これは石巻圏観光推進機構という一般社団法人が立ち上げた、宮城県石巻市を笑いで盛り上げるため、石巻市を斬新な視点で紹介するPR動画とお笑いの腕を競う「日本国内で石巻市でしかやっていない」お笑いコンテストです。優勝特典として、有難いことに石巻で沢山お仕事をさせていただきました。

そんな中でも特に嬉しかったのが、石巻のカフェでメニュー開発をさせていただいたことです。2022年12月、僕は石巻に5日間滞在し『シアターキネマティカ』という劇場の中にあるカフェ『City Lights』で修業を積みました。

「優勝特典でカフェ修業って、優勝特典なの?」と思われた方がいらっしゃるかと存じますが、地下にいる喫茶店大好き芸人としては、本当に夢のような話なんです。「セキ・ア・ラ・モード監修のメニューが地元・宮城のカフェにある」なんて、なかなか芸歴3年目では言えない。

そこで生み出したのが「伊達の旨塩」という石巻の名産を使った「伊達の旨塩レモンスカッシュ」と「伊達の旨塩はちみつホットレモネード」です。

「伊達の旨塩レモンスカッシュ」は、必ず10回はマドラーやストローでかき混ぜてから飲んで頂くのがオススメです。底に沈んでいる特製シロップを直で吸われますと、あまりにも強い刺激が喉へ行く恐れがあります。ご注意を。

「伊達の旨塩はちみつホットレモネード」は販売当初、試飲して下さった先輩芸人さんから「温めた経口補水液みたい」というジョブチューンばりのコメントを頂戴しまして、危うく「ホットOS-1」というメニュー名に変わりかけました。それから味の研究を重ね、今や立派なホットレモネードになりました。

当初は期間限定の販売予定でしたが、ご好評につきレギュラーメニューとなりました。

▲お店のメニュー表に、なんとセキ・ア・ラ・モードの名前が!
▲お店のメニュー表に、なんとセキ・ア・ラ・モードの名前が!

有難い話です。喫茶店大好き芸人が開発したドリンク2品、石巻へ行かれた際は是非ご賞味あれ。

ちなみに僕がお世話になった『シアターキネマティカ/CityLights』は、2022年8月に空き家をリノベーションしオープンしました。映画館や劇場のロビーにある売店が、オシャレなカフェとして拡張されたようなイメージです。建物の半分が劇場、もう半分がカフェ。なんてハイブリッドな施設でしょう。Wi-Fiやコンセントまで使えるため、作業スペースとして利用するのもオススメです。

そして、ピンクの壁もチャーミング。セキ・ア・ラ・モードの宣材写真、実はコチラで撮って頂いたものです。

余談ですが、このポーズは山田邦子さんのオマージュです。誰にも言わないでくださいね。

何処を切り取っても映えるオシャレな場所ですが、元々は空き家だったそうです。トイレは譲り受けたものであったり、椅子などもリサイクルを活用されたと伺いました。沢山の方々から支えられ成り立っている空間。是非お立ち寄りください。

【 住所 】宮城県石巻市中央一丁目3-12
【 アクセス 】JR「石巻駅」から徒歩11分ほどに位置している
【 TEL 】0225-98-4765
【 営業時間 】11:00~17:00(ラストオーダーは16:30)
【 定休日 】月曜日、火曜日、木曜日
※臨時休業あり。詳しくは店舗のInstagramをご確認ください。

石巻に「お試し移住」してみた

滞在期間は石巻市の「お試し移住」を利用させて頂きました。復興住宅の1部屋を用意して下さったのですが、あまりにも快適すぎました。流石に永住したくなりましたね。

僕がベランダから眺めていた、朝の景色をご覧ください。おかげさまで随分と目覚めも良い。陽の光は、僕にとって思ったよりも大切でした。

それから、ご担当者様も把握し切れていないくらい複数のリモコンがありました。5日間も居たのですが、ボタンは押し切れませんでした。

お試し移住は、最短2泊3日~最長7泊8日まで1組1回限り利用することが出来るそうです。いずれはのんびりとした暮らしを送りたい、と思っていらっしゃる方は是非ご検討ください。石巻は空気や人が穏やかで食べ物も美味しく、とっても居心地の良いエリアです。足を運べば、分かって貰えるはず。

また、お試し移住では「移住コンシェルジュ」が石巻を半日もしくは1日アテンドしてくれる石巻ガイドという仕組みがあり、今回は半日コースを申込させていただきました。

事前に「どんなところを見たいですか?」というヒアリングがあったのですが、僕は何の迷いもなく「石巻にある喫茶店を巡れるだけ巡りたいです!」と即答しました。

流石に引き受けたことの無い内容だったそうで、どう案内したら良いか、前日まで移住コンシェルジュを迷わせてしまいました。この場を借りて、お詫び致します。

そんなわけで今回は、セキ・ア・ラ・モードが移住コンシェルジュと石巻を半日かけ散歩し巡り会えた、素敵な喫茶店を紹介していきます。今後、石巻の新たな観光スポットとしてカフェ・喫茶店も入れて頂けたら幸いです。

半世紀以上も続く石巻喫茶文化の重鎮、『加非館』さん

マスターである須藤さんが縁戚関係にあった東京の珈琲チェーン店「珈琲館」の監修を受け、1974年にオープンした喫茶店です。店名は「珈琲」の部首を取ったもの。アドバイスを受けたのは主に内装面だそうで、メニューは須藤さんが全て考案されています。

店内は分煙制を採っています。店内の左手は喫煙席で、右側が禁煙席。2020年を境に全国で禁煙化する喫茶店が増えてきている中、こちらでは今も店内でタバコを吸うことが出来ます。

ちなみにセキ・ア・ラ・モードは非喫煙者ですが、2022年にとあるYouTubeチャンネル様のお仕事で初めてタバコを吸いました。僕が若手の人気俳優なら、間違いなくネットニュースになったでしょう。そのときは、咽せすぎて気管が消えて無くなるかと思いましたね。人間、無理は禁物です。

しっかり厚みのある、とっても良い意味で武骨なフォルム。ホットケーキの上に乗られがちなバターが、お皿の端に添えられている辺り「あぁ!溶けて滑り落ちてしまった!」という、あの感覚に陥らないので安心。溶ける心配も無いので焦らず、自分の好みで塗る量も調整できます。

珈琲は山形にある「萬国珈琲」のもの。サイフォン式で淹れて下さる1杯は、ライトでスッキリとした味わい。何時でも飲みたい。

それから僕は、オリジナルのカップも大好きなんです。

ミルクが倒れることなく、絶妙な傾斜でもって運ばれてくる。お見事すぎます。奥様、熟練の技。

持ち手が太くなっている辺りも、高いホスピタリティを感じます。持ちやすい上に、熱伝導が指先まで伝わりにくいからヤケドするリスクも少ない。須藤さんなりに、働くサラリーマンのことをお考えになって揃えたそうです。カップにプリントされているロゴは、当時の常連さんがデザインなさったといいます。顧客様と喫茶店を創り上げ、石巻の方々から愛され続けて半世紀。マスターと奥様が懸命に営業を続けて下さっているうち、沢山お世話になりたいものです。

【 住所 】宮城県石巻市中央2-2-13
【 アクセス 】JR「石巻駅」から徒歩11分ほどに位置している
【 TEL 】0225-96-4733
【 営業時間 】11:00~17:00
【 定休日 】火曜日、水曜日

アップデートされていく石巻のNEOコーヒースタンド、『IRORIカフェ』

「IRORI石巻」という複合施設の中にある、大変オシャレなカフェです。

同じフロア内では、様々な石巻のお土産が販売されていたり、個室・半個室の貸し出しスペースがあったり、中央のホールではイベントが開かれたりしています。ちなみに、セキ・ア・ラ・モードも同会場でのお笑いライブに出演させていただきました。とってもキレイですし、店頭から漂うコーヒーの良い香りに包まれながらネタがやれるとあって、それはもう幸せな空間でしたね。

ここのお店を立ち上げたのは、僕のお試し移住をアテンドして下さった「ISHINOMAKI2.0」です。「石巻を震災前の街に戻すのではなく、バージョンアップし新しい未来を作りたい!」という有志が集まったもの。

2011年時点では、敷地の1/2が駐車場、もう1/4が工房、残りがコワーキングスペースとして使われていたそうです。当初、コーヒーサーバーはあったもののカフェというわけではありませんでした。そんな中で2016年のリニューアルに際して、カフェとしてより多くの人を迎え入れたいという声が挙がり、今のスタイルになりました。

僕は「ブルーブーケ」という、青い日本茶をいただきました。煎茶をベースにミント、ラベンダーや青い花を、「TRAVER FACTORY」でブレンドしたもの。現在は茶葉のみを販売しております。お土産に是非。

ちなみに、僕が飲んだ日の石巻は外気温3℃でした。どうしてアイスにしたんでしょう。寒い日に冷たく飲んでも、スッキリした味わいで美味しかったということですね。

▲IRORIカフェのメニュー表。
▲IRORIカフェのメニュー表。

カレー、ピザトーストなどのお食事やケーキ類もあります。1杯ずつ丁寧に淹れてくださるハンドドリップのコーヒーと共に、ゆっくり過ごす場所としてオススメです。さらには、Wi-Fiも繋げて充電まで出来ます。本気で僕の最寄駅に欲しい。

【 住所 】宮城県石巻市中央2-10-2 新田屋ビル 1F
【 アクセス 】JR「石巻駅」から徒歩10分ほどに位置している
【 TEL 】0225-25-4953
【 営業時間 】10:00~19:00
※貸切営業にも対応、その場合は22:00まで。
【 定休日 】年末年始のみ、その他最新情報は店舗のInstagram
をご確認ください。

営業と復興を掲げる奇跡の看板、『むぎ』さん

マスターの奥様曰く、もう1960年代には営業されていたそうです。僕が全ての店舗を巡り切れた訳では無いため確実な情報ではありませんが、おそらく石巻にある喫茶店の中でもトップクラスの老舗では無いでしょうか。

コーヒーは、奥様が丁寧にサイフォン式で淹れてくださいます。とっても口当たりが優しくて、飲みやすい。下に敷いてあるテーブルクロスも温かみがあって、かわいらしい。

コーヒーカップの持ち手、指が引っ掛けやすくなっています。有難いですね。

▲『むぎ』のメニュー表。
▲『むぎ』のメニュー表。

価格も全品リーズナブル。物価が高騰していく中、維持してくださることに感謝です。

向かいの道路を挟むと、すぐに小学校があります。

▲石巻の学生さん達が作ったポスター。
▲石巻の学生さん達が作ったポスター。

地域の方々との繋がりが店内にも現れています。人の温かみを感じる、実に和やかな空間。

これまたチャーミングなイラスト。坊や、おしっこするときは前を向いてね。

そんな『むぎ』さんで、ふと気になった物がありました。それは、店頭の看板です。上部に割れた箇所を見つけました。普通に飾っていれば付かないような部分だったので、奥様に伺いました。

実はこの看板、東日本大震災の津波で流されたもの。向かい側にあった公園で当時お客様が見つけて、持ってきて下さったそうです。よくぞ形を保ったまま帰ってきました。
当時、お店は甚大な被害を受けましたが自衛隊やボランティアの方々の手伝いもあり、什器なども復活。なんと震災から1年経たずして、営業を再開することが出来ました。

▲ボランティアの方々とマスターが塗ったテーブル。
▲ボランティアの方々とマスターが塗ったテーブル。

店頭の看板は、店名だけでなく震災からの復興も表す看板でもあったんですね。

奥様は「あの看板が無かったら、辞めていたかもしれません」と仰っていました。さらには自分で見つけたのではなく、お客様が見つけて下さったという点も、営業再開へ舵を切るにあたって大きな要因だったようです。まさに奇跡の1枚。

それから伺った日、偶然にも「石巻かほく」という新聞に僕の記事が載っておりました。

奥様が「今日の新聞に載っていましたよね。どうか、これから石巻を宜しくお願いします。」と、大変に厚みのある優しい言葉を掛けてくださいました。この気持ちを決して忘れず、石巻に芸人として少しでも貢献したいです。ここまで書いてきて、まだ笑いは1回もとれておりませんが。

【 住所 】宮城県石巻市中央
【 アクセス 】JR「石巻駅」から徒歩12分ほどに位置している
【 TEL 】0225-22-5535
【 営業時間 】10:00~18:00
【 定休日 】日曜日

この時点で、あっという間に半日が経ってしまいました。随分ゆったりと巡ったもので、3軒しか訪ねることが出来ませんでした。しかしながら、一軒一軒が人の魅力に溢れていました。お腹も心もいっぱいになれたのでOKです。

今回は記事にこそ出来ませんでしたが、まだまだ石巻市内には素敵なカフェが沢山あります。
2023年6月末に新しく「第4回石巻お笑いマスター」が決まり、もう現役チャンプでは無くなってしまったセキ・ア・ラ・モードですが、今後もプライベートで石巻へ足を運びます。そして、僕なりの目線で石巻の良さを発信していきたいです。もしも第2弾が出来たら、是非ご案内させてください。

取材・文・撮影=セキ・ア・ラ・モード