乱歩の人となりにも興味が湧いてくる品々がずらり
母屋のなかは、乱歩が暮らしていた頃の様子をできる限り残して改修されており、床や照明などは当時のまま。展示スペースとなっている応接間は天井の高さも特徴的で、乱歩自身が設計したというこだわりがうかがえる。
作家だけでなく人としての平井太郎(本名)にも焦点を当てた展示室では、「作家・乱歩と人間・太郎、二つの人生に出会う場」をコンセプトに資料を紹介。「展示環境が整備されたことで、以前はできなかった乱歩自筆の資料の公開ができるようになりました」とは、立教大学大衆文化研究センターの杉本さん。
自身に関することは全て記録・整理していた乱歩の自分史スクラップブック『貼雑年譜(はりまぜねんぷ)』や、収集した江戸時代の和本を収納するための手作りの紙の箱など、乱歩の几帳面で根気強い性格が伝わる精緻な品々がずらり。書物だけでなく、カメラや編集機材、町内活動の記録など多岐にわたる活動を垣間見ることができて、人となりにも興味が湧いてくる。
ほかにも、当時の写真をもとに再現した書斎では乱歩になりきった写真を撮ることができるほか、乱歩の作品や関連書籍を手に取って読めるスペースも。2025年7月には図録も刊行予定だという。
「リニューアルオープン以降、老若男女問わず多くの方にご来館いただいています。乱歩のファンだけでなく、たまたま寄ってみたという方も多いですよ」と杉本さん。「乱歩は二次創作にも寛容で、アニメ化や舞台化など作品世界が広がり続けています。ぜひここをきっかけに興味を持ってもらいたいです」。
取材・文・撮影=中村こより
『散歩の達人』2025年7月号より