『サムライスピリッツ』シリーズ

剣劇対戦格闘ゲーム『サムライスピリッツ(初代)』が発売されたのは1993年。対戦格闘ゲームブームのさなかのことであり、特に第2作目『真サムライスピリッツ』は、テレビCM、新聞、雑誌等各種メディア広告を通して大々的にプロモーションされ、話題となった。その後シリーズを重ね、2019年に『SAMURAI SPIRITS』が発売、また2022年にexA-Arcadia版『サムライスピリッツ零SPECIAL完全版』が稼働するなど、今も愛され続けているシリーズである。

『サムスピ』の時代は、ゲームセンターの隆盛の時代と重なる

『サムスピ』について特徴的なのが、現在「初代」と呼ばれる1作目が登場する時には、前評判がまったくなく、広告を見たユーザーが「なにこれ?」と首を傾げていた。実際発売されると、キャラクターが全員「武器」を持っていることや、今までにありそうでなかった「和」な世界観が、ゲーセンに集っていたキッズたちの心をつかみ、たちまち大ヒットとなった。

当初は複雑なレバー入力を伴う必殺技がそれほどいらないシンプルなゲームデザインだったため、パーティーゲーム感覚で遊ぶことができた。当時ゲーセンで、「初代」と2作目の「真サムライスピリッツ」をプレイしたことのある人は、かなり多いのではないだろうか。

また『サムスピ』の時代は、ゲームセンターの隆盛の時代と重なる。あの頃、ハマっているゲームをゲーセンにプレイしに行くと、必ず見知った誰かに会えた。時に知らない強豪が現れ、常識はずれの強さを見せつけられてがくぜんとしたりした。普通に生活していたら知り合うことがないような、別の世界に生きる人間と、深い親交を結べることもあった。

——現在、対戦格闘ゲームを通じてのコミュニケーションは、ネットが中心になっている。しかし、今でもゲーセンは、直接誰かと出会うことができる場所なのである。今回取材した、立川の『ゲームセンターWILL』はまさにそのひとつ。

今だから「ゲームセンター」へと、散歩にでかけてみてはいかがだろうか。そこでは懐かしくて、それでいて新しいなにかに出合うことができるかもしれない。

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ゲーセン仲間と出会えるのはここ! 『ゲームセンターWILL』【立川】

対戦台が並ぶ風景はやはり圧巻! これを見てかつてを思い出す方もいるのでは。
対戦台が並ぶ風景はやはり圧巻! これを見てかつてを思い出す方もいるのでは。
自販機で売っているものも、ゲームセンターの収入源になる。飲み物もなるべく店で買うのが、遊ぶ者の心意気だ。
自販機で売っているものも、ゲームセンターの収入源になる。飲み物もなるべく店で買うのが、遊ぶ者の心意気だ。
これはなんと「喫煙室」。「ゲーセンでは煙草は吸えるもの」という店長・しぶたに氏のポリシーで設置されていた。
これはなんと「喫煙室」。「ゲーセンでは煙草は吸えるもの」という店長・しぶたに氏のポリシーで設置されていた。
取材時、『ストリートファイター6』が稼働していた。最新ゲームを体験できるのもゲーセンの魅力。
取材時、『ストリートファイター6』が稼働していた。最新ゲームを体験できるのもゲーセンの魅力。
住所:東京都立川市曙町2-23-1 フタバソシアルビル7F/営業時間:15:00~24:00(土・日・祝は10:00~)/定休日:定休日は公式Xにて確認/アクセス:JR立川駅から徒歩5分

かつてあった『ゲーセン専門誌』の時代

1990年代は『対戦格闘ゲーム』が国民的ブームを起こした時代で、雑誌全盛の頃でもあった。その流れを受けて、対戦格闘ゲームを中心に扱う雑誌が多数登場した。

中でも『ゲーメスト』(新声社)と、『ネオジオフリーク』(芸文社)が長期定期刊行物として知られている。特に『ゲーメスト』は月2回刊行で、コンビニにも置かれていたという、今では想像できないような、高い人気を誇っていた。他にも『パワーゲーマー』(マガジンボックス)など短期間で消えた雑誌や、単発ムック本も多数刊行。攻略の角度の違いや、連載の種類など、それぞれのカラーがあった。

2000年代になると、百花繚乱の時代は終わり、ゲーメスト、ネオジオフリーク両方の系譜を受け継ぐ『アルカディア』(エンターブレイン)に統合され、その後、現代の動画時代へと移っていくことになる。

取材・文=来栖美憂 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2025年9月号より

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コンピュータゲーム黎明期のゲーム音は、効果音の集合、リズムの集合が音楽のような形になっていたものが多かった。『スペースインベーダー』におけるインベーダーの移動音やUFOの飛行音、自機ビーム砲の発射音が重なり合った音は、一種のゲームミュージックとも言える。それが、メロディーを伴ったいわゆる「ミュージック」になったのは、1980年初頭。ナムコから発売された迷路レースゲーム『ラリーX』、猫の盗賊団とネズミの警官が追いかけっこをする『マッピー』といった作品が代表的だ。タイトルを聞けば、即座に音楽が脳内で再生される方も少なくないだろう。セガのペンギンが氷を動かすゲーム『ペンゴ』のBGMも当時、ゲーセンをにぎやかにしていた。
子供の頃、あるいは学生時代、自然とゲーム仲間がいた。『ドラゴンクエスト』の新作が買えたかどうかを報告しあい、その後会うたびに「レベルいくつになった?」などと挨拶代わりに聞いたものだ。メジャーなゲームだけでなく、世間ではあまり売れなかったゲームでも、仲間うちでやりこまれることもあった。早売り雑誌で新作情報を得た者がスターになったり、田舎では入手困難なレアグッズを自慢されて、羨(うらや)ましさもありながら目を輝かせたりした日が懐かしい。
「ゲームの本」と言われても、ぱっと思い浮かべるものは、それぞれ全く違うのでは。なぜかと言えば、その範囲はあまりに広いからだ。始めに多くの人が思い浮かべるのは「雑誌」だろうか。『ファミリーコンピュータMagazine』『ファミコン通信(現・ファミ通)』『ゲーメスト』など数え切れないほどあり、メジャーな雑誌はコンビニでも買えた。