バックナンバー探索に没入する

開架書庫内。申請すれば自由に出入りすることができる。
開架書庫内。申請すれば自由に出入りすることができる。

雑誌は時代を映す鏡といわれる。あるテーマに沿って、さまざまな角度から掘り下げ、個性豊かな書き手が記事を執筆し、書籍とは違った楽しさと読み応えがある。だが、書籍よりも散逸しやすく、まとまった形で残りにくいことも確かだ。

『東京都立多摩図書館』の「東京マガジンバンク」は、現在約1万9000タイトルの雑誌を所蔵している。そのうち、閲覧室がある開架エリアでは1500、入室に申し込みが必要な開架書庫では4500、合わせて6000タイトルの雑誌1年分が、自由に閲覧できる。1年以上前のバックナンバー、休刊・廃刊してしまった雑誌は閉架だが、申し込みをすれば閲覧可能。創刊号から続けて読みたいという場合も、台車に積める分だけ一度に出してくれる。魅惑的な雑誌の楽園に容易にアクセスできるシステムなのだ。

取材時にはコンピュータ関連誌創刊号のウォール展示が。
取材時にはコンピュータ関連誌創刊号のウォール展示が。

特筆すべきは、原則、原型のままだということ。雑誌は通常、長期保存に耐えられるように合冊製本していることが多いが、「東京マガジンバンク」では一冊一冊を原型のまま保存している。紙(酸性紙)の劣化を防ぐため、保護用紙でつくられたカイルラッパーと呼ばれる特別な容器や中性紙の袋に入れたり、脱酸処理(紙の中の酸をアルカリ物質により中和する)を行うなど、長年積み重ねてきた保存方法が確立されている。

所蔵している雑誌のジャンルも幅広い。書店に並ぶ一般商業雑誌はもちろん、業界誌、研究者の論文や学術誌、日本各地の地域情報誌、有料会員向けの会報誌など、手に入りにくいものも揃っている。さらに国内にとどまらず、外国語雑誌も12言語400タイトル以上が、開架エリアに並んでいる。

多彩なジャンルの雑誌を集めているなかで、特に力を入れているのは、女性雑誌と鉄道雑誌。女性雑誌は当時の世相をよく表しているので時代を知る手がかりになるため、鉄道雑誌は根強い人気があるためだという。発行時は最新情報だったものが、時を経るうちに歴史となり、読み取るものが変わっていくのは雑誌ならではの醍醐味だ。

開架エリアには閲覧用の席もあり。女性誌、スポーツ、交通などにジャンル分けされている。
開架エリアには閲覧用の席もあり。女性誌、スポーツ、交通などにジャンル分けされている。

また、創刊号を約8700タイトル集めたコレクションもある。収蔵する最古のものは、1877年(明治10)発刊の経済誌『中外工業新報』。古書店で購入するなどして、現在も増え続けているという。

こうした膨大なアーカイブを活用し、世相に合わせた企画展、テーマに沿った雑誌の表紙を壁一面に掲示するウォール展示を行ったり、講演会やワークショップを開催する「東京マガジンバンクカレッジ」という交流の場もある。紙の雑誌が築き上げてきた多彩なカルチャーを引き継ぎ、次の時代へとつないでいるのだ。

交通新聞社の雑誌も探してみた!

『JNR編集 時刻表』。
『JNR編集 時刻表』。

『JNR編集 時刻表』(1987年4月1日発売)は、国鉄からJRに分割民営化したときの最初の号。「JR」の文字が金色で祝祭感がある。

『旅の手帖』創刊号。
『旅の手帖』創刊号。

『旅の手帖』創刊号(1977年4月1日発売)には、推理作家による連載が掲載。

『散歩の達人』創刊号。
『散歩の達人』創刊号。

『散歩の達人』創刊号(1996年4月22日発売)の特集は「路地裏の誘惑」。判型は現在よりすこし小さめのB5判。特定の街特集ではなく、かなり混沌とした構成が楽しい、レトロ&サブカル路線だった。

『東京都立多摩図書館』詳細

住所:東京都国分寺市泉町2-2-26/営業時間:10:00~21:00(土・日・祝は~17:30)/定休日:第1木(祝の場合は第2木、毎月1回保守点検日あり)/アクセス:JR中央線・武蔵野線西国分寺駅から徒歩7分

取材・文=屋敷直子 撮影=井原淳一