お話を聞いたのは 気象予報士 佐々木聡美さん
宮城県生まれ千葉県育ち。2006年に気象予報士資格を取得。気象キャスターとしてTBSラジオ、NHKラジオなどに出演。趣味は野球観戦と散歩。好きな雲はわた雲。ウェザーマップ所属。

散歩日和の空

「統計的に“散歩日和”が多いのは初夏(5・6月)と秋(9・10月)。今の時季はおすすめです」と佐々木さん。まずはその際に見られる代表的な雲を挙げてくれた。ちなみに天気予報で耳にする「雲一つない青空」が見られるのは年間たったの30日ほどで、それも冬場に多いという。今後夏にかけては雲を楽しむのが吉、のようだ。

状況にもよるが、雲は概して移ろいやすく、ほんの数十分で、“○○に見える”雲もその姿を変えてしまう。おだやかな空に浮かぶかわいらしい綿雲、青空に浮かぶ海の上ならではの細長い雲など、時と場所に応じて、その刹那的な姿を探し、愛でてみるのもいいかもしれない。

すじ雲

ハケでさっとはいたような雲。天気の崩れはしばらくない。
ハケでさっとはいたような雲。天気の崩れはしばらくない。

うろこ雲

高い空に出る雲。小指で隠れるほどの小ささ。急な天気の崩れはない。
高い空に出る雲。小指で隠れるほどの小ささ。急な天気の崩れはない。

ひつじ雲

低い空に出る雲で人差し指で隠れないほどの大きさ。天気は下り坂。
低い空に出る雲で人差し指で隠れないほどの大きさ。天気は下り坂。

西の空の観察眼を鍛え、雨を味方につけるべし

初夏から夏にかけて、東京を含む関東では降水量が増える時季。攻略法はというと、「まずは西の空を見ることです。次の天気がわかります」。目視できる範囲の天気は、明日、いや数十分、数時間の我が身。「空は西から東へと移り変わる」という大前提をわきまえることが重要だ。晴天時、西にかなとこ雲と呼ばれる積乱雲を見つけたら豪雨の知らせ。一旦退避を。しかし雨の前兆は、彩雲やハロ(太陽や月を中心とした光の輪。暈か さ)などレア空が現れるチャンスでもある。

一方で悪天候時、西が明るくなれば、晴れは間もなく。虹やグラデーションの美しい夕焼けが狙えて……。と、目まぐるしく変わる空は、いつだって見どころだらけ。西の空の観察眼を鍛え、雨を味方につければ、さまざまな空に出合うことができるだろう。

夏の季節に注目の空

かなとこ雲

この真下は豪雨! 早めの避難を。“ラピュタ雲”とも呼ばれる。
この真下は豪雨! 早めの避難を。“ラピュタ雲”とも呼ばれる。

彩雲(さいうん)

太陽の近くに雲がかかっている時に光の屈折で出現するレア雲。
太陽の近くに雲がかかっている時に光の屈折で出現するレア雲。

晴→雨→晴のタイミングが狙い目。太陽の反対側を要チェック!
晴→雨→晴のタイミングが狙い目。太陽の反対側を要チェック!

夕焼け

雲が残る雨上がりには、赤のグラデーションがきれいに見える。
雲が残る雨上がりには、赤のグラデーションがきれいに見える。

探してみたい空

層雲

海上でよくみられる。海沿いでは陸と異なる雲が現れることも。
海上でよくみられる。海沿いでは陸と異なる雲が現れることも。

ハート型の雲(積雲)

「曇りのち晴れ」の日は面白い雲の形を見つけるチャンス!
「曇りのち晴れ」の日は面白い雲の形を見つけるチャンス!

わた雲

おだやかな日に浮かぶ、モコモコとした雲。水蒸気を多く含む。
おだやかな日に浮かぶ、モコモコとした雲。水蒸気を多く含む。

「地震雲など科学的な根拠のない名前がつき恐れられているものもありますが、そもそも“雲”という字は空に浮かぶモヤモヤしたものを表した象形文字。変わった雲を見つけたらラッキーという感覚で、身近にポジティブに感じてほしいです」と佐々木さん。

季節や空の移ろいを感じ、自分の好きな雲を探しに外へ出る。そんな時間もいいかもしれない。さあ、見上げてごらん、今の空を。

取材・文=町田紗季子(編集部) 写真提供=佐々木聡美
『散歩の達人』2020年6月号より