コンパクトで軽量なサイズ感
単焦点レンズを購入にあたって、レンズをCanonのミラーレス機向けのEF-Mレンズにするか、一眼レフ対応のEFレンズにするか、はたまた他社製のレンズにするか、選択肢は無限でした。ここで私がもっとも重視したのは、ミラーレス機であるkiss Mのコンパクトさを損なわないこと。せっかくボケを求めて購入しても、大きくて重かったらなかなか持ち出さなくなると考えました。おそらくミラーレス機を愛用している人なら、同じ考えなのではないでしょうか。コンパクトさを重視するならマウントアダプタを使用しなくていい、EF-Mレンズに絞り込めます。
EF-Mレンズは、70種類以上のレンズのあるEFレンズや他社の無限にあるレンズと違い、現在7種類のみです。悪く言えば、種類は少ないですが、数が少ないため初心者が迷うことなく欲しいレンズを選べます。7種類の内訳は、マクロ・単焦点・標準ズーム・望遠ズーム・高倍率ズーム・広角ズームとなっており、単焦点レンズのみ2種類です。この2種類の単焦点レンズは22mm F2の薄いパンケーキレンズと、今回私が購入した32mm F1.4のレンズ。この2択でコンパクトさを選ぶなら、圧倒的にパンケーキレンズだったのですが、私は32mm F1.4のレンズを選びました。その理由は後ほど紹介します。
パンケーキレンズと比較してしまうと、サイズが大きく感じますが、32mm F1.4の単焦点レンズは、高画質・高性能でありながらkiss Mに合う、コンパクトで軽量なレンズを実現しています。ちなみにレンズについているFULLと0.5m-∞の切り替えスイッチは、撮影距離範囲を指定できます。手前にピントを合わせたくない時に、0.5m-∞に切り替えると、AFの時間短縮になります。私がこのレンズを使うときは、近距離でピントを合わせたい時が多いのです。なので、常にFULLに設定で、切り替えはほぼ使っていません。確かに急に景色にピントを合わせたりするとAF時間が気になるので、うまく使いこなせるようになりたいです。
一点注意点をご紹介。EF-Mレンズは、レンズカラーがシルバーとブラックの両方用意されているレンズとブラックしかないレンズがあります。私の持っているkiss Mの本体はホワイトなのですが、32mm F1.4のレンズはブラックしかなかったので、見た目はこんなかんじ。高級感のあるブラックのフォルムのレンズと白いボディとの組み合わせ。意外に悪くはないです。
EF-Mレンズユーザー待望の32mm
私が、パンケーキレンズではなく32mm F1.4の単焦点レンズを選んだ理由は2つあります。1つ目は、32mmの焦点距離です。カメラの焦点距離は、人の視野に近いとされる50mmのレンズが使いやすいとされています。32mmのレンズはkiss Mへの装着で35mm判換算で51mmとなり人の視野に近い自然な画角となっています。
今まではEF-Mレンズの単焦点レンズは22mm、つまり35mm判換算で35mmのパンケーキレンズのみでした。少し広角ぎみだったので、より人の視野に近い32mm、つまり35mm判換算で51mmのレンズはEF-Mレンズユーザーにとって待ちに待った画角です。
旅行や日常のスナップ写真ならパンケーキレンズが軽くて、画角に入ってくる情報量が多いため使いやすいです。ただ、ポートレートやテーブルフォト、風景まで幅広くこなすのに適した、人の目に近い自然な画角は、とても重宝するはずです。
なんといってもF1.4のボケ感!
私が、32mm F1.4の単焦点レンズを選んだ2つ目の理由は、1.4のF値。EF-Mレンズの中でももっとも明るい大径口のレンズのため、圧倒的なボケを感じることができます。私が単焦点レンズを検討する理由に、ボケ感が足りないと感じたことが一番であったため、F2でもF1.8でもなく、このF1.4がとても魅力的でした。
ここで15-45mm F3.5-6.3の標準ズームレンズと32mm F1.4の単焦点レンズの写真を比較してみましょう。上の写真が標準ズームレンズで撮った写真です。F値の最小値に設定してもF3.5なので、ボケが少なく感じます。
そして、こちらが32mm F1.4の単焦点レンズで撮影した写真。ピントは手前のネックレスの真ん中のパールに合わせています。奥がしっかりボケているのと、ピントを合わせていない一番手前のクリスタルもしっかりボケているのがわかります。
席が選べないので背景処理が難しい飲食店でも、見せたくない背景をぼかすことで見せたいものを浮き上がらせることができます。テーブルフォトの撮影はとても向いているレンズだと実感できます。
こちらの写真もF1.4で撮影。ピントはお花のピアスに合わせています。手前の葉や奥の植物がかなりボケています。このように小さな小物にもぐっと近づいた撮影が可能なのは、カメラ本体のセンサー面からの最短撮影距離が0.23mだからです。
作例紹介
最後に、CanonがLレンズに迫るという描写性能を作例をみながら紹介していきます。こちらはどれもF1.4で撮影した作例です。盆栽にピントが合っていて、奥の背景が柔らかくボケています。逆光によるエッジが効いて、盆栽の質感が繊細に表現されていますね。
梅の花の前ボケと後ろボケが感じられる立体感のある写真。紅白梅が青空の抜け感により爽やかに仕上がっています。
こちらは二つ並んだオレンジを撮影。背景のボケ感により、たくさんあるオレンジの中での主題の二つがしっかりフォーカスされています。オレンジの表面のデコボコや葉っぱの質感もしっかり感じることができる写真です。
こちらは夜の撮影。手振れ補正がレンズにない点がデメリットとしてよく挙げられますが、明るいレンズなのでさほど気になりません。背景の光がしっかり玉ボケとしてでいます。
こちらは暗めの室内撮影にもかかわらず、テレビに映ったライトのリフレクションや壁に反射する光がきれいに撮影されています。このような暗い場所での撮影が思い通りにできるのは、F1.4の明るいレンズだからこそ。
まとめ
いかがでしたか? EF-Mレンズの単焦点レンズで、22mm F2か32mm F1.4どちらを選ぶかは、画角の好みと値段との相談にもなってくるかと思いますが、個人的には、EF-Mレンズの中では高額な32mm F1.4のレンズを買った価値は、自然な画角とボケ感、そして高い描写力で十分感じることはできたかと思います! この記事が『Canon EF-M 32mm F1.4 STM』のご購入を迷われている方や、興味がある方の参考になれば嬉しいです。
取材・文・撮影=カメラガールズ編集部