江戸時代に大人気、動物見学
天下泰平の江戸時代とは、人が娯楽を追い求めた時代ともいえよう。
娯楽の書や芝居はもちろんのことながら様々な文化が公家から武家、武家から民へと伝わっていった。
花見や正月遊びの類はその代表的なもんじゃ!
そんな時代に民の人気を集めたのが動物の見せ物小屋である!
現世では動物園なるものが人気の観光地となっておるけれども、珍かなる生き物への興味は今も昔も変わらぬと言えそうじゃな!
日ノ本には大型の哺乳類が熊くらいしかおらんのも理由のひとつやもしれんな!
イルカやクジラやマンボウといった海の生き物、
象やヤマアラシ、ロバなどの獣、
ペリカンやオウム、ダチョウ等の鳥、たくさんの種類のものが日ノ本にやってきておる。
獣の類は異国から輸入したものじゃが、イルカやクジラはたまたま打ち上がったものを、ペリカンなどの大型の鳥は長距離移動の最中に日本に迷い込んだものも捕獲して見世物にしたこともあったようじゃ!
輸入したものに関しては問題ないが、迷い鳥や魚は名前が分からぬものも多い。
故に謎の怪鳥や奇魚として見世物にされておったこともあるようじゃ。
珍かなる動物を模写した本がいくつも残っておるで、これを現世のものが照らし合わせ、飛来した鳥がどの鳥か数百年越しに判明するものも多いのであろうな!
鳥に関しておもしろき話が残っておる。
皆はダチョウを知っておるわな。
現世の動物園でも人気者である飛べない大きな鳥であるダチョウは江戸時代に幾度も日ノ本に参っておる。
のじゃが!
『薩摩鳥譜図巻』などに描かれておるダチョウは明らかに現世の皆が知るダチョウとは別物なのじゃ。
これは是非とも調べて絵を見てみてほしいわな。
実はダチョウとして描かれておる鳥はヒクイドリと現世で呼ばれておる鳥である!
ヒクイドリとはダチョウと同じく飛べぬ代わりに走りに長けた大型の鳥で、その風貌と気性の荒さから恐竜の生き残りの異名を持っておる。
鮮やかでありながら威厳のある出で立ちで人気があるそうじゃが、
鋭い爪や強靭な脚力とその縄張り意識の強さ故に、人の死亡事故も複数回起こっておる世界一危険な鳥としても知られておる。
閑話休題。
ダチョウとヒクイドリは「飛べぬ、走れぬ、大きい」と確かに見た目の共通点は多いわな。故に江戸時代には混同されておったのじゃろう!
ヒクイドリは複数日ノ本にやってきておるが、ダチョウは一度のみ幕府に献上された形跡があるようじゃな。
ダチョウに限らず、研究が進んだ現世とは違ってこの手の勘違いは多くあった。
そんな勘違いの最たる例が、我らが名古屋城にも見ることができるぞ!
名古屋城の本丸御殿の玄関には竹林豹虎図が描かれておる。
この竹林豹虎図は我らの時代に人気の高い画題で、多くの御殿や屋敷にあり様々な竹林豹虎図を見ることができるのじゃが、これこそが勘違いの証拠である!
竹林豹虎図とは書いて文字の如く、竹林の中にいる豹と虎の絵なのじゃが、中には虎と豹が共に子育てをしておる様子が描かれておるのじゃ。
これは我らの時代には豹が虎の雌であると考えられておったからなんじゃな。
現世の者からすれば面白おかしい勘違いなのやもしれんが、まあまあ似ておるじゃろう!
確かに虎のほうが大きく紋様も異なるけれども、大きさか見た目が性別によって異なる動物は決して少なくはない。
むしろ現世ほどに研究が発達しておらんかったら、当たり前の考えと言えるじゃろう。
終いに——黄金週間、旅のすすめ
此度の戦国がたりはいかがであったか!
なかなか皆が知らぬ話ができたのではないか?
此度話した江戸時代の見世物の中でもはじめに申した象やヒトコブラクダ、孔雀なんぞは特に人気が高かった。現世の人気とそれほど変わらんじゃろう!
この見世物の話を調べてみると、大きな猫を虎と偽って見世物にしたであるとか、ラクダは健康や魔除けに良いとされてありがたがられたであるとか、江戸時代ならではの話もあれば、ラクダや象の絵がついた小物が大流行したなどの現世にも通じる話も残っておる。
はじめにも申したが珍かなる動物への興味は今も昔も絶えることはないのであろう!
儂の本拠である名古屋には東山動植物園がある。
イケメンゴリラでとして話題となったシャバーニや、日本で唯一の世界最大のトカゲコモドオオドラゴンのタロウのほか、ゴリラのキヨマサやフクロテナガザルのケイジなど我ら武士の名を持つものがおったりと見どころたくさんである。
飼育種類数は450を数え日本一だでな! 名古屋城とともに足を運んでみるが良い!!
加えてになるのじゃが、『名古屋市科学館』では6月まで『鳥展』が開催中である!
此度話したヒクイドリに関する展示もあるようだで、これも併せて楽しむのも良いうわな!
我が隊の足軽・太助は生き物について詳しいで、先ずは名古屋城に参って太助に見どころを聞いてから足を運ぶのも一興であろう!
これより現世は黄金週間、旅行に参る者も多いじゃろう。
此度の話が旅の目安になったならばうれしく思うぞ!
ちと蛇足が長くなったが、此度の戦国がたりはこの辺りといたそう。
次の話も待っておるが良いぞ!
さらばじゃ!
取材・文・撮影=前田利家(名古屋おもてなし武将隊)