昼はハンバーガー&喫茶、夜は居酒屋の二毛作店

吉祥寺駅北口を出て『ユニクロ』の建物の横を入っていくと、レンガが敷き詰められ洗練された商店街、中道通りに入る。小さな飲食店や青果店、雑貨店に古着店とさまざまな店が軒を連ね、“吉祥寺=おしゃれ” を象徴する商店街のひとつだ。キョロキョロしながら歩いていると、大きな雑居ビルがあり、通り沿いに立て看板を見つけた。それに促されるまま路地に入ると半地下の店があるではないか。

「こだわりのハンバーガー」の文言にビビビッ! と反応した。指のイラストが示す方へ行ってみよう。
「こだわりのハンバーガー」の文言にビビビッ! と反応した。指のイラストが示す方へ行ってみよう。
路地を曲がってすぐ。ビルの半地下に店の入り口がある。
路地を曲がってすぐ。ビルの半地下に店の入り口がある。

こちらは、2022年にオープンした『バーガー喫茶 ちるとこ』だ。ドアを開けた瞬間、レトロさとモダンの魅力を併せ持ち、それでいてスタイリッシュな雰囲気がすぐに気に入った。台東区蔵前にある本店『バーガー喫茶 チルトコ』とは違って、ここは半地下というところが隠れ家っぽくていいじゃないですか!

自然光とランプの光は温かみがあり心地よい。
自然光とランプの光は温かみがあり心地よい。

オーナーの青木健吾(あおきけんご)さんは、「レトロな喫茶店の温かみとアメリカンダイナーのスタイリッシュさを融合させた空間を演出しています。店名には『吉祥寺の秘密基地』という意味と、『チルする(くつろぐ)』という言葉が込められています」と話す。

かつてはここに、地元民に愛されたビストロ「ガロパン」があった。その当時を知っている青木さんは、アンティーク風な店内の面影と常連客の存在を大切にした店作りで、地域の人々に愛される店を目指している。

「新品のピカピカしたダイナーではなく、アンティーク感のある空間が好きなんです」と話すオーナーの青木健吾さん。
「新品のピカピカしたダイナーではなく、アンティーク感のある空間が好きなんです」と話すオーナーの青木健吾さん。

面白いのは、昼は『バーガー喫茶 ちるとこ』としてハンバーガーを提供し、夜は居酒屋『半地下酒場きちりん』として営業する二毛作スタイルなところ。時間帯によって異なる楽しみ方ができるのがいい。

口の中でとろける! 自慢の角煮がドーンとのった角煮バーガー

ランチタイムで店内はにぎわっている。さっそくハンバーガーのメニューを開いてみた。クラシックハンバーガー1350円や、ベーコンチーズバーガー1700円などオーセンティックなものと、和風のエッセンスを加えた角煮バーガー1650円やわさびアボカドバーガー1650円など、オリジナリティあふれるハンバーガーがそろう。

サイドメニューにある、喫茶プリン550円やクリィムソーダ750円にもそそられた。

オープンから15時まではランチタイムで、セットドリンクが無料になる。
オープンから15時まではランチタイムで、セットドリンクが無料になる。

さんざん悩みながら、ここでしか味わえない角煮バーガー1650円を注文することに。夜の居酒屋でも角煮が人気だというので、ぜひ食べてみたくなったのだ。オーダーをしてから厨房をのぞくと、自慢の角煮をハンバーガーにのせているところだった。

レタス、トマト、ビーフパティで十分ボリュームがあるのに、そこへ自慢の角煮をドーンとON。
レタス、トマト、ビーフパティで十分ボリュームがあるのに、そこへ自慢の角煮をドーンとON。

ビーフパティの上に、こっくりと煮込まれたぶ厚い角煮をのせようなんて! その発想がすごいなぁ。

この店のオリジナリティあふれるメニューは、居酒屋や焼き鳥店での勤務経験があり、料理人でもある青木さんがスタッフとともに生み出してきた。それゆえに、ハンバーガーをただのファストフードとしてとらえるのではなく、素材の掛け合わせや味付けにもこだわりが垣間見える。

 

オリジナルのハンバーガーは、和風のテイストを取り入れるのも『ちるとこ』流。角煮バーガーには長ネギが欠かせない。
オリジナルのハンバーガーは、和風のテイストを取り入れるのも『ちるとこ』流。角煮バーガーには長ネギが欠かせない。

「ハンバーガーだけでなく、クラフトコーラやジンジャーエールもお店で作ってるんですよ」と青木さん。しまった! 今回はふつうのコーラをオーダーしてしまったから、次はぜひクラフトコーラをオーダーすることにしよう。

ほどなくして卓上に運ばれてきた角煮バーガー。ドドドンと積み上がった素材のレイヤーがおいしそうすぎてクラクラッ! さっそくいただきましょう。

店内の雰囲気にハンバーガーとコーラが合う。
店内の雰囲気にハンバーガーとコーラが合う。

ハンバーガーを軽くつぶしてペーパーに入れ、一気にかぶりつく。甘めでフカフカのバンズ、シャキシャキのレタスと厚切りのフレッシュトマト。そして牛肉100%のパティの上にはコクのあるチーズ。最後は、この店自慢の角煮がドドーン! 口いっぱいにおいしさが広がって夢心地だ。

よく味わって気がついた。トロトロに煮込まれた角煮やパティの脂はジューシーだけれど、しつこくはない。豚(角煮)と牛(パティ)はそれぞれの味わいを持ちながらも、お互いが融合し合っている。これは絶妙なハーモニーだ!

バンズからはみ出るポークとビーフの最強タッグ!
バンズからはみ出るポークとビーフの最強タッグ!

青木さんは、「角煮は甘めの味付けで、パティとの相性を考えながら開発しました。うちは喫茶店だけど、食事をしっかり楽しんでもらいたいから、バーガーのサイズも満足感があるように工夫しています」と語っている。

カリッと揚げた細めのポテトを挟みつつ、どんどん食べ進めていける。

 

夜も名物の角煮が大人気! フルーツサワーにもぴったり

17時に『ちるとこ』のラストオーダーを迎えると、18時からは『きちりん』に。角煮バーガーに大満足したので、夜の居酒屋がどんな感じなのか気になってきた。そもそもこの店を2部制にした理由はなんだったのだろう?

「2022年ごろは、コロナ渦の影響でまだ空き店舗が多く、飲食店のほとんどは夜8時で閉店していました。この店も、当時は昼がメインのハンバーガー店でしたが、『ここで店を構えている以上は、中道通りを明るくしたい』と、居酒屋をやることにしたんですよ」と青木さん。

居酒屋の定番メニューにオリジナリティを加えたラインアップ!
居酒屋の定番メニューにオリジナリティを加えたラインアップ!

名物! とろとろ角煮950円はそのまま食べてもいいし、中華パン150円に挟めば角煮まんになるという。そのアレンジをぜひ試したい!

ドリンクは6種類あるレモンサワーを筆頭に、ビールや焼酎、ワインなどひと通りそろっている。

「フルーツサワーが人気なんですよ。これもフルーツを自家製で漬け込んだものを使用し、フレッシュなフルーツを盛り付けて提供しています」

お酒が苦手な人は、ノンアルでも提供可能だそう。

自家製のレモネードはソフトドリンクでも、お酒入りのサワーでの注文も可能。
自家製のレモネードはソフトドリンクでも、お酒入りのサワーでの注文も可能。

地元の人たちが仕事帰りに立ち寄ると聞いて妙に納得した。隠れ家的なシチュエーションだが、気軽にサクッと飲める雰囲気がいい。

今日はハンバーガーに満足したから、次はお酒を飲みに来てみたいな。

 取材・文・撮影=パンチ広沢