普段は近所、そして主に東京を散歩圏として暮らしている。だからあえて、本で遠征。世界中を旅している気分になれるものをセレクトした。散歩や旅のお供には、短編がいい。本の世界に引き込まれすぎず、ほぼよくいつもとはちょっと違う目の前の世界に浸れるから。街を歩くには、行き当たりばったりもいいけれど、事前の妄想が案外もっといい。未知との遭遇に、期待するしかないから。
不思議なもので、本で遠くへ行けばいくほど、全ての思考が自分に近づいてくる気がする。縁がなさ過ぎるからだろうか、なんとか捉えられる範囲で解釈しようとして、通常とは違う回路で心が動く気がする。そんな非日常の経験だって読書なら簡単。地に足のついた毎日の散歩を楽しむためにも、ふわふわとした異国のどこかを漂う散歩本、いかがでしょうか。
『旅の窓』沢木耕太郎 著
「誰かの日常」を見つめた81編の物語
風景をぼんやりと眺めていると、ふいに何かを思い出したりする。旅は自分自身を見せてくれる心の窓。本書は、そんな「窓」との出会いの瞬間を切り取った写真とエッセイからなる一冊。世界のどこかのとある街角。その向こうに、私たちは一体何を見るだろうか。2016年/幻冬舎刊
『さがしもの』角田光代 著
本は歩く。自分も歩く。だからこそ出合いは愛おしい
大学時代に東京で売ってしまった本。それには自分のものとわかるマークがあって、もしもそのマークをネパールの古本屋で見つけたら――。本は読み手をここではない別世界に連れて行ってくれるものだと述べる著者。別世界に旅先=別世界で出合う楽しみを、ぜひ。2008年/新潮社刊
『The World: A Traveller's Guide to the Planet』
いまこそ2020年地球の旅へ――
旅行ガイドブックでおなじみ、ロンリープラネットがまとめた一冊。221の国と地域を、色彩豊かなビジュアルなどで紹介している。気候や食文化をチェックし、マップで移動プランを考えるだけで心が躍る。英語が読めなくても大丈夫。世界はただただ美しいから。2014年/Lonely Planet刊
ついでにもう一冊!「ぶらぶらミュージアム」大田垣晴子 著
異国情緒にたっぷり浸ったあとは、ミュージアムさんぽなんてどうでしょう。場所も時間も飛び越え、貴重な品々を見せてくれるミュージアムが、首都圏には驚くほどたくさん。本だけではなく、物から遠くに思いを馳せるもの、なかなかいいものです。本書では数ある中から選りすぐりの45軒をイラストで紹介。なお著者の大田垣晴子さんは現在、月刊『散歩の達人』で「ぶらぶら親子さんぽ」を連載中。親も子も楽しめるスポットを訪ね歩いています。しかしお子さんの成長ぶりには目を見張るばかり。近所のおばさんお姉さんのような気持ちで、楽しく真剣にぶらぶらしてます。こちらもよろしくです。
文・撮影=町田紗季子