によく歩きますね。

友人 さとちゃんは、ママ友のランチ会でも周辺を調べて、あちこち案内してくれるんです。どんどん歩くさとちゃんに、私たちはカルガモの雛みたいについていくだけ。だから、このお散歩のお仕事、合っていると思うの。

——それは何よりです。手塚さんはリアル“散歩の達人”なんですね。

手塚 そうなのよ、歩くの大好きなの。さて、いるかな。こんにちはー。

岩田 おお、手塚かー。

手塚 久しぶり、元気? こちらが中学の同級生で、3年生のときに一緒に学級委員をやった岩田くん。『八百吉』さんは昔ながらの八百屋だったんだけど、最近きれいになっちゃったんだよね。岩田くんはその5代目。

——はじめまして。5代目となると、お店の創業はいつですか?

岩田 江戸末期です。みんなには170年って言っています。

——お野菜だけでなく、ぬか漬けなども売っているんですね、おいしそう。

手塚 私は、キュウリとニンジンとダイコン、ちょうだい。

八百吉青果店 ☎03-3754-6985
八百吉青果店 ☎03-3754-6985
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『八百吉青果店』で2ショットを撮影したあと、締めには『RE.beer』という昼間から飲める「地域密着型のブリューパブ」へ。店内で醸造されたクラフトビールが楽しめ、この日はホワイトエールをベースにしたナシのビール、山形県新庄市産のそば粉を使ったビール、東京バイオテクノロジー専門学校の講座で開発されたビールなど。私たちは3人それぞれ違う種類のクラフトビールを選び、乾杯。

RE.beer/さまざまなクラフトビールが楽しめる「地域密着型のブリューパブ」。全国各地の珍しい地酒もあり。大田区池上4-31-16 ☎03-6410-6778
RE.beer/さまざまなクラフトビールが楽しめる「地域密着型のブリューパブ」。全国各地の珍しい地酒もあり。大田区池上4-31-16 ☎03-6410-6778
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——手塚さん、本日のガチロケハン池上編、いかがでしたか?

手塚 あまりに身近で、特に池上本門寺なんて自分の庭みたいな感覚だっんだけど、『えんが和』さんという大収穫がありました。発見こそ、ガチロケハンの醍醐味ですよね。池上はお会式などのお祭りもあって地元愛が強い人が多いところ。岩田くんも『RE.beer』さんとお知り合いみたいだし。そういう街はいい街。

——たくさんの見どころを惜しみなくご案内いただきました。スペースの関係で紹介しきれておりませんが。

手塚 ふりかえると、とにかく地元愛が炸裂していた私でありました(笑)。池上ラブ!

構成=H岩美香(編集部)
『散歩の達人』2026年1月号より

世田谷区、目黒区、大田区の3区を貫き、水面が見える開渠(かいきょ)部分は大田区を横断するように流れている呑川。両岸が緑道となっており、河口まで続いているらしい。ちょっとした大田区横断の旅だな、と思った大田区在住のライター・ひびのが地元目線で歩き、レポートしてみることにした。