ベテランの料理人が切り盛りする、長い歴史を受け継ぐ店
1989(平成元)年の創業のぶどう亭。調理や接客は、オーナーの西村松弥(にしむらまつや)さんと、その下で修業を重ねてきた店長の西村幸一(にしむらこういち)さんが手がける。2人とも長年洋食を手がけるベテランだ。
ぶどう亭の歴史は長く、その前身となる店は、1954年に地下鉄丸ノ内線が開通した頃からこの場所で営業していたとか。当時は、オーナーの西村さんのご両親が店を切り盛りしていたが、西村さんが店を引き継いでぶどう亭として開店する際に、“これからはワインの時代だ”と考えたことがきっかけで命名したのだそう。
周辺はオフィス街で、東京大学の本郷キャンパスも徒歩5分の距離にあるため、ランチの時間帯はたくさんの会社員や教授・学生が訪れる。学生時代から来ていた客が教授となって訪れるということもあるそうだ。
時代が変化しても、地元密着で変わらぬ味とサービスを提供し続けてきた『ぶどう亭』。時を経て訪れても、以前と同じ店の姿にほっとする客もいるという。
期待を超えるボリュームと本格的な味わいの洋食ランチ
『ぶどう亭』の料理のコンセプトは、昔ながらの洋食。週替わりのランチは、メインとサラダ、ライス、味噌汁という満足感のあるメニューだ。値段は創業当初から30年以上変わらず850円で提供し続けているという。
夜の営業では、ワインを中心にお酒が豊富に揃い、お酒に合う和洋のメニューをおつまみから手の込んだ料理まで幅広く提供している。
週替わりのランチの他に、定番のサービスランチ定食を常時10種類ほど用意。全品にサラダ、味噌汁、ライスが付いて850円だ。ライスは無料で大盛りに変更でき、さらにプラス150円でおかわりができるのもうれしい。
定番のサービスランチ定食は、ビーフハンバーグ定食、シーフードフライ、カジキマグロステーキ、ラム肉ジンギスカンなど、幅広いラインナップから選べるため、お気に入りのメニューを見つけてはどうだろう。いずれも空腹時にガツンと効く、ボリュームたっぷりのメニューだ。今回は、この定番の中からハンバーグステーキ・エビフライ定食を注文!
メインの一皿は、大きなハンバーグとエビフライ2本に、山盛りの千切りキャベツが添えられ、迫力のボリューム。ハンバーグの種にはビーフを使用し、味付けには味噌などの隠し味を入れた手作りだ。デミグラスソースは、『ぶどう亭』創業以来の特製のもの。牛骨、鶏ガラ、牛すじ、玉ねぎやセロリ、パセリといった香味野菜などの材料を、2週間ほど火を絶やさずに煮込んで作るという。
肉汁がジュワッとあふれ、たっぷり入った玉ねぎの甘みを感じるやわらかいハンバーグと、スパイシーでフルーティーな香り高いソースが相性抜群。揚げたての大きなエビフライはサクサクで、こちらもデミグラスソースがよく合う。山盛りの千切りキャベツを合いの手に、あっという間に完食してしまうおいしさ。
付け合わせのお酢が効いたサラダは箸休めにちょうど良い。また、ワカメと豆腐の入ったオーソドックスな味噌汁とライスは、日本らしい洋食という安心感があり、メインと共にスッキリおなかに収まっていく。
おなかを空かせた若者やサラリーマンの喜ぶ顔が目に浮かぶ昔ながらの正統派の洋食。おなかと心が満たされ、午後に向けてパワーチャージできるランチだ。
昔ながらの料理と良心的なサービスで、地域で愛され続ける店づくり
お店を続けていく中で大切にしているのは、昔から来てくれる方に愛され続ける店づくり。メニューや味、店の雰囲気を大きく変えずに、どこか懐かしい昔ながらの洋食店を目指してきたという。
また、創業時からランチの価格を変えていないという点から、太っ腹なサービス精神が伝わってくる。少しずつ工夫を加えながらも、学生が気軽に訪れることができる店という魅力は変わらない。
店長の西村さんの今後の目標は、「通ってくださるお客さんを満足させられるお店でありながら、新たなお客さんも訪れてくださる店にしていきたい」とのこと。そのためにも、従来のメニューにオリジナルの要素を加えて、新たな料理を考案しているという。
いつ訪れても変わらないあたたかい雰囲気で迎えてくれる『ぶどう亭』。料理の魅力はもちろん、客に喜んでもらいたいという2人の真心のこもったサービス精神が、訪れる人を安心感と満足感で満たしてくれるお店だった。
取材・文・撮影=菊地翔子