最後は、東京を離れ千葉県は船橋から。「東京さんぽ図鑑」を読んで、こんなにいろいろあるのは東京だけだ!と思った皆さんを代表(?)し、我が地元でもやってみた。IKEA、ららぽーと、中山競馬場……と大型の商業&娯楽施設が町を席巻する、都心とはまるで異なる環境だが、いざ歩いてみたらすぐそこに、キーワードに当てはまるものがちらちらと。
【待ち合わせスポット】さざんかさっちゃん
まずは船橋駅。待ち合わせといえばここ。駅コンコースに現れたのは1980年。さざんか募金運動のシンボルとして同協議会が、東武鉄道、東武百貨店船橋店、地元の漫画家・彫塑家・石工の協力を得て立てたものだ。最近は、緊急事態宣言を受けマスクをしていた。かわいかった。ちなみに小さな女の子のほうがさっちゃん。単なる像だと思っていたら、実は募金箱だったと今回初めて気づいた。今まですみませんでした。
ちらり北口側をのぞいてみたら、【動物のオブジェ】を発見。
【橋】船“橋”
そもそも船橋という地名は、元々、古代の英雄が東征の折に、川を渡るため、地元民が小船を並べて橋の代わりとしたことに由来するという(所説あり)。市内を流れる海老川は、今より川幅が広く、水量も多かったため、橋をかけるのも渡るのも困難だったとか。
現在、川にかかる橋は14。橋の欄干には、それぞれ特徴的なレリーフが設置されている。
三鷹編に引き続き、太宰氏。実はこちらにもゆかりが。
“鳥さんぽ”もできるし、ジョギングコースとしてもいい。橋越え、線路をくぐり、北側へ…。
【崖】元海岸線?
船橋には縄文時代初期から人が暮らしていたとされる。崖の上の『飛ノ台史跡公園博物館』には当時の様子がわかる出土品がたくさん。復元模型を見てみると、狩猟に漁業にと当時の船橋の民は忙しそう。彼らの住居のすぐ先は海。とするならば、この崖が大昔の海岸線ではないか、と推測している。そんなこんな、この辺りは【暗渠】や【埋め立て地】の宝庫でもある。地形と歴史をたどる散歩も楽しい。
【パン屋】ピーターパン
そしてあの、JR船橋駅改札内の行列といえば。24時間のメロンパン売り上げ数で世界記録を打ち立てた店といえば。この界隈のパン屋といえば、何と言っても。不動の人気を誇るカレーパン、メロンパンをはじめ、毎月でる新商品、千葉県食材をつかったものなど、訪れる度に、何度も行っているのに迷う。2年前、開店前に取材させてもらってから一層ファンに。先日エコバックをもらった。
あ、そうそう例年7月といえば、こんなのも。
【郷土の祭り】ばか面おどり
船橋の伝統的な郷土芸能。漁師町である、湊町地区(船橋漁港のあたり)で漁師たちが厄払いのために行ったのが始まりで、その起源は、明治とも、それ以前ともされる。面は、笑い・おかめ・ひょっとこ・怒り・天狐の5つ。それぞれに意味がある。海上の安全、豊漁と厄払いなどを祈願し、現在もなお、毎年のふなばし市民まつり(今年は中止)では、軽快に滑稽にその独特なおどりが披露される。
ややもすると、普段は駅と家の往復で、買い物は専ら大型スーパー。散歩といえば犬の散歩……という典型的郊外ライフをおくりがちだが(これもわりと好き)、キーワードを意識して改めてきょろきょろしてみたら、その道中とてちょっと違って見えてきた。
東京のマネではなくて、ある/ないの話ではなくて、この「東京さんぽ図鑑」が単純に、「面白がり方」を増やすツールとなればいいな、と自分でやってみて改めて思う。どんなエリアでも、そこに町がある限り、自然の中で人が住んでいる限り、何もないことは絶対にない。散歩も日常も、気の持ちようでいくらでも楽しくなるのだ。
文・撮影=町田紗季子(編集部)