ちゃんこに豚骨を使用。他店では真似できない味

豚骨が使用された、ちゃんこのスープ。
豚骨が使用された、ちゃんこのスープ。

相撲は手をついたら負けになるため、ちゃんこには四足歩行で手をついて歩く豚や牛ではなく、手をつかない鶏をメインに使用するのが通常である。

しかし、『ちゃんこ霧島』では開業者である霧島さんが九州出身であることから、豚骨や柚子胡椒を使用したスープを提供。豚骨を入れることでコクのあるちゃんこが完成し、2024年には開業26年を迎える、両国を代表するちゃんこ店の一つとなった。

開業者である、元大関・霧島。
開業者である、元大関・霧島。

元々、行徳でちゃんこ店を1~2年ほど営業。両国に相撲部屋を持つにあたり、今のお店があるビルにたまたま空きが出たことから両国へ移転を決めた。

当時2フロアだったお店は、現在8フロアまで拡大し、ビル1棟全てが『ちゃんこ霧島』のフロアとなっている繁盛ぶりだ。

「コロナなどの影響で閉店するお店もある中、ここまで拡大ができたのは、元大関・霧島の人気っぷりもそうですが、やはりコクのある鶏ガラ豚骨スープが決め手だったと思います」と、フロアマネージャーの黒井さんは話す。

癖になる辛みのあるスープ

陸奥部屋直通ちゃんこ鍋、霧島味3520円。
陸奥部屋直通ちゃんこ鍋、霧島味3520円。

鶏ガラ豚骨スープというだけあり、まるで豚骨ラーメンのような香り。食べてみると、柚子胡椒がとてもいいアクセントとなっている。ゆずの味がしっかりしているだけでなく、辛味があっておいしい。店によっては肉ちゃんこ、魚ちゃんこと、肉と魚を分けている所もあるそうなのだが、ここでは両方入れた方が良い出汁が採れると、どちらも入れているのだそう。

また、具材にはチンゲンサイや、もやしなど、シャキシャキとした食感の野菜が使用されており、これは開業者である霧島の好みを反映したものなのだとか。

フロアマネージャーの黒井さんによると、“これが入っているからちゃんこ鍋”という定義はなく、“ちゃん”(親=師匠)と“こ”(子=弟子)をつなぐ食事という、意味の由来を考えると、イタリアンだろうが、フレンチだろうが、お相撲さんが作ったものは全てがちゃんこ。

今では日本人以外のお相撲さんも増え、トマト味やチーズを入れた鍋など、現代風のちゃんこが相撲部屋でも食べられているのだと教えてくれた。

色鮮やかな具材が使われたちゃんこ鍋。
色鮮やかな具材が使われたちゃんこ鍋。

ちゃんこと言えば数人で囲って食べる物だが、『ちゃんこ霧島』では一名で来店した場合に限り、具材たっぷりの一人前ちゃんこが注文できるのもうれしい点だ。

そして鍋といえば、〆に何を入れるのかも楽しみの一つ。種類は雑炊、うどん、餅、ちゃんぽん麺と複数あるのだが、コクのある豚骨鶏ガラスープということもあり、やはりここはちゃんぽん麺を食べたいところ。だが雑炊も捨てがたい。次回のお楽しみが尽きず、何回でも店を訪ねてしまう。

お刺し身や牛すじ煮込みなど、豊富なメニュー。
お刺し身や牛すじ煮込みなど、豊富なメニュー。

『ちゃんこ霧島』では、牛すじ煮込みの他、刺し身や、鮭といくらのちゃんこおにぎりなどもある。お気づきの方もいるだろう。そう、鮭(親)・いくら(子)と、おにぎりの具でさえ、ちゃんこの由来が反映されているのだ。

相撲好きには最高の店内

相撲色に染まった店内。
相撲色に染まった店内。

今や8フロアもある店内は、大関時代の霧島をはじめとした相撲に関する写真や記念品などが、各部屋に置かれている。

次に通される部屋は何があるのか? 食事だけでなく、毎回そういった装飾の違いも楽しめそうだ。

断髪式で切られた本物の大銀杏。
断髪式で切られた本物の大銀杏。

さらに、お店では元大関・霧島と交流できることもあるのだとか。相撲好きにはたまらない場所だ。コロナ前に比べ、来店する頻度は減ってしまったものの、今でも時々顔を出しているのだとか。

そして、2019年以来の開催となる“にぎわい祭り”(2024428日〜29に、『ちゃんこ霧島』も出店する。

両国にある複数のちゃんこ店が出店し、一杯500円とお手頃価格で色んなちゃんこを堪能することができる貴重なイベントだ。興味があれば、是非足を運んで『ちゃんこ霧島』の味を楽しんでほしい。

住所:東京都墨田区両国2-13-7/営業時間:11:30~14:00LO・17:00~21:00LO(土・日・祝は11:30~21:00)/定休日:月・火/アクセス:JR総武線両国駅から徒歩1分

取材・撮影・文=SUI