一人鍋とは? 台湾のお店なの?

まず、「一人鍋」について。

一人鍋スタイルの店は日本でも見かけるけどまだ少数派。しかし台湾では「小火鍋(シャオフォグゥオ)」と呼ばれ、あちこちに専門店があって街に溶け込んでいる。性別年齢関係なく普段使いされ、カップルや友人と別々の鍋をつつき合う風景なんてのも日常のもの。コロナ対策的にも何気によろしい鍋でもある。

次に「台湾」の一人鍋である事。

一人鍋=小火鍋は、小サイズの「火鍋」の意味。エスニック料理好きなら「火鍋」は「カラい中華鍋ね」と思い当たるはず。ところが台湾スタイルは必ずしも辛くはない。辛口もあるけれど、口から火を噴くほどじゃない。まろやかで、エスニックな日本鍋みたいな感じ。

3つめに「カリフォルニア」からの出店である点。

『BOILING POINT』は、台湾一人鍋の店なんだけど、アメリカ・カリフォルニアを中心に展開しているチェーン店なのだ。もともと台湾から渡米した台湾人実業家が、アメリカで暮らすうちに小火鍋が恋しくなった。しかし故郷の味を食べられる店などアメリカにはない。じゃあ作っちゃえと開店、成功して現在に至っている次第。日本にもまだ小火鍋の店がない、ならば紹介しましょうと乗り出してきたわけである。

意外にも“本場指数”は高い

店の雰囲気は元々台湾料理に馴染みのないアメリカで受け入れられるよう工夫したもので、日本店もテイストを踏襲。渋谷センター街沿いの雑居ビル3階に陣取り、エスニックな鍋とは思えぬ広いカフェ風の造りで、女性一人でも入りやすい。

一方、味までアメリカ~ンってわけではない。好みの分かれるクセを抑えているものの、台湾人が食べても「ああコレコレ」って味わいに仕上げてある。采配を振るう支配人の陳氏からして、台湾の東京にあたる台北っ子で、本場指数は何気に高かったりする。

支配人の陳氏。

「現地そのままの味」へのこだわりはかなりのもので、台湾でしか手に入らない食材と、味付けのキモとなる調味料全般は台湾の専用工場から送られてくる。炎の乱れにくい特製コンロでテーブルに供される鍋は、看板メニューの「ハウススペシャル鍋」を筆頭に、「BP(BOILING POINT)ビーフ」「高菜ラム」「あっさり海鮮」「咖哩(カレー)クリーム」、ベジタリアンな「きのこ野菜鍋」、いわゆる辛い火鍋に相当する「スパイシー台湾鍋」、日本オリジナルの「ジャパニーズ味噌鍋」「ローズミルク鍋」の9種類。

スープは牛骨をベースとし、鍋ごとに主役の食材に合わせ味を変え整えている。辛さも選べてライス付き、ボリュームあって税込1700円前後はお手頃ではなかろうか。具の追加も可能(有料)。

初心者でも挑戦しやすい臭豆腐

ハウススペシャル鍋1628円。

たとえばハウススペシャル鍋だと、白菜、豚肩ロース、豚モツ、ニラ、えのき、肉団子、あさり、うずら、里芋、ザーサイ、トマト、パクチーと具沢山で、これに知る人ぞ知る「臭豆腐(チョウドウフー)」が加わる。豆腐を植物性の発酵液に漬けた食材で、納豆等と比較される事の多い台湾定番の「香り高き」一品である。『BOILING POINT』では調理の過程で用いる油を植物性にすることで臭い控えめヘルシーな臭豆腐に仕上げている。手練れにはちょい物足りないかもしれないが、初心者にはおあつらえ向き。

クセのある肉が好みなら高菜ラム。陰が薄いながらも台湾定番の咖哩(カレー)クリームのまろやかな味も捨てがたい。

高菜ラム1738円。
咖哩(カレー)クリーム1738円。

鍋にそえる自家製調味料もレベルが高い。豆板醤、ガーリックソース、ニンニク入り辣油の3種類で、3:2:1の配合で使うことを推薦しているがそこはまあ好みで。ことに豆板醤がタダ者ではない。台湾南部で好まれる辛くないタイプで、ラムや牛肉と抜群に合うのだ。これを味わえるだけでも訪れる価値ありだと、ひねた台湾南部好きとしては推薦したい。

鍋と一緒に供される調味料。

タピオカはもちろん、ヤクルト緑茶にも注目

飲物も台湾ノリの品がお気楽に楽しめる。台湾緑茶に紅茶、黒糖タピオカミルク、パッションフルーツ緑茶などなど。特に注目はヤクルト緑茶だ。現地では「多多綠(ドゥオドゥオリュ)」の名称で親しまれる台湾緑茶のヤクルト割り。味の想像がつかないかもしれないが、緑茶がヤクルトの甘味を適度に抑えこんで実に美味いのだ。

台湾緑茶のヤクルト割りSサイズ528円。

同じ素材による通販も行っている。家庭で気軽に本格的な味を楽しめるので人気で写真は海鮮鍋セット。小白菜や草蝦といった台湾で親しまれる食材が何気に混ざってくるのがうれしい。これにハウススペシャルセット、スパイシー台湾、高菜ラムが加わって計4種類。2~3人前2541円だから、自宅でリーズナブルに台湾鍋が持ち込める。

日本では鍋の季節はこれからが本番。小籠包やマンゴかき氷だけではない台湾料理の多彩な魅力の一端をはふはふとお試しあれ。

『BOILING POINT 沸点』

住所:東京都渋谷区宇田川町33-1 グランド東京渋谷ビル3F/営業時間:11:30~22:00/定休日:無/アクセス:JR・私鉄・地下鉄渋谷駅から徒歩6分

取材・文・撮影=奥谷道草