そのときしか味わえない旬の素材をコースで楽しむ
鉄扉を開けて店内に入ると、暖かくアットホームな雰囲気の店内が広がり、気さくで人懐っこい店主の吉田壮毅氏に迎えられる。
『六の、、、』は現在完全予約制となっており、メニューも基本的には8000円の「六の偶コース」と、5000円の「たらずのコース」のみ。アラカルトも受けてはいるが、当日に電話で予約するほかない。苦手なもの、食べられないものは事前に伝えておけば省いてくれるが、コースの内容は実際にお店に来るまではわからない。「全国から仕入れた旬の素材を使い、季節のうつろいとともに出す料理も変わっていくから」と吉田氏は語る。
この日の刺身の盛り合わせは、北海道の生ニシン、岩手の水蛸、長崎の真鯵と正に津々浦々から取り揃えられている。岩手の生牡蠣も、クリーミーなイメージとは裏腹に、さっぱりとしていて、今まで体験したことのない感覚に衝撃を受ける。
創作料理ではあるが、決して奇をてらったものではなく、個性的な素材の持ち味をもっとも活かせる味付け、調理法を追求していることがありありと感じられる。良質な食材の持つパワフルな味を邪魔せず、調和のとれた味わいとなっている。
前半は魚料理を中心に、後半は肉やアヒージョなどが出され、最後には自家製プリンと続く。一見すると和洋折衷のコースのような印象だが、アヒージョは出汁とオイルを半々にしてあったり、プリンの甘みはミリンのみで付けられていたりと、コースとして、味わいにしっかりと統一感を出していた。
『六の、、、』の料理はお酒で楽しむ
『六の、、、』の料理は、何よりお酒に合うものとして作られているという。 お酒と共に楽しんでほしいという思いから、日本酒、ワイン通にも満足してもらえるよう、料理や好みに応じた銘柄を常に揃えている。吉田氏に尋ねれば気分や料理に合うお酒を見つけることができるだろう。
旬の食材とお酒とおしゃべりを楽しむ隠れ家『六の、、、』
全国各地から取り寄せた旬の食材を使い、一期一会のコース料理と、吉田氏の軽妙な語り口を非日常的な空間で楽しむ、まさに隠れ家である。
取材・文・撮影=かつの こゆき