シングルオリジンコーヒーに挑戦するなら、やさしい酸味のホンジュラスを

『オニバスコーヒー』は2012年に目黒区奥沢でスタートしたスペシャルティコーヒー店で、現在都内を中心に7店舗を持つ。中目黒店は、2016年にオープンした。

オニバスとは、ポルトガル語で公共のバスを意味する言葉で、ブランドとして「コーヒーで街と暮らしを豊かにする」というビジョンを掲げている。

中目黒店のメインは、浅煎りのシングルオリジンコーヒーだ。ドリップコーヒーは、コロンビア、ルワンダ、エチオピアなど7種類ほどの豆から選ぶことができる。コーヒー豆は生産国に出かけて、品質はもちろん環境や社会課題について共通の意識を持つ農家やインポーターから継続して仕入れているのだとか。

中目黒店は、特に訪れる人とのコミュニケーションを大切にしているそう。
中目黒店は、特に訪れる人とのコミュニケーションを大切にしているそう。

シングルオリジンの浅煎りコーヒーと聞くと、どこか特別感があって、一体どれを選べばいいのか。尻込みしてしまいそうになる。

「迷ったら、なんでも聞いてもらっていいですよ」と心強い言葉を発してくれたのが中目黒店の店長を務める宮原萌子(みやはらもえこ)さん。コミュニケーション好きな宮原さんは、その人が欲しているコーヒーを探ってもくれる。

「まず、浅煎りのコーヒーをよく飲まれるのかどうか、からスタートします」

そして、これまで『オニバスコーヒー』のコーヒーを飲んだことがあるか、あるなら前回はどんな感じのコーヒーを飲んだのか。新しい味に興味があるか、などと聞き出しておすすめしてくれる。

そんな宮原さんが好きなコーヒーはホンジュラスとのこと。

「ホンジェラスは、浅煎りだけど酸味もやさしくて、リンゴみたいな味わいがあります。時間を選ばないコーヒーです」

ホットのハンドドリップコーヒーは店内利用で693円から。アイスは726円。選ぶコーヒー豆によって変わる。
ホットのハンドドリップコーヒーは店内利用で693円から。アイスは726円。選ぶコーヒー豆によって変わる。

そのホンジュラスを1杯。普段飲むコーヒーよりも、色味は少し薄い。口当たりがやさしく、苦味はほとんど感じず、旨味が勝る。すいすい飲めるおいしさがクセになりそうだ。

宮原さんは時間によってもコーヒーを選んでいる。朝は酸味が穏やかなコロンビアやホンジュラス、午後は柑橘のような酸味を感じるエチオピアが好みなのだとか。『オニバスオーヒー』でシングルオリジンのコーヒーを飲むときは、ぜひ参考にしてほしい。

古民家を改装した店内は壁や窓も魅力いっぱい

ホットのコーヒーを提供するブルーのカップ&ソーサーは、人気のyumiko iihoshi porcelainに特注したもので、全店で使われている。コーヒーの香りがしっかり楽しめるように上部が広く、また飲み口や持ち手は薄くて繊細な作りだ。ぽってりしたフォルムがかわいらしく、お土産として買って帰る人も続出している。

店長の宮原萌子さん。コーヒーの選択に迷ったら、尋ねてみよう。
店長の宮原萌子さん。コーヒーの選択に迷ったら、尋ねてみよう。

販売されているコーヒー豆のパッケージも美しい。実はこのパッケージは中目黒店の2階にある窓がモチーフになっている。

2階はこぢんまりしていますが、電車が見える特等席もあり。
2階はこぢんまりしていますが、電車が見える特等席もあり。

中目黒店の建物は、古民家と呼べるほど古いもの。2階はテーブル席があり、高架を走る東横線を横目にゆっくりコーヒーが飲めるようになっている。

テラス席は2023年にリニューアルして赤杉のデッキを作った。スタッフさんたちが手入れしているグリーンと、特に雨が降ると杉の匂いに包まれる気持ちのいい空間だ。

2階席への入り口もどことなく風情がある
2階席への入り口もどことなく風情がある

コーヒーを淹れるカウンターの壁面は、籐編みが印象的だし、壁に貼られた陶器のブロックも趣深い。建物の古さをいかしたデザインや豊富な植物を眺めながら、コーヒーをいただく時間は、暑さも寒さも忘れてしまう。

苦みの少ないコーヒーをレモンやソーダとも組み合わせて

エスプレッソスカッシュは968円。レモンも全部食べたくなるおいしさ。
エスプレッソスカッシュは968円。レモンも全部食べたくなるおいしさ。

暑い季節は水出しコーヒーであるコールドブリューや、ドリップのアイスコーヒーも人気だが、6月の中頃から登場する限定ドリンクがエスプレッソスカッシュ。売り切れ御免の人気商品だ。

オニバスコーヒーのオリジナルドリンクで、有機レモンとスパイスを混ぜて発酵させた特製のレモンシロップにエスプレッソとソーダを加えている。

爽やかな酸味と軽い甘みでスッキリ。飲んでみて、はたと気付いた。苦味がほとんどないのだ。

エスプレッソスカッシュは、レモンシロップがなくなり次第、そのシーズンは終了。
エスプレッソスカッシュは、レモンシロップがなくなり次第、そのシーズンは終了。

「中目黒店のエスプレッソは、STEPという浅煎りに近い焙煎度合いのオリジナルブレンドを使っています。だから、エスプレッソスカッシュも、あまり苦味は感じないんですよ」

『オニバスコーヒー』は、コーヒーは苦いものという先入観を複数の角度から上書きしてくれる。一度経験すると、別の豆で淹れたコーヒーもきっと飲んでみたくなるはずだ。

住所:東京都目黒区上目黒2-14-1/営業時間:9:00~18:00/定休日:不定/アクセス:東急電鉄東横線中目黒駅から徒歩1分

取材・撮影・文=野崎さおり