◆散歩コース◆

体力度:★☆☆
難易度:★☆☆

  • 登山シーズン 1月~6月、9月下旬~12月
  • 最高地点 139.7m(鷹取山)
  • 登山開始地点 15m(東逗子駅)
  • 歩行時間 1時間50分
  • 歩行距離 約4.0km
スタート
東逗子駅
駅からすぐ線路を渡り、住宅地の中を歩いていくと、右手に大きな標識があり、そこから入る。

神武寺 鷹取山登山口
神武寺の表参道になり、一気に霊気漂う異世界の森に入ったように。道も次第に苔むし、時代を遡ったような。

神武寺
薬師堂の左手から登山道に入る。岩場の道を上がりきると奥ノ院。道はほとんど平坦だが、変化に富んでいる道だ。

鷹取山
周囲には石を切り出した跡が残る。途中に磨崖仏が立つ。住宅街に入って駅へと向かう。

ゴール
追浜駅

アクセス:
[行き]品川駅からJR横須賀線で東逗子駅へ。約1時間。
[帰り]追浜駅から京急本線で品川駅へ。約45分。

品川駅から神武寺駅に行く場合は、京急逗子線エアポート急行もあり。金沢八景で乗り換え。所要時間は品川駅から50分ほど。運賃は580円。

筆者は別のコースにも行ったこともあるが、おすすめはこの東逗子駅から表参道を歩いて神武寺へ向かい、そこから鷹取山へ行くコース。

鷹取山自体はどこから登ろうが変わりはないが、表参道の雰囲気が、なかなか味わい深い。神武寺駅からのコースもちょっと渓谷の雰囲気があるので、二番におすすめしておこう。

さて鷹取山だ。この山は別名が湘南妙義。群馬県の、あの妙義山である。房総のマッターホルンこと、伊予ヶ岳よりは控えめに群馬県の山名が冠についているが、こちらも少し山容が妙義山に似ていなくもない。明治期から大正時代まで石材を掘り出した岩山の残骸というか、切り出された跡がギザギザの形になっているのでついた名前だろう。

駅から線路を越えて車道を少し行くと、大きな石塔。彫られた文字は「天台宗 神武寺」。ここから参道が始まる。入ると周りは樹木のトンネルに入ったような世界。住宅地とは一変する。

鬱蒼とした樹林の中を歩いて行く。道はいつしかコンクリートから苔むした古そうな石の道に変わっていた。途中、地蔵が鎮座している。登山気分は失せて、厳かな気分になってくる。半時間も参道を歩くと、神武寺に到着した。250年の昔に建てられた朱色の楼門や薬師堂が迎えてくれる。そばには「なんじゃもんじゃ」という不思議な名の曲がりくねった木が立っている。ここで一息入れてから奥の登山道へと入る。

表参道の苔むした岩石の道。築かれた時代は奈良、1200年前の道を歩けるとは感慨深いものがある。
表参道の苔むした岩石の道。築かれた時代は奈良、1200年前の道を歩けるとは感慨深いものがある。

石段を上がるとすぐ、女人禁制の石柱が立っていた。かつて上部に奥の院があり、明治時代になるまでは女性は入山できなかったようだ。その昔の記録として残しているのかもしれない。

鷹取山までは岩場の多い尾根道をたどっていく。たいしたアップダウンもなく、変化に富んだ道はたった30分ほどだが、飽きさせない魅力がある。展望もところどころ開けている。

縦走を終えると岩壁が見えてきた。どうやら鷹取山に着いたようだ。展望台のある鷹取山山頂のほうを岩の下に並んで見ている人たちが大勢いる。その先には岩場にぶらさがっているクライマーが。

鷹取山と山頂の展望台。下のゲレンデは親不知という名がついている。ほかに前浅間、後浅間などの岩場あり。
鷹取山と山頂の展望台。下のゲレンデは親不知という名がついている。ほかに前浅間、後浅間などの岩場あり。

そう、ここはクライミングの練習場になっているところで、石切り場は切り出した跡でも有効活用ができるということだ。

鷹取山近くの石切り場の跡。関東大震災により石材を運搬していた鷹取川が隆起して船が航行不能となり急速に廃れた。
鷹取山近くの石切り場の跡。関東大震災により石材を運搬していた鷹取川が隆起して船が航行不能となり急速に廃れた。

鷹取山山頂の展望台から広がる絶景に息を呑む

こちらもしばしクライマーたちを眺めてから展望台へ上がった。標高はたった140m弱。それでこの大展望が得られるのだ。東京湾から遠くの房総半島、富士山も見える。

鷹取山山頂付近。クライマーは危険でも登るのだ。よい子の皆さんは、やってはいけません。
鷹取山山頂付近。クライマーは危険でも登るのだ。よい子の皆さんは、やってはいけません。
標高139mの低山、鷹取山の山頂にある展望台からの眺望。明治以降に石材を切り出した跡が、岩峰として残った。
標高139mの低山、鷹取山の山頂にある展望台からの眺望。明治以降に石材を切り出した跡が、岩峰として残った。

今回は山頂から京急の追浜駅へ出るので、途中にある磨崖仏を見物していく。鷹取山で採掘された石は加工がしやすいので、掘られたようだ。昭和40年頃に完成した磨崖仏は2体のうち1体だけが残っている。

鷹取山の石材は鷹取石ともいわれる凝灰岩で、もろくて削りやすいせいもあってか、昭和 40年頃に磨崖仏がつくられた。
鷹取山の石材は鷹取石ともいわれる凝灰岩で、もろくて削りやすいせいもあってか、昭和 40年頃に磨崖仏がつくられた。

山歩きメモ

京急逗子線の神武寺駅からも神武寺に行くことができる。そちらは裏参道になり、沢沿いを歩くので、ちょっとした渓谷気分が味わえる道だ。苔むした岩などもある。

アドバイス

神武寺の先からは岩場が多いが、とくに危険箇所はない。鷹取山手前にクサリ場があるが、ここも危険ではない。ただし鷹取山のクライミングは原則禁止。鷹取山安全登山協議会への登録が必要。

神武寺

古い創建の寺で、女人禁制でもあった

境内に立つなんじゃもんじゃの木。樹名が不明だったのでその名がつけられたが、ホルトノキの巨樹だそうだ。
境内に立つなんじゃもんじゃの木。樹名が不明だったのでその名がつけられたが、ホルトノキの巨樹だそうだ。

奈良時代の神亀元年(724)、行基の開山と伝わる寺。鎌倉時代になると、源頼朝や北条政子も信心したという。修験者の行場でもあったので、寺の上には今でも女人禁制の石柱が残っている。薬師堂が神奈川県の重要文化財に指定されているだけでなく、晩鐘は「三浦半島八景」のひとつ。楼門脇にあるなんじゃもんじゃの木は限られた地域にしか自生しない珍しい木。

取材・文=清野編集工房
『散歩の達人 日帰り山さんぽ 低山をきわめる!』より