日が短い季節、散歩中の交通事故を防ぐには?
2024年の「冬至」は12月21日。この日は、年間を通して最も昼の時間が短くなります。東京における冬至の昼の長さは9時間45分。一年で最も昼の長い「夏至」と比べると、約5時間も短くなります。
一年で最も昼が短い日だと聞くと、冬至は日の出が最も遅く、日の入りが最も早い日なのだろうと思われるのが自然だと思います。
ところが、年間で日の出が一番遅いのは冬至より少し後の年明けの頃で、日の入りが一番早いのは冬至よりも前なのです。このようになる理由は、地球の公転軌道が楕円形であるため、太陽の動きが日々一定ではなく、特に冬至や夏至の前後に変動が大きくなることが関係しています。
この時季の散歩で注意したいのは、交通事故です。午後はあっという間に暗くなってしまうことに加え、年末にかけて慌ただしく移動する人が増えるため、統計的に12月は交通事故で亡くなる人の数が急増することが分かっています。
しかも、警視庁の分析によると日の入り時刻の前後1時間である、いわゆる「薄暮(はくぼ)」の時間帯は死亡事故が多く発生しており、自動車と歩行者が衝突する事故が最も多いと明らかになりました。
他の季節と同じような感覚で出歩いていると、うっかり危ない目に遭うリスクがあります。歩いている人からは車が近づいていることが分かっていても、車を運転している側からは歩行者がよく見えないことがあります。特にお年寄りや小さなお子さんと一緒に散歩する時は、なるべく暗くなる前に帰宅する、明るく目立つ色の服を着る、反射材やライトを服や靴、カバン、杖、ベビーカーなどに付けるといった工夫をするのがおすすめです。
「冬至冬中冬はじめ」これからが寒さの本番!
「冬至冬中冬はじめ」ということばをご存じでしょうか?これは、冬至は暦の上ではちょうど冬の真ん中に当たりますが(冬至は「立冬」から「立春」の前日の冬の期間の真ん中)、本格的な寒さはこれから始まるという意味です。
「昼が一番短く、太陽のエネルギーが最も小さい」冬至なら、ここで寒さのピークが来てもおかしくないように思いますが、どうして厳しい寒さは冬至の後からやってくるのでしょうか?
これには、空気の暖まり方が関係しています。太陽の光が地球を暖める時、すぐに全体が暖まるのではなく、地面からじわじわと暖かくなり、時間差で空気が暖まります。反対に冷える時も、少しずつ冷えていくため、冬至と最も寒さが厳しくなる頃とでタイムラグができるのです。
東京では平年だと1月の中旬から下旬に最も寒くなり、日中の気温は1桁に、朝晩は冷え込みが強まり氷点下まで下がる日もあります。冬至にはゆず湯で温まる風習がありますが、散歩の後には冷え切った体を温めて風邪を引かないようにしましょう。
このほか、冬至にはかぼちゃを食べるのも良いとされています。かぼちゃは栄養価が高く、肌や粘膜を強化し、風邪の予防に役立つカロテンが豊富に含まれています。
日が暮れる前ならではのお楽しみも!
すぐに日が暮れてしまうのは少々残念ではありますが、暗くなる前のお楽しみもあります。
日の入りの30分ほど前の時間をねらって、空を眺めてみてください。
沈みゆく夕日に染まったオレンジ色に焼けた空が広がります。さらに、日の入り後は昼と夜の空が交じり合うマジックアワー、群青色に染まるブルーモーメントの空を楽しめます。太平洋側では、安定して晴れて空気が澄んだ冬の方が、ほかの季節と比べて夕焼けやマジックアワーなどがきれいに見えます。
日の入りが早い季節は早く散歩を切り上げなきゃと焦りますが、美しい風景を眺められる贅沢な時間を味わえます。薄暮の交通事故に注意をすることはもちろん、寒さ対策を万全にして、冬も元気に散歩を楽しみましょう。
文=片山美紀 画像=片山美紀、写真AC
参考HP:
国立天文台
https://www.nao.ac.jp/faq/a0104.html
警視庁 統計表
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/toukeihyo.html
警視庁 薄暮時間帯における交通事故防止
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/hakubo.html