コアなファンを持つ2つの麺を引っ提げて東京へ

昼夜問わず、のんびりとした雰囲気もある目黒銀座商店街。商店街に面したシックな店構えと大きな提灯が目をひくのが『新潟三宝亭 東京ラボ中目黒店』だ。新潟県を中心にラーメン専門店や中華レストランを展開する三宝グループが運営している。

1967年に中華飯店としてスタートした三宝グループ。新潟以外にも東北地方などにもお店を展開しているが、創業50年が目前だった2015年、満を持して東京に出店することに。「競争の激しい都内で存在をアピールするには」と考えた末に、数多いメニューから2つの麺を主力に据えたのだ。

酸辣湯麺1100円。丼も冷めにくいものを使用している。
酸辣湯麺1100円。丼も冷めにくいものを使用している。

酸辣湯麺は、新潟の店舗で期間限定のフェアメニューという位置付けで提供されていたメニュー。誰もが頼むタイプの商品ではなかったが、提供期間が終わるたびに「終わらせないでほしい」という強いリクエストが届くほど、熱烈なファンが少なくなかったとのこと。全とろ麻婆麺も同じく根強い人気を持つオリジナル麺だ。

ラボの名前の通り、硏究麺と呼ぶ期間限定メニューを提供するのもこの店の特徴。常時1~2種類あって、寒い時期には渡り蟹の鍋焼き味噌ラーメン、夏は冷やし坦々麺などがこれまで人気を博した。

調理人自ら毎日食べるほど。丁寧に作る酸辣湯麺

酸辣湯麺が好物だと話すのはスーパーバイザーを務める田村大地さん。店では調理も担当する田村さんは、ほぼ毎日酸辣湯麺を食べているというから驚く。

「特別なものは使っているわけではありませんが、手間と技術が味の秘密ですね。オーダーが入ってから、下ごしらえした野菜と豚肉を油通しするなど、一杯ずつ手をかけて作っています」

酸辣湯麺といえば酸っぱさと辛さの融合、そしてとろみのあるスープが特徴だ。『新潟三宝亭 東京ラボ中目黒店』でも胡椒や山椒、自家製辣油といった辛みのある素材と、酸味が柔らかなお酢をスープに加えている。

小麦の味がしっかり感じられる丸い中細麺はもっちり。酸辣湯麺と全とろ麻婆麺のためだけの専用の麺で、とろみのあるスープが絡んでも切れることがないようにとコシが強め。北海道産の小麦だけを使って新潟にあるセントラルキッチンで作られている。麺は毎日のように送られてきて、店舗でもしっかり管理。その日の状態によって、茹で時間も調整しているのだとか。

トッピングの白髪ネギとパクチーのほか、具は幅の揃った細切りのたけのこ、肉、しいたけ、そしてとろりとした卵。どれもこれも麺とスープと共に流れるように口の中に入ってくる。麺が少なくなるとレンゲですくって具を食べるものだから、酸っぱさと辛さで身体が温まる。決して辛すぎることはないが、身体を目覚めさせてくれるような一杯だ。

味変に欠かせない卓上調味料が、なんと7種類も!
味変に欠かせない卓上調味料が、なんと7種類も!

テーブルの上には、7種類もの卓上調味料が置かれているので、味変しながら食べても楽しい。有料で辛増し1から激辛まで4段階に辛さを増すことも可能。何度か通って自分の好きな味を見定めた常連客は、辛増し1か2を注文する人が多いそうだ。

新潟自慢のコシヒカリを毎日精米!女性が一人でも入りやすい店に。

店では、新潟の味も推している。隠れた名物メニューが米どころらしい新潟のライスだ。

「他にこんな米を出すところはないと食べるたびに思います」と田村さん。米は地元の契約農家から、減化学肥料と減農薬で育てたコシヒカリだ。その玄米を毎朝精米している。精米したてのコメを、さらにしっかり吸水させて炊いたライスは、口に入れた瞬間はさっぱりしているのに、噛んでいると甘みが感じられる。

かがやく米が美しい。
かがやく米が美しい。

店内は落ち着いた雰囲気で、カウンター席がメイン。女性の一人客も入りやすい上に、ランチタイムが遅い近隣で働く人たちに向けて、ランチのラストオーダーは15時。開店前には行列ができることも多い上に、ラストオーダー直前でも店内はにぎわっている。

夜は定番の麺に加えて、定食もあれば、貝柱入り焼売やおつまみ排骨(パイコー)つまみに新潟のお酒が4種類飲み比べられる利酒セットも用意。新潟の味を中目黒に浸透させてきた。

夜は2〜3人のグループでお酒を飲む人も多い。
夜は2〜3人のグループでお酒を飲む人も多い。

現在、東京でこの味が食べられるのは中目黒店だけ。あまりに好評なため、いわば逆輸入として新潟にも同じ業態のお店が誕生したほど、三宝グループでも期待されている。新潟発の中目黒で愛される味。辛い麺が好きな人はぜひ訪れてほしい。

住所:東京都目黒区上目黒2-44-5/営業時間:11:30~15:30・17:30~23:30(土日祝は11:30~23:30)/定休日:無/アクセス:東急電鉄東横線・地下鉄日比谷線中目黒駅から徒歩6分

取材・撮影・文=野崎さおり