夏は天気の急変に要注意 降水確率何パーセントで傘を持つ?

いきなりですが、みなさんは天気予報で降水確率が何パーセントであれば傘を持つでしょうか?

雨が降るか降らないか、ハーフハーフの50パーセント?80パーセントくらい高くないと持たない?

予報に関わらず、常にカバンに折りたたみの傘を入れている、という人もいそうですね。同じ質問を以前、気象予報士仲間30人にしたところ、平均で39.6パーセントという結果になりました。そんなに低い確率で傘を持っても役に立たないのでは?と感じた人もいるかもしれません。かくいう私は降水確率30パーセント以上なら必ず傘を持って出かけます。

そのワケをお伝えします。

「降水確率が高い=大雨」ではありません

梅雨時や夏は特に注目度が高まる降水確率ですが、実は誤解されることも多い情報です。

よく降水確率が高い方が大雨になるのでしょう? という声を聞きますが、必ずしもそうではありません。降水確率とは、予報の対象時間内に1ミリ以上の雨が降るかどうかを表したものです。

たとえば「降水確率60パーセントという予報が出る場合」は、同じ予報を100回行うと約60回は予報の対象時間内に1ミリ以上の雨が降る、約40回は雨が降らないということです。このとき降る雨の強さや雨が降り続く時間は、降水確率の高さ・低さには全く関係ないのです。このため、降水確率が80パーセントと高くてもシトシト弱い降り方をする雨の場合もあれば、30パーセントでも道路が冠水するような激しい降り方をする場合もあります。

短い時間に大雨になるときは道路が冠水するおそれも 車の運転は要注意。
短い時間に大雨になるときは道路が冠水するおそれも 車の運転は要注意。

2023年5月11日に東京都・目黒区の自由が丘駅付近で落雷が発生し、東急東横線や目黒線などの運行が数時間に渡ってストップしました。この日は午後から局地的に雨雲が発達し、夕方には広い範囲で雨脚が強まったのです。

ちょうど帰宅時間帯と重なったため、多くの利用者に影響が出ました。この日の前日の降水確率を振り返ると、東京をはじめ関東地方の降水確率は20パーセント前後(17時発表の気象庁予報)で、一般的なイメージからすると決して高くはない値だったため、突然の雷雨に驚いたという声も多く聞きました。しかし、上空には強い寒気が流れ込み大気の状態が不安定になって、雨の降る可能性は十分にありました。

いわゆる「ゲリラ雷雨」や「ゲリラ豪雨」と話題になりましたが、このように降水確率が低くても激しい雨になることもあるのです。

夏は「坂東さん」に注意?! 空のサインも覚えておこう

急な雨や雷雨が増える夏は降水確率をチェックするとともに、空の様子にも注目をしてみてください。夏は太陽の日差しが強く、地上付近の湿った空気が急激に暖められます。暖かい空気は軽いので、どんどん上昇していき上空で雲が発生しやすくなります。午前中にモクモクと盛り上がった雲を見つけたら、午後は天気の急変に要注意です。

発達した雲はいわゆる「入道雲」です。この雲がさらに成長すると激しい雨や雷、竜巻などの突風をもたらすおそれのある「積乱雲」になります。

夏によく見るモクモクした雲 その姿はまるで大男のよう!?
夏によく見るモクモクした雲 その姿はまるで大男のよう!?

巨大な入道雲には、ニックネームがあります。その姿は空に勇ましく立ちはだかる大男のように見えるため、関東地方では「坂東太郎(ばんどうたろう)」と人の名が付けられました。なぜ「坂東さん」なのでしょうか?

「坂東」とは、関東平野の昔の呼び方で、この地域を流れる最大の川・利根川もまた「坂東太郎」と呼ばれることがあります。

この川の方向から発生する雲なので、同じ名前で呼ばれているのです。このほか、関西では「丹波太郎」、九州では「比古太郎」などと名付けられています。夏の午前に「坂東さん」が見えたら、傘を持って出かけよう。そう覚えてください。

発達した積乱雲が近づくと周囲が急に暗くなる。※出典:気象庁ホームページ
発達した積乱雲が近づくと周囲が急に暗くなる。※出典:気象庁ホームページ
夏は天気の急変がよくある。空のサインを覚えておこう。※出典:ウェザーマップ
夏は天気の急変がよくある。空のサインを覚えておこう。※出典:ウェザーマップ

また、天気の急変を知らせる空のサインも覚えておくと、いざというときに役立ちます。「あたりが急に暗くなる」「遠くで雷のゴロゴロとした音がする」「突然ヒヤッとした冷たい風が吹く」こうした変化は雨や雷雨の前触れです。お祭りに花火大会などお出かけの増える夏休みシーズン。天気予報を上手く活用しながら、夏の散歩を楽しみましょう。

 

写真・文=片山美紀

参考:「散歩が楽しくなる 空の手帳」森田正光著(東京書籍)
国土交通省関東地方整備局 利根川上流河川事務所
気象庁ホームページ