青山を皮切りに国内4店舗を展開する『Café Kitsuné』

表参道駅を出て、おしゃれすぎるアパレルショップやフラワーショップ、カフェなどを横目に歩くこと4分。人気アパレルブランド『Maison Kitsuné』が運営するカフェ『Café Kitsuné Aoyama』に着いた

パリの一角にありそうな和のテイストを盛り込んだカフェ。
パリの一角にありそうな和のテイストを盛り込んだカフェ。

2013年、第1号店としてオープンしたのがここ青山で、2014年にはパリ1区にあるパレ・ロワイアルの中庭に開店。以降、韓国、アメリカ、イギリス、中国、タイ、インドネシア、カナダ、カタールと世界に18店舗を展開。日本には青山、渋谷、京都、岡山の4店舗を擁する。

この立て看板が目印だ。
この立て看板が目印だ。

「2013年に1号店の『Café Kitsuné Aoyama』(以下、青山店)がオープンしました。最初はすごく狭くて、コーヒースタンドくらいの広さしかなかったんですが、2019年末、くつろげるスペースがあるここへ移転してきました。『Maison Kitsuné』はちょうどこの裏手にあります」と話すのは、PRの塚本美樹さん。

『Kitsuné』は2002年にジルダ・ロアエックさんと黒木理也(まさや)さんが立ち上げたブランド。有名になったきっかけはアパレルブランド『Maison Kitsuné』だが、最初は音楽レーベル『Kitsuné Musique』からスタートしたという。

入ってすぐのところにあるカウンターの隅にキツネ様が店を守っていた。
入ってすぐのところにあるカウンターの隅にキツネ様が店を守っていた。

「ジルダさんはパリのエレクトリカルミュージックデュオ、『ダフト・パンク』のマネージャーだったんです。彼らがツアーで日本に来ることになって日本語通訳として同行したのが、当時からジルダさんの友人だった黒木さん。そのとき日本でセレクトショップを見かけました。パリに住んでいた2人にとって、服だけでなく生活雑貨が売っている光景が珍しかったそうです。パリでもそういう店をやってみようと、レコードレーベルを運営する傍ら、Tシャツなどを販売したのが始まりなんですよ」。

へえー、そうだったのか! さまざまなフィールドで独自の世界観を表現する彼ら。カフェもそのひとつなのだ。

日仏のマインドが融合し、洗練された店内。
日仏のマインドが融合し、洗練された店内。

「フランスを歩いていると本当にカフェがたくさんあるんです。フランスの人たちにとってカフェは友人たちと話したり、本を読んだり、お店の人と喋ったりする場所なんですよね。それを日本でも作りたいという2人の思いがあるんです。そういう場所にしてほしいから店内ではパソコンを使うのは禁止にしているんです」と塚本さん。

外国人のお客さんも多く、あちらこちらでいろんな言語が飛び交っていた。確かに話しをしにくるカフェって日本にはないかもな。

店内の厨房で作られるケーキと岡山のロースターで自家焙煎するコーヒー

メニューにはこだわりのコーヒーをはじめとしたドリンクにスイーツ、軽食を用意。バゲットサンドイッチや日本風のチーズケーキ、キツネの形をしたサブレなど、ブランドのルーツであるフランスと日本からヒントを得たメニューを提供している。

パリでは定番のハムとチーズをバゲットに挟んだパリジャンサンドイッチ(右)と、アボカドトースト(左)。
パリでは定番のハムとチーズをバゲットに挟んだパリジャンサンドイッチ(右)と、アボカドトースト(左)。

そのほかにある国や都市でそれぞれ名物メニューが楽しめる。クロワッサンサンドは日本のオリジナル、バゲットのサンドはフランスにもよくあるメニューだ。コーヒーは岡山にある自社ロースタリーで厳選したコーヒー豆を焙煎したものを使用するこだわりだ。

「最近は各店限定メニューを出すようになりました。なかでも青山店は1番メニューが多いんです。というのも、パティシエが常駐していて、厨房でできたての生菓子や焼き菓子を提供できるので。人気のキツネサブレはおみやげとして購入する人も多いんですけど、1枚から購入できるのでケーキの上に乗せて食べる方も増えています」。

キツネサブレはプレーン、抹茶、チョコの3テイストを展開。その場で食べられるバラ売り(1枚400円)もあり。
キツネサブレはプレーン、抹茶、チョコの3テイストを展開。その場で食べられるバラ売り(1枚400円)もあり。
店内で焼くクロワッサンのサンドイッチやケーキはシンプルで万人に好まれるテイスト。
店内で焼くクロワッサンのサンドイッチやケーキはシンプルで万人に好まれるテイスト。

というわけで、オープン当時からあるショートケーキ900円と、人気のキツネブレンドロールケーキ600円をオーダー。ドリンクは温かいカフェラテを選んだ。

ブラジルとグァテマラの中煎り豆のエスプレッソを使ったカフェラテは、スイーツにも食事にも合う。
ブラジルとグァテマラの中煎り豆のエスプレッソを使ったカフェラテは、スイーツにも食事にも合う。

「生クリームに練乳を混ぜているので軽い食感のクリームです」と塚本さん。スポンジの間にもスライスしたイチゴが入っていて、どこを食べても“当たり”な得した気分。苦味がありつつ、酸味がアクセントになっているカフェラテにもぴったり。

ラウンド型のショートケーキはどこを切ってもイチゴとクリームが入っていてうれしい。
ラウンド型のショートケーキはどこを切ってもイチゴとクリームが入っていてうれしい。

キツネブレンドロールケーキは、シンプルに見えて手が込んでいる。「中に入ってるクリームの色が違うところは、エスプレッソのクリームなんです。白クリームは生クリームにコーヒー豆をひと晩漬けて香りをつけているんですよ」と塚本さん。ほほう! しかもしっとりとした生地はカラメル風味で苦味と甘さがいいバランスだ。

コーヒー風味のクリームとほろ苦いカラメル味の生地で大人のテイストのロールケーキ。
コーヒー風味のクリームとほろ苦いカラメル味の生地で大人のテイストのロールケーキ。

ケーキが2つなので飲み物が足りないかも。すると、塚本さんが抹茶ラテをすすめてくれた。香りのいい抹茶の香りと濃厚なミルクが混ざり合い、ほんのりやさしい甘さがいい。「青山店と渋谷店では八女茶の抹茶なんですが、京都店は宇治抹茶なんですよ。若干味が違うので旅行で京都に行ったら飲んでみてください」。

抹茶の香りとほどよい苦味がミルクに溶けている抹茶ラテ900円。
抹茶の香りとほどよい苦味がミルクに溶けている抹茶ラテ900円。

なお、スイーツやフード、ドリンクなどは3か月に1度シーズナルメニューが登場するからいつ行っても飽きない。

日本とパリを融合したトラディショナルでシンプルさを表現

抹茶ラテを飲みながら店内を見渡すと、神社の本殿にあるような格子天井だったり、壁には飾り建具が施されているなど和風のテイストも感じる。

天井は市松模様になっている。
天井は市松模様になっている。
日本らしい漆喰と木の質感に、パリらしい黒のイスがアクセントになっている。
日本らしい漆喰と木の質感に、パリらしい黒のイスがアクセントになっている。

「黒木さんは、フランス育ちの日本人なんです。ルーツは日本なんですけどマインドはパリなのでしょう。どちらの要素もバランスよく取り入れている様子が、店内の設計に現れています。壁際の席は座面が畳になっているんですよ」。

ホントだ! そのほかの黒いイスは、フランスのカフェなどでよく使われているメーカーのものだそう。ベーシックでトラディショナルなスタイルは、そのほかのプロダクトにも通じるものを感じる。

店内でも使用しているカップやタンブラーをはじめ、文房具や生活雑貨も販売。
店内でも使用しているカップやタンブラーをはじめ、文房具や生活雑貨も販売。

おみやげや自宅用にと人気のロゴ入りアイテムがたくさん揃っている。さりげなく生活に取り入れたら、オシャレ度が上がること間違いナシ! カフェ好きの友達にもシェアしてあげよう。

構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢