『熱血硬派くにおくん』、『ダブルドラゴン』、そして『ファイナルファイト』

『スーパーマリオブラザーズ』『魔界村』に代表される「横スクロールアクション」との違いは、画面に奥行きがあるということ。これにより、キャラクターの位置取りが重要になった。

ベルスクが登場する前の類似ゲームとして、横スクロールアクションがあった。その代表作『魔界村』は今も新作が続く名作。
ベルスクが登場する前の類似ゲームとして、横スクロールアクションがあった。その代表作『魔界村』は今も新作が続く名作。

ベルスクの萌芽は1986年発売の『熱血硬派くにおくん』(テクノスジャパン)に見られる。ただ、横2画面程度の展開で、まだベルスクの定義には収まらない。87年同社が発売した『ダブルドラゴン』でほぼ完成したと言えよう。そして89年に登場したのが『ファイナルファイト』である。

ファイナルファイトとは?

ベルトスクロールアクションを代表するCAPCOMのゲーム、1作目が発売されたのは1989年。翌年末にはスーパーファミコン版が発売され知名度を一気に高め、さらに『ファイナルファイト2』『ファイナルファイト タフ』といったシリーズ作品が続く。さまざまな機種に移植されるだけでなく、『ストリートファイター』シリーズにも、このゲームの設定やキャラクターが度々登場している。

怪しくも楽しかったゲーセンの空気感を思い出させる

『ファイナルファイト』でゲームオーバーになると出てくるコンティニュー画面は煽られ感が強い。この画面を見るのをつらく感じた人も多いのでは。
『ファイナルファイト』でゲームオーバーになると出てくるコンティニュー画面は煽られ感が強い。この画面を見るのをつらく感じた人も多いのでは。
なぜか回復アイテムの呼称に地域差があり、東では「にく」、西では「ヘルス」など、無数の呼び名があった。
なぜか回復アイテムの呼称に地域差があり、東では「にく」、西では「ヘルス」など、無数の呼び名があった。

キャラも性能も違う3人のキャラが選択でき、体力を消費して出す、通称「メガクラ」と呼ばれる必殺技がゲーム性を大きく向上させた。ゲーム自体の完成度も高く、今もベルスクの頂点の一つとして愛されている。

ところで当時、こんなことがあった。90年に登場したスーファミ版では、忍者キャラのガイがいなくなってしまったのだ。ゲーセンどおりにはいかないのかと思っていると、ガイが使える『ファイナルファイト ガイ』が発売された。しかし、今度は主人公のコーディーがいない。ファンは「3人から選ぶのはスーファミでは無理なのか?」と思わされてしまった。

それでも当時の家庭用ゲームとしてのクオリティーは高く、シリーズを重ねると使えるキャラも3人4人と増え、フォロワー作品も進化していった。複数人協力プレイでわいわい遊べるベルスクは家庭用ゲーム機との相性もよく、数々の名作を生み出していった。

そんなベルスクだが、『ストリートファイターⅡ』(91年)の登場で流行が「対戦格ゲー」に移行したことで作品が減っていった。そしてその頃からゲーセンが明るい雰囲気に変わり始めた。

時が流れて今、ベルスクは怪しくも楽しかったゲーセンの空気感を思い出させてくれる。今回撮影した『秋葉原Hey』では交通系ICでもプレイできるので、やりこんでしまうこと必至だ。

1筐体に1ゲームだけじゃなく、今は1つの台に複数ゲームが入っていることもある。筐体を見つけたら好みの作品が入っているか探してみては。
1筐体に1ゲームだけじゃなく、今は1つの台に複数ゲームが入っていることもある。筐体を見つけたら好みの作品が入っているか探してみては。

ゲーム進行を楽にさせるテクニック

ベルスクを面白くしていた要素の一つが、数々のテクニック。その代表が『ファイナルファイト』の「パンチハメ」だ。ボタンを連打すると連続攻撃になるのだが、最後まで続けると敵を吹き飛ばしてしまい、仕切り直しになる。そこで、連続攻撃の途中で後ろを向き、吹き飛ばし技を空振りさせてから向き直って再開すると、敵は身動きが取れなくなる(ハメられる)のだ。

また、2面のボスは正面から行くと勝てない「初見殺し」キャラ。そこで、斜めから近づきつかんで投げると攻略できる。

『ファイナルファイト』に限らず、名作といわれるベルスクにはこういったテクニックが数々ある。最近では、91年に発売された『バーニングファイト』(SNK)がニコニコ動画を中心に異常とも言えるやり込みが始まり、次々新テクニックが開発されている。

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ベルスクゲームが遊べるのはここ!

『秋葉原 Hey』。
『秋葉原 Hey』。
住所:東京都千代田区外神田1-10-5 廣瀬本社ビル2~4F/営業時間:10:00~23:30/定休日:無/アクセス:JR・地下鉄・つくばエクスプレス秋葉原駅から徒歩2分

取材・文=来栖美憂 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2025年2月号より

ファイナルファイト(C)CAPCOM 魔界村(C)CAPCOM

1980年代、スマホどころかインターネットも一般には存在していなかった頃。行き場所のない日に足が向かう先が「ゲームセンター」だったという同志は少なくないだろう。『ペンゴ』『パックマン』といったヒット作はもちろん、そこにしかないマイナーゲームもあった。前触れなく新作が入って喜ばせてくれたかと思えば、大好きだったゲームが急に撤去されて世の理不尽さを学習させられることもあった。そんな時代に、突然登場した『ゼビウス』は、今までのゲームとは全く違うものだった。
RPG(ロールプレイングゲーム)とはなにか? 定義は難しいが、物語があり、主人公が成長していくゲームだと言われている。明確ではなくとも、感覚的に理解されている言葉だろう。RPGというジャンルをメジャーにした『ドラゴンクエスト』(以下ドラクエ)のすごさは、徹底的に「親しみやすく、遊びやすくした」ところに集約される。マニアしか知らない、もっと言えばマニアしか理解できないと思われていたものを、『ドラクエ』は面白さの本質を柔軟に伝えてくれたのだ。それゆえ世界的な支持を獲得し、最新作のナンバリングは11を数えるほどだ。さらに、多くのリメイクや派生作品まで生み出している。ゲーム専用機だけでなくPC、スマホも含めて、実に多くのプラットホームで遊べるようになっているのだ。
1980~90年代、電気店の店頭や徐々にでき始めたパソコンショップなどで最先端機器だったパソコン(以下PC)と、そこで動いているゲームを見て強烈な憧れを抱いたキッズは相当数いたはずだ。