いざ、魅惑の二刀流スポット『根津美術館』へ

なんか、すごくしれっとエッセイを更新しているのですが、実は「全4回で!」とお話をいただき前回ちょっと締めっぽい文章も書いたこの「アンゴラ東京めぐり」が奇跡の第5回目を迎えました。ええっ!? なんで!?? まさかの先の世界に来られました……!

あの、人間には第五感までしかないと思っていたところに「第六感」が出現したときの「知らなかった先まだあるの!??」となる、あの興奮がありました……! これは確実に今読んでくださっているあなたのおかげです! もしあなたが「自分なんて……」と思ってしまう夜があったら「でも自分が読んだからアンゴラ村長のエッセイも延長されたんだし……」と自分のおかげで成り立っていることもあるのだと糧にしてくださいね。ありがとうございます!

 

そんな奇跡の第5回は、庭園へ行ってみたいと思います。

今回は東京・表参道にある『根津美術館』へ行くことにしました。

ここはなんと、美術館と庭園、どちらも楽しめてしまう魅惑の二刀流スポットらしいのです。さらに庭園の中でカフェを楽しむことができます。正直もうこのカフェが決め手でした。東京には数多の庭園があるのですが、カフェがあると聞いたらここに来るしかありません。

そんな『根津美術館』。どんなところなのか、公式サイトを見てみます。

『根津美術館』は、根津さんが日本や東洋の古美術品を保存したり、展示するために造ったものらしいのです。やっぱり根津さんでした。私も、もし自分が新しい星とか新しい昆虫を発見したら自分の名前を冠したいタイプなので「分かる〜!」と共感しました。

そして庭園は、土地の起伏を気に入った根津さんがここだ!と作ったそうです。正直この経緯にはかなりビビりました。今まで29年生きてきて、土地の起伏に何かを思ったことがなかったからです。「うわ! あそこなんかボコッとした後にスッ……っとへこんでる……!庭園にしたらヤバイじゃん……!」そんな感性を持って土地を見られたらどんなに豊かだったでしょうか。根津さんと、あとはスケボーをする方は持っている感性かもしれないです。

 

『根津美術館』は表参道駅から歩いて8分のところにあります。

駅から目指して歩いていくと、そこはたくさんのハイブランドなお店が軒を連ねていました。コムデギャルソン、HOMME PLISSE ISSEY MIYAKE、ISSEY MIYAKE、PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE、ミュウミュウ、ステラマッカートニー、me ISSEY MIYAKE……

まさかの、1つの道で4種のイッセーミヤケを目の当たりにしました。「4種の」ってチーズがのったおいしいピザでしか使ったことがないので、なんかすごいピザの気持ちにされました。みなさんも行く際はピザの気持ちにされないよう気をつけてください!

プリキュアみたいな緑の中を歩いていると

そうして、コーラ片手に『根津美術館』にたどり着きました。

これは……! 入り口から圧巻でした……!

『根津美術館』のエントランスの壁は、一面が竹でズラリと装飾されていたのです。しかも驚くことに、そんな壁の向かい側には、今まさに生を全うしている竹が対峙するように生えていたのです。

「何かを、考えさせようとしてるのか……?」

そう思わされる対比でした。

根津美術館八景の一つ、「月の石船」。
根津美術館八景の一つ、「月の石船」。

もう収穫され飾られている竹と今まだ土から青々と伸びている竹……。その間にある、まるで竹専用の三途の川みたいな道を歩き美術館へと誘われます。

そうして本館に入ると、そこには5つの違ったコンセプトの展示室がありました。そこでは国宝をはじめたとしたすごいやつをたくさん見ることができます。私は特に中国からやってきた青銅で作られた展示品にワッと心奪われました。あの、青緑がかった銅の「教科書で見たやつだ……!」の興奮は見た人間の心を簡単にタイムスリップさせます。……と、美術館ももちろんすごく良かったのですが、今回は庭園をメインに目指してやってきたのであまり書きません……! ここでもう別れを告げてしまいますね!

そうしてやっと、庭園に足を踏み入れました!

すると一瞬で、視界全てが色んな緑で埋め尽くされました……! 赤ちゃんのような柔らかい葉っぱの若い緑だったり、硬くしっかりした葉の暗くて深い緑だったり、太陽に照らされた黄色がかった緑だったり……なんかあの、プリキュアって歴代でいろんなピンク色の髪のキャラがいるんですが、一括りにピンクじゃなくて1人1人個性や奥行きがもちろん違うと思うんですけど、そんな感じの緑でした。そんな感じの緑でした?

とにかくそうしてプリキュアみたいな緑の中を歩いていると、ドドンッ!と大きくてゴツゴツした石像がいくつも点在していることに気づきます。というか、気づかざるを得ないというほどの存在感で、庭園を彩るにしては個性がありすぎます。見てみると、石像の横には「石造宝篋印塔 日本 南北朝時代 14世紀」とあり、なんと歴史的な美術品が外に置かれていたのです……!

石造宝篋印塔。
石造宝篋印塔。

「石造宝篋印塔」を知っているわけない人生を歩んできたので調べます。これは信仰の塔や墓石として作られていたものらしいです。ちょっと、カルチャーショックです……。やはり700年も前にできたものって手厚く保護されるべきだと思っていたので、こうして外に置く度胸にビックリします……。いや、でもそもそもが外にあるものだから、外に飾ることがむしろ歴史に敬意を払っていることになるのか……?とも思ったのですが、他にも「如来坐像」だとか、なんか大事そうな美術品がたくさん庭園に置かれまくっていました。でも、ありがたいなあとも思って、なんというかこういう自然の中に突然ズンッ……と無骨で精巧な美術品が現れる「異世界感」って体にズンッとくるものがあって、この、何かの物語の入り口に立っているような景色は他では味わえないなあと思いました。

あまりに雅です……!

庭園って、こんな風に好きに見ていけばいいんでしょうか? でも、ありがたいことにパンフレットがあったので見てみます。するとここの主な見どころとして、茶室が4つと、根津美術館八景なるものが挙げられていました。

なんとなく名前で惹かれた茶室「閑中庵・牛部屋」を見に行ってみます。散歩道にはみ出してくるほどのあふれる緑の中を歩くと、建物が見えてきました。

茶室「閑中庵・牛部屋」。
茶室「閑中庵・牛部屋」。

それは木と竹でできたこぢんまりとした建物でした。いや、本当に木でできているかは分からないんですが、素人が見て木でできていると思うニュアンスの家でした。 4畳と8畳の部屋がくっついたような形で同棲しているカップルの仲が良ければ4年は住めそうな広さです。

ここで、お客さんを招いてお茶を飲んでいたのでしょうか……! 雅……! あまりに雅です……!

お茶のふりしてドリンクバーでよくやるメロンソーダとファンタを足したやつを振る舞ってもギリ雅になってしまうと思います。雅に凌駕されると思います。

 

他の茶室も見に行ってみました。するとどこも木のニュアンスの質素な茶室だったのですが、例えば「披錦斎・一樹庵」は茶室のまわりを囲むように紅葉が植えられていました。「絶対に秋はこの茶室をメインで楽しんでるじゃん……!」と、慄(おのの)きました。季節の移り変わりによって楽しめる茶室が違うように工夫されているようでした。ちょっと自由ってこんなに大規模だったか……? 私にとっての季節って向こうから勝手に来るものだったのですが、この茶室は季節を良い状態で迎えられるように待ち構えているみたいなスタイルで、ちょっと素敵すぎて驚きました。

 

あ、あと、とても感動したのは根津美術館八景の中の「薬師堂の竹林」です……! まさか表参道に竹林があるとは……! そういえば最初に竹専用の三途の川がありましたが、あの竹はもしかしたらここにつながるプロローグだったのかもしれません。

この竹林、実際すごくヤバイかなりとてもハイパー良かったです…………!!! 自分の持てる副詞の全てを詰め込みたいほど……良かったです……!!!!!

まず、デデンッと鎮座する薬師堂があって「これが趣か……」と思わせてくる迫力が良かったのですが、竹林はその左にありました。

本当にそこだけで京都……となり良かったです……! 竹林の持つ雰囲気、癒やし、静かさってこんなに人の心を京都にさせるんだと思いました。例えばですけど、この竹林で浜崎あゆみさんとすれ違っても全く騒がず、浅く会釈して終われる自信があります。この竹林の持つ癒やしのマイナスイオンが、人の心拍数を60以上にさせるわけがないのです。でも、そこまで長い竹林ではなくて6メートルくらいで折り返すU字ではあったんですが、なんでか心をシン……とさせるオーラのある空間でした。疲れたら来よう……! そう誓うくらいお気に入りスポットになりました。

 

それから「天神の飛梅祠」も良かったです!

これはなんと学問の神様・菅原道真の「飛梅伝説」を踏まえて名づけられているのだそうです。「飛梅伝説」とは、左遷されてしまった道真を慕った梅が一夜にして道真のいる太宰府まで飛んでいったという伝説です。私はこの伝説の、人と木という、生まれを超えた信頼がすごく好きで高校の授業で聞いたときから覚えていました。まさか好きな話にまつわる祠を見られるとは、すごくうれしかったです!

偏差値が上がるようで良かったです

そして、全てのオススメスポットを歩き回った後は楽しみにしていた「NEZUCAFE」です! もともとカフェがあるからと『根津美術館』へ来ることを決めていましたが、入る頃にはもう庭園でお腹いっぱいになるくらい楽しめていました。でも、結局やっぱり実際カフェはすごく良かったです。この世にはテラス席だとか夜景の見える席だとか……素敵な席ってたくさんあると思うのですが、あの日確実に庭園のカフェ席も追加されました……!

カフェは、どうやって天井を支えているんだろうと思うくらいのガラス張りで、太陽が気持ちよく降り注ぐ中でアイスコーヒーを飲むことができました。店の中にいるのに外にいるような解放感でした。

ちょうど私が座った席からは、生い茂る緑の奥から、突き抜けるようにビルがそびえ立っているのが見えました。もうすでに高いのにそのビルはまだ高みを目指しているらしく屋上には赤いアームが伸びていて工事の真っ最中でした。「自然」と「人工」という相反する2つが混在する風刺画のような景色を見ながらコーヒーを飲むと、喉を通るごとに偏差値が上がるようで良かったです。

庭園の楽しみ方

庭園って、結局なんなんでしょうか……? そんな気持ちを持って行ってみたところ、もしかしたら自分をぶつけに行く場所なのかもなとカッコいいことを思いました。例えば、遊園地のジェットコースターに乗ったとき「自分で楽しさを見つけないと!」とはならないはずです。向こうがスリルを用意して待っていてくれているのです。

でも、庭園はただそこにあって「自分はどう思うか?」など、今の自分の気持ちが浮かんでくる場所のような気がしました。疲れていたらただ緑に癒やされてもいいですし、美術品をゆっくり眺めても良いわけですし、自分の外殻から知れる自分もいるかもしれません!

 

ではまた来月、奇跡を超えたミラクルの第6回でお会いしましょう!

文=アンゴラ村長(にゃんこスター)

ただいま、にゃんこスターのアンゴラ村長がさんたつにて全4回の連載をしています。第3回の今回は、川に委ねてみよう!な回です。なんか、灯籠流しみたいですね!いや、まだそんなこと思えるほどのヒントが一つもないですね!すみません!
明治神宮と代々木公園。広大な緑の空間を楽しんだらケヤキ並木の表参道へ。青山エリアでは彫刻や絵画、陶磁器、写真など芸術を楽しもう。青山霊園の桜並木から明治神宮外苑いちょう並木を歩いて聖徳記念絵画館へ。近くでは新国立競技場も完成した。